足のかゆみの原因は乾燥肌だからでしょうか? 実は足のかゆみには思わぬ病気が関係していることがあります。その一つとしていわれているのが下肢動脈瘤です。ここでは下肢動脈瘤について、なりやすい人の特徴、予防法や治療方法について詳しく解説します。また、下肢静脈瘤以外でも足のかゆみを引き起こす病気はあるのか、足がかゆくなる原因についても説明します。足のかゆみが気になる方には参考になる内容ですので、ぜひ最後まで目を通してください。
下肢静脈瘤とは
下肢静脈瘤は静脈がこぶのようにふくれる特徴があり、足の血液の流れが滞ることで起こります。日本には1000万人以上の患者さんがいるといわれ、決して珍しい病気ではなく、特に女性に多くみられます。命にかかわるようなことはまれですが、徐々に進行し、症状が悪化していきます。悪化すると場合によっては手術も必要になるので注意が必要です。それでは下肢静脈瘤について、下肢静脈瘤になりやすい人についてみていきましょう。
- 下肢静脈瘤とはどのような病気ですか?
- 足の血液は、静脈弁や足の筋肉の働きにより、心臓まで戻ることができています。しかし、さまざまな要因によってこの機能が低下すると、血液が心臓に戻れなくなり、次第に足の静脈に血液がたまりこぶとなるのです。この状態が長く続くと次第にむくみやこむら返りといった自覚症状が出始めます。かゆみも出始め、皮膚がぼろぼろになって穴が開くこともあります。悪化すると治りにくいため注意が必要ですね。
- 下肢静脈瘤にはどのような人がなりやすいですか?
- 足の静脈にある静脈弁やふくらはぎの筋肉の働きが低下することで血流が滞ることからも、以下のような状況にある人がなりやすいと言われています。
・立ち仕事
長時間立ち続ける仕事をしている人は、静脈内の圧力が高まるため、下肢静脈瘤を発症しやすくなります。これは、血液の循環が妨げられ、静脈の弁に過度の負担がかかるためです。・妊娠や出産
妊娠や出産も、下肢静脈瘤のリスクを高める要因の一つです。妊娠中はホルモンの変化や子宮の成長によって静脈への圧力が増し、血流が滞りやすくなります。・肥満
肥満は、脚への圧力を増加させることにより、静脈瘤の発症リスクを高めます。脂肪組織が静脈に圧力をかけることで、血流の流れが悪くなるためです。・加齢
加齢も下肢静脈瘤のリスクを増加させる要素です。年齢とともに、血管の弾力性が低下し、血液の循環が悪くなるため、静脈瘤が発生しやすくなります。・遺伝
遺伝的要因も重要で、家族歴がある場合、下肢静脈瘤を発症する確率が高くなります。・性別
最後に、性別も影響します。女性はホルモンの影響や妊娠の経験などにより、男性よりも下肢静脈瘤を発症しやすいとされています。
足のかゆみの原因となる病気
足のかゆみは下肢静脈瘤の症状の一つですが、そのかゆみに特徴はあるのでしょうか。また、下肢動脈瘤以外で、足のかゆみの原因としてどんなものが考えられるでしょうか。何か他の病気が潜んでいることもあるのでしょうか。この二つについても解説していきます。
- 下肢静脈瘤が原因で足がかゆくなることはありますか?
- 下肢静脈瘤の初期には自覚症状はありませんが、血流が滞っている状態が長期間続くと、さまざまな自覚症状が出てきます。その一つがかゆみです。かゆみも放置しておくと、悪化して皮膚がぼろぼろになり穴が開いたり、汁が出てきたりすることもあります。症状がひどくなると治療に時間がかかるので、早めに病院を受診することが大切です。
- 下肢静脈瘤以外に足がかゆくなる病気を教えてください。
- 刺激物に触れたり、乾燥肌になったり、またアトピー性皮膚炎などが原因でかゆみが起こります。それ以外にも、糖尿病の合併症や肝臓の病気でも足のかゆみが引き起こされることがあるので注意が必要です。
下肢静脈瘤の予防と治療
このような下肢静脈瘤を予防する方法はあるか気になるところですね。そこで、まず運動やマッサージに予防効果があるのかについて、続いて現在行われている治療法についても紹介します。それぞれにメリット、デメリットがあり、静脈瘤のタイプや患者さんの状態も個々に異なるため、適切な治療法を選択することが大切です。治療の一つである「弾性ストッキング」についても詳しく説明しますので、参考にしてください。
- 運動やマッサージで下肢静脈瘤を予防できますか?
- 下肢静脈瘤は足の血流が滞ることで発症し、進行します。そのため、適度な運動は血流を良くし、脚の筋肉も鍛えることになるため予防効果が期待できます。また、立ち仕事の方はできるだけ歩き回ったりして、同じ場所に長時間立ったままになることは避けましょう。デスクワークの方も長時間同じ姿勢でいることは良くありません。つま先を上げ下げする、足台で足を高くするなどのストレッチを仕事中に取り入れるとよいでしょう。入浴時や就寝時に足のマッサージをすることも効果的です。
- 弾性ストッキングを用いた治療について教えてください。
- 医療用の弾性ストッキングは、特殊な編み方で程よく足を圧迫するので、血液の循環を助け、血液を心臓に戻しやすくします。足首部分が最も圧力が強く、上に行くにしたがって圧迫圧が弱くなるような設計になっているのです。このことから下肢静脈瘤の進行を防ぎ、足のむくみやだるさといった症状の改善が期待できます。ストッキングにはいくつもの種類があるため、症状や状態に適したものを使用することが大切です。
男性の患者さん向けには医療用弾性ストッキングもあります。手術や薬剤を使用することなく、低価格で、履くだけなので続けやすいといったメリットがあります。ただ、長期間使用していると圧迫圧も落ちるため定期的な交換が必要になることや夏に着用すると暑いといったデメリットもあります。また、できた静脈瘤をなくすことはできないので注意が必要です。弾性ストッキングは市販もされていますが、圧迫する力が弱く効果がない場合もありますので、治療には医師の指示のもと医療用弾性ストッキングを着用しましょう。
- 下肢静脈瘤のそれ以外の治療法について教えてください。
- 現在行われている治療法として、以下の方法があります。
・ストリッピング手術
静脈に細い針金(ワイヤー)を入れて静脈を抜き取る方法です。原因となる静脈を取り除くことから、安定した効果が期待できます。デメリットは他の治療法に比べて傷口が広いため体への負担が大きく、回復に時間がかかることです。以前は入院が必要な手術でしたが、最近は日帰り手術が可能な病院もあります。・硬化療法
静脈瘤に薬を注入し、固める方法です。外来で対応可能となっています。軽症の下肢静脈瘤に効果があります。・レーザー治療
静脈を引き抜くかわりに、静脈の血管内にカテーテルを入れて、静脈を焼いてふさぐ方法です。治療後半年も経つと焼いた静脈は消失します。局所麻酔で日帰り手術が可能な体への負担が少ない治療法です。・グルー治療
比較的新しい治療法。医療用接着剤(グルー)をカテーテルで治療する血管内に注入し血管を固めます。レーザー治療より周辺組織への影響が少なく、針を刺す回数も少なくすみます。ただし、グルーを注入するため、アレルギーがある場合は受けられないことがあります。
編集部まとめ
下肢静脈瘤は進行するとかゆみなどの症状も出てきます。放置すると手術が必要になることもあり、早めに治療することが大切です。足の血流が滞ると悪化するので、特に立ち仕事やデスクワークの方は長時間同じ姿勢を取らない、適度な運動や足のマッサージなど普段の生活でも意識して取り入れてみてください。なお、下肢静脈瘤以外でも足のかゆみを引き起こす原因はあり、思わぬ病気が潜んでいることもあります。症状が気になる方は医療機関を受診することをおすすめします。
参考文献