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痔にはどんな種類がある?種類別の治療法について徹底解説!

痔 種類

痔とは、肛門にある静脈のうっ血や炎症によって引き起こされる病気で、日本人の約7割が一生のうちに経験するといわれています。痔の種類を正しく判断することは、適切な対処法を行うために重要です。
本記事では、痔の種類について以下の点を中心にご紹介します!

  • 痔核(いぼ痔)について
  • 裂肛(切れ痔)の種類
  • 痔瘻(あな痔)の種類

痔の種類について理解するためにもご参考いただけると幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

痔とは?

痔とは?

痔は、肛門周辺に発生する一般的な疾患で、多くの人が一生のうちに一度は経験する可能性があります。
痔の主な原因は、肛門内外の血管が圧迫されたり、損傷を受けたりすることにより、血流が悪化して血管が膨張し、炎症や出血を引き起こすことです。便秘や下痢、長時間の座位、妊娠、出産などがリスク要因として知られています。
痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(あな痔)の3種類が代表的です。それぞれの特徴については後述で詳しく解説します。

痔の原因

痔の原因

代表的な3種類の痔は、それぞれどのような原因で生じるのでしょうか。

裂肛(切れ痔)

裂肛(切れ痔)は、肛門の皮膚や粘膜に小さな裂け目が生じる状態を指します。この症状は、排便時の痛みや出血を伴うことが多く、日常生活に大きな影響を与えることがあります。裂肛の主な原因としては、以下のような要因が挙げられます。

  • 便秘:長期間の便秘は裂肛を引き起こす一般的な原因です。硬い便が肛門を通過する際に粘膜を損傷し、裂け目が生じることがあります。このような状況は、排便時の過度のいきみによってさらに悪化することがあります。
  • 下痢:一方で、慢性的な下痢も肛門の粘膜を刺激し、裂肛を引き起こす原因となり得ます。頻繁な排便は肛門周辺の皮膚を痛め、小さな裂け目ができやすくなります。
  • 出産:出産時の強いいきみは、肛門周囲の圧力を急激に高め、裂肛を引き起こす可能性があります。特に、初めて出産する女性に多く見られる症状です。
    肛門性交:肛門性交による物理的な刺激や損傷も、裂肛の原因となることがあります。

痔瘻(あな痔)

痔瘻(じろう)、一般にあな痔とも呼ばれる、肛門周囲に発生する複雑な痔の一種です。痔瘻は、肛門内部または周囲の皮膚に小さな穴が開き、その穴が内部の組織や肛門管と異常な通路(瘻管)を形成する状態を指します。
この瘻管は、膿や排泄物が体外に排出される経路となり、感染や炎症を繰り返す原因となります。痔瘻の主な原因は以下の通りです。

  • 肛門内部の感染:痔瘻の一般的な原因は、肛門内部の小さな腺(肛門腺)が便や細菌によって感染し、膿瘍(のうよう)を形成することです。この膿瘍が破裂すると、肛門内外に瘻管が形成されます。
  • 慢性的な肛門の炎症:クローン病のような炎症性腸疾患は、肛門周囲の慢性的な炎症を引き起こし、痔瘻の形成を促すことがあります。
  • 外傷や手術:肛門周囲の外傷や手術後の合併症として、痔瘻が発生することがあります。

痔核(いぼ痔)

痔核(いぼ痔)

痔核(いぼ痔)は、肛門内部の静脈叢が拡大し、腫れ上がる状態を指します。痔核は重症度に応じてⅠ度からⅣ度までの4段階に分類されます。それぞれの度合いについて、以下に詳しく説明します。

Ⅰ度

Ⅰ度痔核は軽度の状態で、肛門内部に静脈叢の膨張が見られますが、外には脱出しません。主な症状は出血であり、排便時に血が見られることが多いですが、痛みはほとんど伴いません。Ⅰ度痔核は外からは見えないため、出血を主な兆候として認識されます。

Ⅱ度

Ⅱ度痔核は、排便時に肛門外に一時的に脱出するが、排便後に自然に戻る状態です。この段階では、出血に加えて、脱出時の不快感や軽い痛みを感じることがあります。Ⅱ度痔核の治療には、生活習慣の改善や局所治療が選択されることが多く、早期の段階で適切な対処を行うことが重要です。

Ⅲ度

Ⅲ度痔核は、排便時に脱出すると自然には戻らず、手で押し戻さなければならない状態を指します。この段階では、出血、痛み、かゆみがより顕著になり、日常生活に影響を及ぼすことがあります。Ⅲ度痔核の治療には、より積極的な医療介入が必要となることが多く、場合によっては手術が推奨されます。

Ⅳ度

Ⅳ度痔核は重度の状態で、脱出した痔核が手で押し戻しても戻らない状態です。恒常的な脱出により、激しい痛み、出血、かゆみを伴い、肛門周囲の皮膚炎や感染を引き起こすこともあります。Ⅳ度痔核の治療には通常、手術が必要となり、症状の緩和と再発防止を目的とします。

裂肛(切れ痔)の種類

裂肛(切れ痔)の種類

裂肛(切れ痔)は、肛門の粘膜や皮膚に裂け目が生じた状態をいいます。以下に裂肛の種類別に解説します。

単純性裂肛

単純性裂肛は、肛門の入口近くに小さな裂け目ができることが特徴で、主に排便時の過度のいきみや硬い便による物理的な刺激が原因とされています。このタイプの裂肛は、痛みや出血といった症状を引き起こし、特に排便時に強い痛みを感じることが多いです。

慢性潰瘍性裂肛

慢性潰瘍性裂肛は、裂肛が長期間にわたって治癒せず、慢性化した状態を指します。このタイプの裂肛は、単純性裂肛が適切な治療を受けずに放置された結果、慢性的な炎症や潰瘍を伴うようになったものです。
慢性潰瘍性裂肛は、肛門周囲の皮膚に硬化や肥厚が見られ、裂け目の周囲には肉芽組織が形成されることが特徴です。また、肛門の入口近くにできる小さな突起物、いわゆる「外痔核」が伴うこともあります。
慢性潰瘍性裂肛の主な症状には、排便時の激しい痛みや出血があります。また、慢性化することで、痛みが常時存在するようになり、日常生活に大きな影響を及ぼすことがあります。

脱出性裂肛

脱出性裂肛は、肛門の粘膜や皮膚が外に脱出することによって生じる裂肛の一種です。この状態は、肛門内圧の上昇や肛門周囲の組織の弱化により、肛門内部の組織が外に押し出され、その過程で裂け目が生じることによって発生します。
特に、長時間の立位や座位、慢性的な便秘、重い物を持ち上げる動作などが、肛門内圧の上昇を引き起こし、脱出性裂肛のリスクを高めます。
脱出性裂肛の主な症状には、排便時の痛みや出血、肛門周囲の不快感や違和感があります。また、肛門部の皮膚が外に脱出することによる視覚的な変化も伴うことがあり、患者さんにとっては精神的なストレスの原因となることも少なくありません。

痔瘻(あな痔)の種類

痔瘻(あな痔)の種類

痔瘻(あな痔)は、肛門周囲に異常な通路が形成された状態をいいます。以下に、痔瘻の種類別に解説します。

低位筋間痔瘻

低位筋間痔瘻は、肛門の内部構造において、内肛門括約筋と外肛門括約筋の間、すなわち筋間領域に位置する痔瘻を指します。このタイプの痔瘻は、肛門内部から始まり、肛門の近くの皮膚表面に開口部を持つ特徴があります。
低位筋間痔瘻の形成は、肛門腺の感染が初期段階として考えられています。肛門腺からの感染が拡大し、膿が肛門括約筋の間を通って皮膚表面に達することで、痔瘻が形成されます。この過程で、炎症や膿の排出、時には痛みを伴うことがあります。

高位筋間痔瘻

痔瘻(あな痔)にはいくつかの種類がありますが、その中でも高位筋間痔瘻は特に注意が必要なタイプです。高位筋間痔瘻は、内括約筋と外括約筋の間を上方に伸びる痔瘻で、全体の約10%を占めます。このタイプの痔瘻は、二次口がないため排膿されにくい特徴があります。その結果、痔瘻が深く複雑になりがちで、治療が難しくなることがあります。

坐骨直腸窩痔瘻

坐骨直腸窩痔瘻は、痔瘻の中でも複雑で深いタイプに分類されます。この痔瘻は、外肛門括約筋を越えて肛門挙筋の下方に発生し、肛門の背側が原発口となります。便が内肛門括約筋と外肛門括約筋、そして坐骨直腸筋の間に広がるコートネイのスペースに入り込むことで、深く大きな原発巣が形成されやすくなります。
この原発巣から外肛門括約筋を貫通して左右に瘻管が形成されることが特徴です。瘻管が片側にのみ存在する場合と両側に存在する場合があり、全体の約20%を占めるとされています。ほとんどが男性に見られる症状です。

骨盤直腸窩痔瘻

骨盤直腸窩痔瘻は、痔瘻の中でも深く複雑なタイプで、全体の約2〜3%を占めます。このタイプの痔瘻は、肛門挙筋を越えて直腸の骨盤側に伸びる特徴があります。骨盤直腸窩痔瘻は、直腸狭窄を引き起こしやすく、治療が非常に困難なケースもあります。このため、手術を行っても人工肛門になる可能性があるなど、患者さんにとって大きな負担となることがあります。

種類別の治療法

種類別の治療法

それぞれの痔の種類ごとの治療法について、以下に解説します。痔を疑う症状が見られた場合は医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

痔核(いぼ痔)

痔核(いぼ痔)の治療法には、症状の軽度に応じた様々な方法があります。軽度の場合は、生活習慣の改善や局所に塗る薬での治療が役立ちます。
これには、食物繊維を多く含む食事の摂取や十分な水分摂取、定期的な運動による便秘の解消が含まれます。また、痔核を収縮させる軟膏や、痛みや炎症を和らげる薬が処方されることもあります。
症状が進んでいる場合や、薬による治療が効果を示さない場合には、手術治療が選択されることがあります。手術には、痔核を切除する方法や、痔核の根本を結紮して血流を止め、痔核が自然に落ちるようにする方法などがあります。
また、最近では、レーザーや赤外線を用いた治療法もあり、これらは出血や痛みを抑えつつ治療を行えるため、選択肢の一つとなっています。

裂肛(切れ痔)

裂肛(切れ痔)の治療法は、症状の軽度に応じて異なり、軽度の場合は生活習慣の改善や局所治療で改善を目指します。
具体的には、高繊維食の摂取や十分な水分摂取による便秘の解消、温かいお湯でのシッツバス(座浴)による局所のリラックスと血行促進、局所に塗る鎮痛・抗炎症薬の使用などがあります。
症状が重い場合や、上記の治療で改善が見られない場合には、外科的治療が選択されることもあります。
外科的治療には、裂肛の切除や括約筋の部分的切断(内肛門括約筋部分切除術)などがあり、これにより括約筋の緊張を和らげ、痛みを軽減し、裂肛の治癒を促します。

痔瘻(あな痔)

痔瘻(あな痔)の治療法は、症状や痔瘻のタイプによって異なりますが、主に外科手術による治療が一般的です。痔瘻は肛門内部の腺から感染が始まり、肛門周囲に膿瘍を形成し、最終的に肛門の外側に開口部(外口)を作る病態です。この外口から膿や分泌物が排出されることがあります。
治療の第一歩として、痔瘻の全体像を正確に把握するために、MRIや超音波などの画像診断が行われることがあります。これにより、痔瘻の走行や分岐の有無、関連する組織の状態を詳しく調べ、治療計画を立てます。
痔瘻の手術治療には、瘻管を切開して感染源を除去する方法や、瘻管を完全に切除する方法などがあります。また、近年では、瘻管内に特殊な薬剤を注入して瘻管を塞ぐ方法や、レーザーを使用した治療法も導入されています。これらの治療法は、痔瘻の形態や患者さんの状態に応じて選択されます。
痔瘻の治療後は、再発予防のためにも、適切な肛門衛生の維持や、便秘を避けるための食生活の改善、十分な水分摂取などが推奨されます。また、定期的なフォローアップが必要となる場合もあります。

まとめ

まとめ

ここまで痔の種類についてお伝えしてきました。
痔の種類の要点をまとめると以下の通りです。

  • 痔核(いぼ痔)は肛門内部の静脈叢が拡大し、腫れ上がる状態を指し、重症度に応じてⅠ度からⅣ度までの4段階に分類される
  • 裂肛(切れ痔)は肛門の粘膜や皮膚に裂け目が生じた状態を指し、単純性裂肛、慢性潰瘍性裂肛、脱出性裂肛などがある
  • 痔瘻(あな痔)は肛門周囲に異常な通路が形成された状態を指し、低位筋間痔瘻、高位筋間痔瘻、坐骨直腸窩痔瘻、骨盤直腸窩痔瘻などがある

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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