下肢(脚)に瘤(こぶ)ができている、脚が重い、だるい、浮腫む……こんなお悩みはありませんか? その症状は、下肢静脈瘤かもしれません。下肢静脈瘤は意外に症例数の多い病気であり、立ち仕事やデスクワークの方、妊娠出産後の方などに多くなっていると言われています。症状はあっても、いつ、どこで診察を受けたら良いか悩みどころです。下肢静脈瘤の受診の目安や受診する場所、治療法などについてご説明します。
下肢静脈瘤について
下肢静脈瘤とはどのような病気なのでしょうか。下肢静脈瘤の種類や原因、予防法などについて、項目ごとにわかりやすく説明していきます。
- 下肢静脈瘤について教えてください
- 下肢静脈瘤とは、脚の静脈血管が浮き出てきて、あちこちで瘤のように膨らんでしまう症状のことを言います。人によっては皮膚表面の静脈瘤がよく見えない場合もありますので注意が必要です。
- 下肢静脈瘤にはどのような種類がありますか?
- 下肢静脈瘤の種類は、大きく分けて3種類あります。種類ごとに特徴をご説明します。
・伏在静脈瘤
大伏在静脈や小伏在静脈の逆流防止弁が壊れて、血管が瘤のように浮き出る静脈瘤です。下肢静脈瘤の中ではもっとも多いとされる症状で、おもにレーザー治療を用いた手術で治療します。・網目静脈瘤
皮膚直下の浅い部位、細い静脈にできる下肢静脈瘤です。血管が青く網目状に見えることが特徴です。小さな静脈瘤のため、おもに注射による硬化療法にて治療します。・クモの巣静脈瘤
1mm以下の細い静脈瘤がクモの巣状に広がって見える下肢静脈瘤です。静脈瘤としては軽度であり、自覚症状がほとんどなく、症状がない限りは治療を必要としません。
- 下肢静脈瘤の原因は何ですか?
- 静脈血は下肢から心臓に流れますが、長時間立ちっぱなしでいることなどの重力の関係で、心臓から脚に流れようとしてしまいます。こうした逆流を防ぐため、静脈には逆流防止弁があります。この弁が壊れてしまうことが原因で血液が脚に逆流し、下肢に血液がたまり、静脈が瘤のように膨らみ、下肢静脈瘤となるのです。
- 下肢静脈瘤にはどのような人がなりやすいですか?
- 妊娠出産をきっかけに発症しやすいことから性別としては女性に多いとされ、加齢とともに静脈瘤の頻度は増えると言われています。身内に静脈瘤の症状を持つ人がいる、立ちっぱなしの仕事をしている場合もなりやすいとされています。
- 下肢静脈瘤にならないための予防について教えてください
- 下肢静脈瘤の完璧な予防法とは言えませんが、以下のような方法があります。
- 適度な運動
- 長時間の立ち仕事、デスクワークをせず定期的に休息する
- 脚を心臓より高くして寝る
- 脚のマッサージをする
このように、足の浮腫(むくみ)の改善や血流を良くすることで、下肢静脈瘤の進行を遅らせるために効果的だと言えます。
下肢静脈瘤の受診の目安
- どのような症状が出たら受診するべきですか?
- 下肢静脈瘤のおもな症状としては、以下のようなものがあります。
- 脚に瘤ができている
- 脚が浮腫む、重い、だるい
- 脚に疲れ、不快感がある
- 脚がつる(こむら返り)ことが増えた
症状は人によって異なり、ひざの裏側などの気づきにくい場所にできる場合もあります。少しでも違和感がある場合は、早めに病院を受診すると安心です。
- 下肢静脈瘤の受診は何科に行けば良いですか?
- 下肢静脈瘤の診療は、おもに血管外科で行われます。病院によっては一般外科や皮膚科、形成外科などでも診療を行っており、下肢静脈瘤専門クリニックも増えているようです。目当ての病院へ行く前に、下肢静脈瘤の治療が可能かどうか確認しておくと良いでしょう。
下肢静脈瘤の治療法について
ここからは、下肢動脈瘤の治療法について解説します。
- 下肢静脈瘤の治療法にはどのようなものがありますか?
- 下肢静脈瘤の治療には、大きく分けて保存的治療、硬化療法、血管内治療、ストリッピング手術の4種類があります。
- それぞれの治療のメリット・デメリットについて教えてください
- それぞれの治療のメリット・デメリットについて、種類別にご説明します。
【保存的治療】
手術や薬以外の症状をやわらげ、進行を予防するための治療法で、おもに弾性(着圧)ストッキングの着用をします。メリット
- 手術や薬を用いないため、手軽にできる
デメリット
- 根本的な治療にはならない
【硬化療法】
下肢の静脈瘤に薬を注射して固めてしまう治療です。メリット
- 受診したその日に治療(約10分)でき、体への負担が少ない
- 小さな静脈瘤(クモの巣状や網目状)に対応可能
デメリット
- 太い血管に対しては効果が不確実
- 最終的に目立たなくなるが、術後落ち着くまではしこりが残ったり、皮膚に色がついたり、痛みが生じることがある
【血管内治療(高周波、レーザー)】
弁が壊れてしまった静脈内部にファイバー(カテーテルという細い管)を通して、高周波またはレーザーにて血管を内部から焼いてふさぎます。メリット
- 日帰り手術が可能
- 皮膚を切開しないため傷ができない
- 血管内部の治療のため体への負担が少なく、術後の痛みも少ない
デメリット
- 蛇行した血管や太い血管は治療不可の場合がある
【ストリッピング手術】
逆流防止弁が壊れた大伏在静脈を引き抜く手術です。メリット
- 蛇行した血管や太い血管の治療が可能
- 高周波やレーザーなどの特殊な機器が不要
デメリット
- 静脈を引き抜く際、周囲の組織を傷めてしまうことがある
- 皮膚を切開する必要があり傷が残り、術後の痛みや皮下出血が強いことがある
- 基本的には入院が必要
それぞれの治療方法で、メリット・デメリットがあります。自分にあった治療はどんなものなのか、それぞれ照らし合わせて医師としっかり相談して決めると良いでしょう。
- 治療の期間はどれくらいかかりますか?
- 保存治療であれば最低でも2、3カ月間は行うことが望ましく、硬化治療、血管内治療は日帰り手術が可能です。手術1週間後ごろに再度経過を見て、必要に応じて硬化治療が追加される場合もあります。ストリッピング手術の場合は入院手術に3日前後、術後2週間~1カ月ほどの安静が必要です。ただし、症状や経過は人によって異なるため、治療の際は医師とよく相談するようにしましょう。
- 治療の費用について教えてください
- 保存療法として使用される弾性ストッキングは約4000~1万円で、購入先やメーカーによって異なります。そのほか、保険適用で3割負担とすると、初診料や検査料が約3000円前後、再診や検査料が2000円前後、手術は4~7万円程度であり、治療を受ける病院や症状、治療内容によって異なるため、治療前に医師へ確認してください。
下肢静脈瘤の治療後のケアについて
下肢静脈瘤の治療後は、どのように過ごしたら良いのでしょうか。治療後のケアや注意点についてご説明します。
- 下肢静脈瘤の治療が終わったあとのケアについて教えてください
- 弾性ストッキングの着用を継続し、血流を良くするため、長時間立ちっぱなしにならない、脚を定期的に動かすなどの予防法に努めましょう。
- 下肢静脈瘤の治療前後の注意点について
- 下肢静脈瘤の手術後約1カ月は血栓リスクが高い状態とされており、注意する必要があります。しっかりと診察を受け、医師の指示に従いましょう。
編集部まとめ
下肢静脈瘤は、下肢に逆流した血液が滞留することで起こります。脚を動かすことでふくらはぎの筋肉がポンプの役割をし、脚の先から心臓へと血液を押し上げてくれるため、下肢静脈瘤の予防につながるのです。日ごろから脚を積極的に動かし、血の流れを良くするよう心がけましょう。普段の生活で脚に瘤、浮腫み、だるさやこむら返りが増えるなど症状があって困ったときが受診の目安です。病院を受診し、必要であれば治療を受けるようにしましょう。
参考文献