下肢静脈瘤は足の血管が膨れて浮き上がって見える病気です。命に関わる危険性はほとんどないといわれていますが、足がだるくなったりむくんだりして生活に支障を来す可能性があります。
下肢静脈瘤は一般的にふくらはぎにできるイメージがありますが、太ももにもできるのか気になる方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、今回の記事では下肢静脈瘤が太ももにできるケースを解説します。また、下肢静脈瘤の原因・種類・治療も紹介するので、下肢静脈瘤の疑いがある方・気になる方はぜひ参考にしてください。
下肢静脈瘤は太ももにもできる?
- 下肢とは身体のどの部分を指すのですか?
- 下肢は、太ももの付け根にある股関節から足の指先までの部分を指すのが一般的です。太もも・膝・ふくらはぎ・足首などが下肢に該当し、これらの部分に静脈瘤ができるものを下肢静脈瘤といいます。
- 下肢静脈瘤はどのような症状が出るのですか?
- 下肢静脈瘤の症状は、足に重だるさや疲れを感じる・痒みや痛みを覚える・足がむくむなどです。ただし、これらの症状がない場合もあります。
症状が進行すると、皮膚や静脈の炎症・皮膚の色が黒っぽくなる色素沈着・皮膚が硬くなる皮膚硬結が起こります。さらに重症化すると皮膚や粘膜が傷つき潰瘍が発生する場合もあるため、注意が必要です。
- 下肢静脈瘤は太ももにもできますか?
- 下肢静脈瘤は太ももにもできます。下肢静脈瘤が発生する場所は以下のとおりです。
- 太ももの内側
- ふくらはぎ
- 足首の内側
- 膝の裏側
- 足の外側
静脈瘤が発生する場所によって、こぶ状に膨らんだり網目状に膨らんだりします。太ももにできる下肢静脈瘤は太い静脈にできるタイプで、こぶ状に膨らんで見えます。
下肢静脈瘤の原因・種類
- 下肢静脈瘤の原因を教えてください。
- 下肢静脈瘤となる原因は、静脈にある弁が壊れたり機能不全となったりすることです。また、足の筋肉のはたらきが弱まることも原因として挙げられます。足の静脈にある血液が心臓に戻るには、重力に逆らって上昇することが必要です。
そこで、ふくらはぎにある筋肉がポンプのような役割を果たすことで、血液が心臓に流れます。また、静脈では逆流しやすいため、逆流を防ぐ弁のはたらきも重要です。このように筋肉や弁によって静脈の血液は心臓に戻りますが、筋肉や弁のはたらきが弱まると静脈に血液がたまり血管が膨れてしまいます。
筋肉や弁のはたらきが弱まるのは、加齢・肥満・長時間の同じ姿勢・妊娠などが関連しているとされます。さらに過去に足に怪我をしたことがある・生まれつき静脈の弁のはたらきや血流が弱い場合は下肢静脈瘤が発生しやすいため、注意が必要です。
- 下肢静脈瘤の種類を教えてください。
- 下肢静脈瘤には、主に以下の4種類があります。
- 網目状静脈瘤
- くも状静脈瘤
- 側枝静脈瘤
- 伏在静脈瘤
網目状静脈瘤は皮膚表面にある静脈が膨らんでいる状態で、皮膚の表面に青く細い血管が見える特徴があります。くも状静脈瘤は皮膚内の毛細血管が膨らんでいる状態で、赤く細い血管がくもの巣のように皮膚にひろがって見えます。
側枝静脈瘤は、太い静脈である伏在静脈から枝分かれした部分の血管が膨れた状態です。網目状静脈瘤やくも状静脈瘤とは異なり、血管が浮き上がって見えます。伏在静脈瘤は伏在静脈が膨れた状態で、大伏在静脈瘤と小伏在静脈があります。
大伏在静脈瘤は足の付け根からくるぶしまで通っている大伏在静脈に発生するもの、小伏在静脈瘤はふくらはぎの裏側を通っている小伏在静脈に発生するものです。伏在静脈瘤は、ほかの種類よりも瘤が大きく手術が必要となる場合があるでしょう。
なお、太ももにできる下肢静脈瘤は、大伏在静脈瘤・くも状静脈瘤といわれています。
- 下肢静脈瘤の種類を知るにはどのような検査が必要ですか?
- 下肢静脈瘤の種類を確認するためには、超音波検査が必要です。超音波検査とは人の耳では聞こえない程度の高い周波数の音である超音波を用いて、体内を調べる検査です。
超音波検査では、静脈瘤が発生している場所を確認できます。さらに、静脈の太さや逆流の度合いの診断も可能です。
なお、下肢静脈瘤の診断は超音波検査のほか、問診を行ったり立位や座位で足の状態を確認したりします。
下肢静脈瘤の治療や対処法
- 下肢静脈瘤が疑われる場合に行く診療科を教えてください。
- 下肢静脈瘤の疑いがある場合は、血管外科や心臓血管外科を受診するのが一般的です。
その他には皮膚科・形成外科・循環器内科でも診察を行うことがあります。近年では下肢静脈瘤の専門のクリニックもあるので、何科を受診するか迷ってしまう方は専門のクリニックの受診を検討するのもよいでしょう。
- 下肢静脈瘤の治療方法を教えてください。
- 下肢静脈瘤の治療は患者さんの症状や希望に応じて行うことが一般的のようです。下肢静脈瘤の治療法は、以下の4つが挙げられます。
- 日常生活の改善
- 圧迫療法
- 手術
- 硬化療法
基本的な下肢静脈瘤の治療方法は、日常生活の改善・圧迫療法です。
日常生活では長時間の立ちっぱなしや座りっぱなしを避ける・足を高くして寝る・マッサージを行うなどが有効とされています。
圧迫療法は、弾性ストッキングを着用して足を圧迫する方法です。弾性ストッキングが筋肉のポンプのような役割を果たすことで、静脈の血流が滞るのを抑えます。根本的な治療法ではないものの、症状を緩和したり進行を抑制したりする効果が期待できます。
また、手術や硬化療法も下肢静脈瘤の治療方法です。手術は根本的に治療する方法で、伏在静脈瘤のタイプのように血液の逆流が生じている場合に行います。下肢静脈瘤の手術には、原因となる静脈を抜き取るストリッピング手術・静脈を縛ることで逆流を止める高位結紮術・レーザーなどで焼いて血管を閉塞させる血管内焼灼術などがあります。
硬化療法は静脈瘤に降下剤を注入して、原因となる血管を固めて消失させる方法です。主に網目状静脈瘤・くも状静脈瘤のように細い静脈に対して行います。
- 下肢静脈瘤は自分で対処することもできますか?
- 自身で日常生活を改善することにより、下肢静脈瘤の症状を緩和したり進行を遅らせたりできるケースも少なくありません。
しかし、日常生活の改善は根本的な治療とはならないため、完治させたい・見た目を改善したいなどの場合は病院での治療が望ましいです。
- 下肢静脈瘤を予防する方法を教えてください。
- 下肢静脈瘤を予防するためには、下肢静脈瘤と関連する生活習慣を改善することが重要です。具体的な予防法として、以下の3つが挙げられます。
- 長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしを避ける
- 生活習慣を整える
- マッサージやストレッチをする
長時間の同じ姿勢で過ごすと、足の血流が滞り下肢静脈瘤を招く可能性があります。
立ち仕事やデスクワークをしている場合は、定期的に体を動かしできるだけ同じ姿勢を避けるようにしましょう。肥満も下肢静脈瘤の原因と考えられるため、肥満の方は食事の改善や運動に取り組み減量することが望ましいです。
また、今後肥満とならないためにも、規則正しい生活や栄養バランスのよい食事を心がけましょう。さらにマッサージやストレッチは足の血流が促進されるため、予防法としておすすめです。
デスクワーク中にかかとの上げ下げをする、入浴中にふくらはぎのマッサージをするなどを普段の生活に取り入れるとよいでしょう。
編集部まとめ
下肢静脈瘤は、ふくらはぎや太ももをはじめ下肢に該当する部位にできる静脈瘤です。
太ももにできる下肢静脈瘤は、くもの巣のように皮膚にひろがって見えるくも状静脈瘤・こぶ状に浮き上がって見える伏在静脈が該当するといわれています。
下肢静脈瘤の原因は主に静脈にある弁が壊れたりはたらきが弱まったりすることです。また、肥満・加齢・妊娠・長時間の同じ姿勢なども発症に関連していることがわかっています。
下肢静脈瘤の治療では、患者さんの症状や希望に応じて圧迫療法・手術・硬化療法を行います。
さらに日常生活の改善も欠かせません。同じ姿勢を避けたり運動やマッサージを取り入れたりすることは、下肢静脈瘤の予防にもつながります。
ただし、下肢静脈瘤を発症した場合は日常生活の改善のみでは根本的な治療とはならないため、病院を受診してきちんと治療を行うようにしましょう。
参考文献