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下肢静脈瘤

下肢静脈瘤の予防方法とは?原因や症状、治療方法についても解説!

下肢静脈瘤の予防方法とは?原因や症状、治療方法についても解説!

下肢静脈瘤は、足の血管がこぶのように膨らんでしまう病気のことです。軽度であればすぐに治療する必要はありませんが、重症化してしまうと手術が必要になることもあります。日本でも多くの人が罹患している病気ですが、予防する方法にはどのようなものなのがあるのでしょうか。また、下肢静脈瘤になる原因や症状、治療方法について解説します。下肢静脈瘤のことを知って、適切な予防法を実行しましょう。

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤とは 下肢静脈瘤は日本でも多くの罹患者がいる足の病気です。まずは下肢静脈瘤とはどんな病気なのか、原因や症状を知っておきましょう。

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤とは足の血管が膨れてこぶのようになる病気です。足にこぶのような血管が目立つ見た目の問題や、だるさやむくみなどの症状が出るのが特徴です。良性の病気なので、急に悪化したり命に関わったりすることはありません。ただし、治療せずに放置してしまうと、症状が進行して、足の皮膚の変色や、傷ができていつまでも治らなくなってしまう皮膚潰瘍(かいよう)になってしまいます。

下肢静脈瘤の原因

静脈は血液を心臓に返す役割をしています。足にある静脈は、重力に逆らって血液を上に流さなければなりません。そのため、静脈の中には逆流防止弁があり、血液が下に流れるのを防いでいます。この逆流防止弁に負担がかかって正常に働かなくなってしまうと、血液を上に流すことができずに足に溜まってしまい、下肢静脈瘤の原因となります。 なお、静脈弁が壊れてしまう原因は、主に運動不足、過度な運動、生活習慣、妊娠、遺伝などが挙げられます。また、肥満や便秘なども下肢静脈瘤を悪化させる要因になると考えられています。

下肢静脈瘤の症状

下肢静脈瘤の症状はほとんどがふくらはぎに起こります。足に血液が溜まってしまうことによって起こるので、午後から夕方頃に症状が強くなるのが特徴です。 下肢静脈瘤の主な症状は、足の血管が浮き出て見える、ふくらはぎがだるい・重苦感、むくみ、こむら返り(つり)、ほてる・熱く感じる、むずむず感・不快感、かゆみ・湿疹、色素沈着、潰瘍などが挙げられます。

なお、これらは1日中起こるのではなく、長時間立っていた後や、昼から夕方にかけて起こります。また、左右で症状に差が出ることもあります。 下肢静脈瘤は、40歳以上の女性に多く認められ、年齢とともに増加していく傾向にあります。日本人の約9%が発症し、患者数は1000万人以上、出産経験のある成人女性の2人に1人が発症するとも言われているポピュラーな病気です。

下肢静脈瘤の種類

下肢静脈瘤の種類  下肢静脈瘤は静脈の太さによって4つの種類に分類されます。下肢静脈瘤は皮膚から静脈が大きく盛り上がる伏在型(ふくざいがた)静脈瘤と、それ以外の軽症静脈瘤に分けられます。それぞれの種類について治療法と合わせてご紹介します。

伏在静脈瘤

伏在型静脈瘤は、表在静脈で最も太い伏在静脈の弁不全によって起こる静脈瘤のことを言います。大伏在静脈瘤と小伏在静脈瘤の2種類があります。大伏在静脈は、足首の内側から足のつけ根部分まで伸びて深部静脈に合流する静脈です。この大伏在静脈本幹とその主要な分枝に弁不全が発生し、足の表在静脈では最も静脈瘤ができやすいとされています。特に下腿から大腿部内側、下腿の外側、大腿部の背側などに発生しやすい静脈瘤です。

小伏在静脈は、アキレス腱の外側から伸びて膝の裏で深部静脈に合流する静脈のこと。小伏在静脈瘤はこの小伏在静脈にでき、特に足首の後ろや膝の後ろに発症します。大伏在静脈瘤に次いで発症率が多い下肢静脈瘤とされています。 伏在型静脈瘤は静脈の太さは4㎜以上となります。下肢静脈瘤の中では最も多い症状で、主にレーザー治療による手術で治療します。

側枝静脈瘤

側枝型下肢静脈瘤とは、伏在静脈本幹から枝分かれした側枝の静脈が拡張して発症するタイプの静脈瘤です。分枝静脈瘤とも呼ばれており、独立型も存在します。主に膝から下の部分に静脈瘤ができるもので、伏在静脈瘤よりやや細いのが特徴です。静脈の太さは3〜4㎜程度です。

網目状静脈瘤

網目状下肢静脈瘤は、名前の通り血管が青く網目状に見えている状態のことを言います。皮膚のすぐ下の浅い場所に発症する、細い静脈にできる下肢静脈瘤の症状であり、皮膚の下から血管が浮き出てくる症状はありません。小さな静脈瘤ですので、注射による硬化療法にて治療します。静脈の太さは1~2㎜程度です。

クモの巣状静脈瘤

網目状下肢静脈瘤よりも細い静脈瘤がクモの巣状に広がって見える症状が、クモの巣状下肢静脈瘤です。毛細血管が拡張した赤紫のタイプ、細静脈が拡張した青白いタイプに分けられます。クモの巣状下肢静脈瘤はほとんど自覚症状を感じることがなく、静脈瘤としては軽度で何らかの症状がない限り特に治療を必要としません。静脈の太さは1㎜以下です。

下肢静脈瘤の予防方法

下肢静脈瘤の予防方法 下肢静脈瘤の原因は、足の静脈弁が壊れることによる静脈内の血流の阻害です。つまり、静脈弁が壊れないように気をつけることが静脈瘤の予防法として最も効果があります。日頃からできる下肢静脈瘤の予防方法をいくつかご紹介しますので、ぜひ実践してみてください。

長時間の立ち仕事を避ける

足の静脈内の血液は、足の筋肉が収縮することで循環しやすくなります。立ちっぱなしの状態が長時間続くと、筋肉の収縮が起こらなくなり、足に血液がどんどん溜まっていき、下肢静脈瘤の原因となってしまいます。 長時間の立ち仕事は極力避けたいところですが、仕事柄避けられない場合は、足踏みやかかとの上げ下げを繰り返すなど、ちょっとした動きを取り入れて足を動かすようにしましょう。 また、立ち仕事だけでなく、座りっぱなしになるデスクワークにも注意が必要です。座り仕事の場合も、定期的に膝から下をぶらぶらと動かすなど、血流を意識した足の運動を行いましょう。

適度な運動を行う

適度な運動は下肢静脈瘤の予防にはぴったりです。加齢などにより足の筋肉量が低下していくと、足の筋肉の収縮作用が低下して、静脈内の血液の流れが常に悪い状態になります。 普段から筋肉量を維持できるよう、定期的な運動が必要です。日常生活においては歩く距離を長くしたり、プールやジムに通ってトレーニングをしたりするのもおすすめです。負荷の大きな運動を時々行うよりも、負担にならない適度な運動を定期的に行うことが大切です。

足のマッサージやストレッチをする

足をマッサージすることでも症状の悪化を防ぐことが期待できます。寝る前や入浴時・入浴後は、マッサージを行うにはベストなタイミングです。座った状態でふくらはぎを手のひらで下から上にさするように、足の血液を心臓へ送るようにして手のひらで押し上げてください。2〜3分のマッサージを1日に数回行うことで、下肢静脈瘤の予防・改善に繋がります。 ですが、足に痛みがある場合は無理にマッサージはせず、医療機関を受診しましょう。

こまめに水分を補給する

下肢静脈瘤のある方に血栓ができてしまうと、静脈炎などを起こしやすくなるため注意が必要です。体内の水分が少なくなると血液がドロドロになってしまい、血栓ができやすい状態になります。血液の流れをスムーズにするには、水分補給が重要です。一度に大量の水分を摂るよりもこまめに摂取する方が理想的です。 ですが、アルコールやコーヒー、お茶などのカフェイン類は、飲みすぎると尿量が増える原因となります。飲むことで逆に体内の水分が必要以上に損なわれることがあるので注意が必要です。

足を高くして寝る

寝るときの姿勢は足の血液の流れに対して重力が垂直方向になるため、立っているときよりも血液の流れが良くなります。したがって、寝るときには足を心臓の高さより少し高めに保ち、足の血液がスムーズに流れやすい状態を作りましょう。クッションなどを使用して足を高くするのもおすすめです。

下肢静脈瘤の治療方法

下肢静脈瘤の治療方法 下肢静脈瘤にはその程度や状態によって様々な治療方法があります。代表的な治療方法を知っておきましょう。

圧迫療法

弾性ストッキングを履く治療法。手術や薬以外で、症状の進行を予防する保存的治療法のひとつです。治療用の弾性ストッキングは足首部分の圧力が強く、心臓に向かって圧力が弱くなるグラデーション設計になっています。ストッキングよる足への圧迫によって、血液の逆流や停滞を抑えることができる仕組みです。 弾性ストッキングは、履くだけで足のむくみや、重い・だるい・痛いといった症状の軽減が期待できます。静脈瘤の悪化予防・再発予防には有効な治療ですが、静脈瘤を消失させることはできません。

基本的に軽度の下肢静脈瘤の場合に圧迫療法が採用されます。 着用する弾性ストッキングは、状態によって締め付ける圧力が変わってきます。下肢静脈瘤の罹患が認められる場合は、一般的には約20〜30mmHgの圧力が必要です。もっと軽度の場合だと必要な圧力は15〜20mmHg程度となります。重症度が高くなると、もっと圧力の強い30〜40mmHg程度の圧力が必要になります。また、弾性ストッキングの素材や仕様は様々です。着用しにくい場合や肌に合わない場合もありますので、自分に合ったものを選びましょう。

硬化療法

硬化療法とは、下肢の静脈瘤に薬を注射して固める治療です。主に網目状・クモの巣状静脈瘤のような、軽度な下肢静脈瘤の場合に用いられます。静脈瘤の症状がある部分に硬化剤を注射して静脈瘤そのものを壊す方法です。硬化剤によって、血管内の血液が固まって塞がってしまいます。固めた血管が硬くなることから硬化療法と呼ばれています。外来にて10分程度で行える治療法です。治療箇所は内出血が起こり赤黒くなりますが、これは1〜2週間程で消えます。治療した静脈瘤は、のちに硬くなってしこりになり、さらに半年程経つと、しこりは消失します。なお、治療箇所の色素沈着は消えるまで1〜2年ほどかかるとされています。硬化療法は軽症の下肢静脈瘤には有効ですが、重症化した静脈瘤には治療効果が期待できない場合もあります。

レーザー治療

レーザー治療は血管内レーザー焼灼術とも呼ばれ、下肢静脈瘤の手術として多く用いられている主流の治療方法です。細いレーザーファイバーを静脈の中に入れて、レーザーで静脈を閉塞させてアプローチします。ストリッピング手術のように静脈を引き抜いてしまうのではなく、静脈を焼いて塞ぐのが特徴です。焼いた静脈は半年ぐらいで吸収されてなくなってしまいます。状況にもよりますが、局所麻酔で細い管を差し込むだけなので日帰りで治療が可能です。体への負担も少なく、短時間でできる治療方法です。

グルー治療

グルー治療は血管内塞栓術とも言い、逆流を起こしている静脈内に医療用の瞬間接着剤を注入して固め、血液の逆流を止める治療法です。問題の起きている静脈内に、シアノアクリレートという医療用の接着剤を注入し、血管を閉塞させます。日本では、VenaSeal™(ベナシール)のみ保険適用となり、現在広く普及しています。レーザー治療と比較して痛みが少なく、神経損傷の合併症リスクがないことが特徴です。ストリッピング手術や血管内焼灼術で必修であった術後の圧迫療法も必要ないのもメリット。欧米では広く普及している治療法です。

ストリッピング手術

ストリッピング手術とは伏在静脈抜去切除術とも呼ばれ、弁が働かなくなった静脈を抜いてしまう方法です。レーザーでの治療が困難な場合や対応できない場合に用いられ、古くから下肢静脈瘤の手術方法とされてきました。血管が蛇行している場合や、血管が太過ぎてレーザー治療では治療が困難な場合などに用いられる手法です。 ストリッピング手術では、足のつけ根と膝の内側の2ヶ所を小さく切って、静脈の中に細いワイヤーを入れ、ワイヤーごと静脈を抜き去ります。病気のある血管を全て取り除いてしまうため、再発の可能性は極めて少なく、高い治療効果が期待できます。 しかし、血管内治療に比べて傷口が広く、体への負担が大きくなります。回復までに時間がかかることや、手術後の痛みや出血などのリスクがあるのがデメリットと言えます。

まとめ

まとめ 下肢静脈瘤とは足の血管が膨れてこぶのようになる病気です。流の悪さが原因となることが多く、運動不足や生活習慣によって、下肢静脈瘤になるリスクが上がってしまいます。下肢静脈瘤が重症化してしまうと、レーザー治療や外科手術が必要になります。予防するには、立ちっぱなしを避ける、適度な運動やマッサージ、生活習慣の改善などが有効です。日頃から血流を意識した生活を送ることが、下肢静脈瘤を防ぐポイントです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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