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大腸がん手術の肛門温存・人工肛門について|大腸がんの症状・治療も解説

大腸がん 肛門

大腸がんは日本人が発症することの多いがんの一つです。治療方法は主に手術ですが、腫瘍ができている部位によっては肛門の切除を検討する必要があります。

この場合、人工肛門を作るか、肛門温存手術を行うかの選択肢があります。それぞれの方法にはメリットやデメリットがあるため、よく検討することが重要です。

本記事では、大腸がん手術の肛門温存・人工肛門について詳しく紹介します。また、大腸がんの症状・治療についても解説します。

大腸がんの原因や症状

医師に相談する男性

大腸がんとはどのような病気ですか?
大腸がんは、大腸表面の粘膜にできる悪性腫瘍です。大腸は消化管の最後尾にある臓器で、小腸を通った食べ物の残り物から水分や塩分を吸収し、便の形を作る役割があります。
大腸がんは大腸のどの部分にも発生する可能性がありますが、特に直腸や結腸に見られるケースが多いでしょう。大腸がんは日本では男女ともに多く発生しているがんの一つで、年間約15万人が発症し、約5万人が死亡しています。
大腸がんの原因について教えてください。
大腸がんの原因は完全に解明されているわけではありませんが、遺伝的な要因や生活習慣などが関係していると考えられています。遺伝的な要因としては、家族性大腸ポリポーシスやヘレディタリーノンポリポーシス性大腸がんなどの遺伝性疾患や、個人の遺伝子型などが挙げられます。
また、生活習慣としては、運動不足・野菜や果物の摂取不足・肥満・過度の飲酒などが原因です。女性の場合、加工肉や赤肉の摂取により、大腸がんが発生する危険性が高まるともいわれています。このように、大腸がんの原因としては、高脂肪・低繊維食など食習慣の欧米化が影響していると考えられています。
どのような症状が出るのですか?
大腸がんの症状としては、次のようなものが挙げられます。

  • 血便
  • 便秘
  • 下痢
  • 腹痛
  • 嘔吐
  • 貧血
  • 残便感
  • 便が細くなる

初期の大腸がんは無症状の場合が多いですが、進行すると腫瘍が便の流れを妨げたり、腫瘍から出血したりして症状が現れる場合があります。また、大腸がんが発生した場所によっても症状が異なります。

大腸がんの種類について教えてください。
大腸がんには、大きく分けて直腸がんと結腸がんの2種類があります。結腸がんは大腸の右側から左側までの部分に発生するものです。
結腸がんは発生する場所によって、さらに盲腸がん・上行結腸がん・横行結腸がん・下行結腸がん・S状結腸がんに分けられます。盲腸・上行結腸・横行結腸などにがんができた場合は、進行しても腹部症状が目立ちにくいのが特徴です。
そのため、貧血や腹部のしこりなどの症状で発見される場合があります。一方で、直腸がんは肛門に近い部分である直腸に発生するがんです。直腸がんの場合、便の通りが悪くなることにより血便・便秘・便が細くなる・腹痛など排便に伴う症状が出やすいでしょう。

大腸がんの治療や肛門温存

説明する医師

大腸がんが疑われる場合どのような検査を行いますか?
大腸がんが疑われる場合、大腸内視鏡検査を行い、がんかどうかを確定します。大腸内視鏡検査は、細い管状のカメラを肛門から挿入して、大腸の内部を観察する検査です。
ポリープや異常な粘膜が見つかった場合は、その場で切除して組織検査を行います。組織検査によって大腸がんと診断された場合、さらに注腸造影検査やCT・MRIなどの画像検査を行って、がんの正確な部位・進行度・転移の有無などを調べます。
注腸造影検査は肛門に細い管を挿入し、バリウムといわれる造影剤と空気を注入する検査です。その後、X線画像を撮影します。大腸粘膜に付いたバリウムの様子から、がんの正確な位置・大きさ・形・腸の狭さの程度などがわかります。
大腸がんの治療方法について教えてください。
大腸がんの治療方法は、がんの進行度や転移の有無などによって異なります。ごく初期の大腸がんの場合、内視鏡治療が可能です。内視鏡治療ができない場合、一般的に治療は手術・化学療法・放射線療法などの組み合わせで行われます。
手術は、がん細胞を含む大腸の一部を切除し、健常な部分をつなぐ治療方法です。手術後に化学療法や放射線療法を行うことにより、残存したがん細胞を攻撃します。また、化学療法や放射線療法を手術前に行うケースもあります。これは、がん細胞を小さくして手術しやすくするためです。
肛門温存手術について教えてください。
肛門温存手術は、直腸や肛門に近い部位の大腸がんを切除する際に、肛門を残す手術法です。肛門から遠い順番に、高位前方切除術・低位前方切除術・超低位前方切除術と腸管を切離すラインが変わります。
いずれの手術も、肛門を締める筋肉である肛門括約筋を部分的に切除してから、腸と肛門をつなぐ方法です。場合によっては、手術を行う前に放射線療法でがん病巣を小さくしてから手術を行う場合もあります。
このような手術を行うと、人工肛門を増設する必要はありませんが、排便障害や性機能障害などの合併症が生じる可能性があります。また、腫瘍が肛門に近くなると再発のリスクが高くなるため、治療の適応外になるでしょう。
人工肛門造設術が必要なのはどのような場合ですか?
腫瘍が肛門に近い位置にある場合、肛門温存手術が行えず、肛門も含めて切除する「直腸切断術」を行います。また肛門を切除しないとしても、腫瘍の切除が難しく、腫瘍により腸閉塞が生じる場合もあります。
そうした場合、人工肛門を取り付ける「人工肛門造設術」が必要になります。人工肛門造設術は、大腸や直腸の一部またはすべてを切除した後に、人工的に排便口を作る手術法です。具体的には、お腹の壁から腸管の一部を出し、開いて固定することになります。
自分の意思では排泄をコントロールできず、専用の袋(パウチ)を取り付けて排泄物を溜め、溜まった排泄物を定期的にトイレに流す必要があります。

大腸がんの早期発見や転移について

検便容器

大腸がんを早期発見するために大事なポイントを教えてください。
大腸がんは、早期に発見できれば治療の成功率が高いがんです。しかし、初期の段階では自覚症状がほとんどないといわれているため、定期的な検診を受けることが大切になります。大腸がんの検診としては、便潜血検査や内視鏡検査などが挙げられます。
便潜血検査は便を採取し、腫瘍からの微小な出血がないか調べるものです。内視鏡検査は細いカメラ付きの管を肛門から挿入して、大腸を直接観察する方法です。より正確にがんの有無や進行度などを判断できます。
50歳以上の人は2年に1回、また家族歴や遺伝性のリスクがある人はより早くから検査を受けることが推奨されています。
大腸がんはどのように転移をするのですか?
大腸がんは、まず大腸の壁に浸潤して成長し、次にリンパ節や血管に広がっていきます。リンパ節や血管から運ばれたがん細胞は、ほかの臓器に付着して新たながんを作ります。
これが転移と呼ばれるものです。大腸の血流はまず肝臓に流れるため、肝臓への転移が多いです。次に多いのが肺への転移で、進行すると骨・脳など全身の臓器に転移する場合もあります。ほかにも腹膜にがんが散らばるように転移するのが「腹膜播種」と呼ばれる転移です。また、手術後の再発として転移が見られるケースもあります。
転移した場合の治療は、手術が基本となり、切除可能な転移巣を切除します。手術できない場合や手術しても効果がなかった場合は、化学療法や放射線療法の対象になるでしょう。

編集部まとめ

カルテを持つ看護師

本記事では、大腸がん手術の肛門温存・人工肛門について詳しく解説しました。

人工肛門は外部に排泄物を出すための袋を装着する方法です。生活に制限や不快感がある一方で、再手術や合併症のリスクは低いなどのメリットがあります。

肛門温存手術は肛門を切除せず自然な排泄機能を保つ方法です。生活の質は高い一方で、再手術や合併症のリスクがあります。また適応にならない場合もあるため、医師とよく相談し、生活スタイルなども考えたうえで決定する必要があります。

大腸がんは特に早期の場合、自覚症状が少ないため、定期的な検診を受けることが重要です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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