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肛門カンジダとは?原因・症状・治療法などを解説

肛門 カンジダ

お尻がかゆいと感じている場合は、肛門カンジダを発症しているかもしれません。肛門カンジダとは、肛門の皮膚にカンジダという菌が増殖して発症する感染症です。

免疫機能が落ちていたり、肛門周りに汗などが付着したりすることで、発症しやすくなります。発症するとお尻がかゆくなるほか、ヒリヒリしたり皮膚が剥がれたりすることもあります。

最近では肛門の痒みを治す市販薬もありますが、それを使用するとかえって悪化させる可能性があるため、病院に受診して治療することが重要です。

今回の記事では、肛門カンジダの原因・症状・治療法などについて詳しく解説します。

お尻の痒みで悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

肛門カンジダとは?

下腹部をおさえる

肛門カンジダとは、肛門の周りにカンジダが異常に増殖することでさまざまな症状が現れる感染症です。

カンジダはカンジダ属に属する真菌というカビの一種で、健康な人の皮膚・消化管などにも存在しています

そのため、カンジダによる感染症は肛門以外でも発症する場合があるのです。そのなかでも特に女性の性器で発症する「腟カンジダ症」が多いといわれています。

また、カンジダはカビの一種であることから、高温多湿の環境を好みます。肛門は下着に覆われているため、汗をかくと高温多湿の環境になりやすいです。

肥満の方・妊娠中の方などが肛門カンジダを発症しやすい傾向にありますが、免疫力が落ちた場合などでも発症する可能性があります。

そのため、肛門カンジダは誰でも発症するリスクはあるといえます。

肛門カンジダになる原因

お尻を押さえる男性

肛門カンジダは具体的にどのような場合に発症しやすいのか気になる方もいるでしょう。

肛門カンジダの原因は高温多湿・免疫力の低下・糖尿病・薬剤などが挙げられます。ここからは、肛門カンジダの原因について詳しく解説します。

肛門部の高温多湿の状態によるもの

肛門部が高温多湿の状態は、肛門カンジダが発症する要因となります。

例えば、お尻は下着で覆われているため、汗をかくと蒸れて肛門部が高温多湿の状態になります。特にオムツ・ナプキンをつけていると、より高温多湿になりやすいため注意が必要です。

また、気温が高くなる夏の季節では肛門部が高温多湿となりやすい傾向にあります。

皮膚の不潔な状態によるもの

皮膚を不潔な状態にすることも、肛門カンジダの発症につながります。

例えば、排便の拭き残しで肛門付近に便が残っていると、カンジダが増殖する可能性があります。また、オムツ・ナプキンをこまめに交換しないと皮膚が不潔な状態になる場合もあるため、注意が必要です。

免疫力低下している場合によるもの

不調がある女性

免疫力が低下している場合も、肛門カンジダの発症の原因の一つです。

そもそも免疫力とは病気から体を守る力のことで、この免疫力があるとウイルス・菌が体に入った際にこれらを撃退し体を守ります。

カンジダが普段増殖しないのは、この免疫力によって保たれているからであるといえます。しかし、免疫力が減ると、皮膚の防御能が低下しカンジダが増殖し症状が現れるのです。

なお、免疫力が低下する原因は、加齢・不規則な生活・睡眠不足・過度なストレスなどが挙げられます。

糖尿病などの病気によるもの

肛門カンジダは、糖尿病・膠原病・悪性腫瘍などの病気によって引き起こされる場合があります。

糖尿病はインスリンというホルモンが不足もしくははたらきが低下することで、血糖値の上昇を抑えられなくなり、高血糖の状態が続く病気です。

膠原病は免疫が異常にはたらくことで発症する病気で、自己免疫疾患とも呼ばれます。悪性腫瘍は異常な細胞が増殖して、周りに広がったりほかの臓器に転移することで臓器・生命に悪影響を及ぼす病気です。

いずれの病気も皮膚の防御機能が低下するため、肛門カンジダの発症リスクが高まるといわれています。

薬剤投与によるもの

薬剤を服用している場合も、肛門カンジダを発症する可能性があります。肛門カンジダを発症する可能性のある主な薬剤は、ステロイド剤・抗がん剤です。

ステロイド剤は、体内の副腎で作られる副腎皮質ホルモンを人工的に合成した薬です。炎症反応・免疫機能・アレルギー反応を抑えるはたらきがあり、皮膚炎・膠原病などの治療薬として使用されています。

一方で、抗がん剤は細胞の増殖を抑えるもので、がんの治療薬として使用されます。

どちらの薬剤も服用すると免疫力が低下し感染しやすくなるため、肛門カンジダの発症につながるのです。

肛門カンジダの主な症状

痛みがある男性

肛門カンジダの主な症状は、以下の5つが挙げられます。

  • ひりつく痛みがある
  • 痒みを覚える
  • 患部に赤みや水ぶくれが現れる
  • 患部に湿り気がある
  • 抗生物質が効かない

それぞれの症状について解説しましょう。

ひりつく痛みがある

はじめに肛門部がひりつくような、水がしみるような痛みを感じます。痛いので切れ痔と勘違いするケースもあるようです。

なお、切れ痔とは肛門の皮膚が切れてしまった状態で、排便時に痛みを感じたり出血したりします。裂肛とも呼ばれています。

痒みを覚える

お尻の悩み

肛門カンジダが発症すると、痛みだけではなく痒みを覚えます。はじめはモゾモゾとした感覚で痒みを覚えます。特に排便後・入浴後に痒みを感じることが多いようです。

進行すると1日中痒みを感じるようになり、眠れなくなるなど日常生活に支障をきたす可能性があります。

患部に赤みや水ぶくれが現れる

痛み・痒みを感じるだけではなく、患部には赤い湿疹・小さい水ぶくれが現れます。赤くなった箇所は次第に白くなっていきます。

また、小さい水ぶくれは小水疱とも呼ばれ、何らかの原因により皮膚が損傷することでたんぱく質・水がたまってできるものです。

患部に湿り気がある

発赤・小水疱が現れると、分泌物が出てくるため、患部に湿り気を感じるようになります。この状態を放置すると、肛門の周りの皮膚が厚くなり、出血・化膿を起こす可能性があります。

なお、化膿とは傷口に細菌が入り炎症を起こしている状態のことです。患部に炎症が起こると、赤く腫れて痛みを感じるだけではなく、膿が出てきます。

膿は壊れた白血球・死んだ細菌などが含まれている液体で、粘りやにおいがあります。化膿を起こすと傷の治りが遅くなったり、周りに感染が広がったりするリスクがあるため、注意が必要です。

抗生物質が効かない

カンジダをはじめ真菌は抗生物質が効きません。なお、抗生物質とは、病気の原因となる細菌などの微生物の成長を抑制する薬で、細菌感染症に有効とされています。

抗生物質の服用はカンジダによる感染症を悪化させる原因となることがあるため、注意が必要です。

肛門カンジダの治療法

軟膏を塗る

「もしかしたら、肛門カンジダになってしまったかも」と思った場合は、自己判断せず、病院を受診することをおすすめします。

なぜなら、自己判断で市販薬で治療しようとすると、かえって悪化させてしまう恐れがあるからです。

肛門カンジダと診断されたら、医師の指導のもとに治療を行うことが重要です。では、具体的にどのような治療を行うのかを詳しく見ていきましょう。

抗真菌薬の塗り薬を使用する

肛門カンジダの治療薬としては、水虫などに使用される抗真菌薬が適しています。

一般的な湿疹の場合はステロイド軟膏を使用することがありますが、肛門カンジダで使用すると菌が増殖して症状が悪化してしまうため、注意が必要です。

また、抗真菌薬のなかでも肛門カンジダの治療に使用されるのは、アゾール系の抗真菌薬です。アゾール系の抗真菌薬は、さらにイミダゾール系・トリアゾール系の2種類に分けられます。

このうち、肛門カンジダをはじめ皮膚カンジダ症に対して使用される抗真菌薬は、イミダゾール系の薬です。

主なイミダゾール系の抗真菌薬は、以下のようなものがあります。

  • ビホナゾール
  • ケトコナゾール
  • ネリコナゾール塩酸塩
  • ラノコナゾール
  • ルリコナゾール

これらの薬の形態は、軟膏剤・クリーム剤・ローション剤・ゲル剤があり、そのうち軟膏剤もしくはクリーム剤で処方されることが多いようです。

抗真菌薬の用法は基本的に1日1回優しく伸ばして塗るようになっていますが、肛門のように洗浄する箇所は1日1回以上塗るように説明される場合があります。

抗真菌薬は数週間程度にわたり塗布することで、症状が緩和していくとされています。

抗真菌薬の塗り薬の特徴は、症状の緩和に効果的であり、副作用が少なく抑えた価格で手に入れやすいことです。

しかし、菌が広範囲に広がっている・体に不自由があって患部に手が届かないといった場合は、抗真菌薬の内服薬を使用することがあります。

内服薬を使用する

薬を服用する

肛門カンジダの治療薬として、トリアゾール系の内服薬を使用することもあります。主なトリアゾール系の抗真菌薬は、以下のようなものが挙げられます。

  • イトラコナゾール
  • フトコナゾール
  • ボリコナゾール

これらのうち皮膚カンジダ症の治療薬に使用されるのは、イトラコナゾールが多いようです。

抗真菌薬の内服薬は、患部が広範囲であったり患部に塗り薬を塗布できなかったりする場合に適しています。

しかし、塗り薬と比べると症状の緩和に時間がかかったり、費用がかかったりします。

さらに、一緒に服用できない薬があるほか、副作用として肝機能障害を起こす可能性があるため注意が必要です。

通気性の良い下着をつける

肛門カンジダは高温多湿の環境により、発症しやすくなります。肛門部の多湿の環境を防ぐには、通気性のよい下着をつけましょう。

また、吸汗性・速乾性のあるタイプの下着もおすすめです。これらの機能を持つ優れた下着は、綿・絹などの天然素材のものが挙げられます。

化学繊維の下着しか持っていない場合は、これを機に天然素材のものを購入してみるとよいでしょう。

また女性の場合は下着の種類だけではなく、生理の時につけるナプキンの交換にも、注意が必要です。同じナプキンをつけている時間が長いと肛門部が蒸れやすくなるため、定期的に交換するように心がけましょう。

肛門を清潔に保つ

肛門を清潔に保つことも重要です。肛門カンジダは肛門・その周りが不潔であることで、菌が増殖し発症します。

肛門を清潔に保つためには、排便後は便が残らないように優しく拭き取ったり、必要であれば温水洗浄便座を使用したりするとよいでしょう。また、入浴することもおすすめです。

ただし、トイレットペーパーで肛門を拭き過ぎたり、温水洗浄便座を使い過ぎたりすると、肛門の皮膚が傷ついてしまい症状が悪化する可能性がありますので注意しましょう。

肛門カンジダは再発しやすい?

考える女性

肛門カンジダは発症する原因となるものが残っていると、再発する可能性があります。そのため、治療する際には発症する原因を探し、それを除去することが重要です。

肛門カンジダの治療では、抗真菌薬の塗り薬を使用するのが基本となります。そのうえで、原因となるものを除去するように対策をします。

肛門が蒸れている・不潔の状態であるといったような原因である場合は、肛門を清潔に保ちつつ、蒸れないように通気性のよい下着を着用することがポイントです。

免疫力の低下が原因である場合は、免疫力を高めるように生活習慣を改善することが重要です。

免疫力を高めるためのポイントは、規則正しい生活をする・栄養バランスのよい食事をする・適度な運動をする・ストレスをためない・十分な睡眠をとるといったことが挙げられます。

また、糖尿病で血糖コントロール不良が原因である場合は、食事・運動などによる治療を行うことで血糖コントロールを安定させることが必要です。

さらにステロイド剤を服用していることが原因である場合は、ステロイド剤の服用を中止します。

肛門カンジダを発症する原因は、個人によって異なります。肛門カンジダを再発しないためには、ご自身の原因を特定してそれらを解消できるように努めていきましょう。

肛門カンジダにステロイドは使えない?

バツを示す医療スタッフ

肛門の痒みがあるとステロイドを処方されることがありますが、肛門カンジダの場合はステロイドが使えないため注意が必要です。

ステロイドには炎症を抑えるだけではなく、免疫機能も抑える作用があります。そのため、ステロイドを使用すると、皮膚の免疫力が低下し症状が悪化する可能性があるのです。

なお、一般的に肛門の痒みでステロイドが処方されるのは、肛門掻痒症と診断された場合が多いとされます。肛門掻痒症とは、肛門の周りに炎症が起こり強い痒みを感じる病気です。

しかし、肛門に痒みがあっても患部を見せるのは恥ずかしく、病院で薬だけもらって治療する患者さんも少なくありません。

肛門の痒みだけで肛門カンジダだと診断できないため、きちんと診察しないとステロイドが処方されてしまう可能性もあるでしょう。

また、肛門の痒みは肛門カンジダだけではなく、皮膚がん・肛門がんによる場合もあります。そのため症状だけで自己判断せず、肛門科もしくは皮膚科の病院を受診することが大切です。

まとめ

案内する医療スタッフ

肛門カンジダは、肛門の皮膚にカンジダという菌が増殖して痒み・痛みなどの症状が現れる感染症です。

肛門カンジダの原因は、高温多湿の環境・免疫力の低下・糖尿病などの病気・薬剤などが挙げられます。これらの原因を解消しないと、再発するリスクがあります。

肛門カンジダを治療するためには、患者さん個人の原因を特定しその原因にあった対策を行うことが重要です。

また、治療では抗真菌薬の塗り薬を使用することが多く、場合によっては内服薬を服用することもあります。

ただし、細菌の感染症などに処方されるステロイドは肛門カンジダの治療薬として使用できないため注意しましょう。

肛門カンジダは症状から特定できないため、少しでも肛門カンジダの疑いがある場合は一人で悩まず病院を受診してください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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