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痔瘻(痔ろう)の手術法は?種類や手術の流れ・注意点もあわせて解説

痔瘻 手術

痔瘻(痔ろう)とは、肛門周囲にできる穴のことで、痔核や肛門周囲膿瘍などの合併症として発生することが多いです。痔瘻は、放置すると感染や炎症を繰り返し、痛みや出血などの症状を引き起こします。
また、痔瘻は自然に治ることはほとんどなく、改善するには手術が必要です。
痔瘻には種類があり、それぞれの種類や状態に応じた手術法が選択されます。手術の種類や方法、注意点などについて理解しておくことは重要です。
本記事では、痔瘻の手術について以下の点を中心にご紹介します!

  • 痔瘻(痔ろう)の原因
  • 痔瘻(痔ろう)の種類
  • 痔瘻(痔ろう)の手術法

痔瘻の手術について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

痔瘻(痔ろう)とは?

痔瘻(痔ろう)とは?

痔瘻(痔ろう)は、肛門周囲に発生する炎症が原因で、皮膚と直腸をつなぐ管状のトンネル、すなわち瘻管が形成される状態です。この瘻管は、肛門陰窩という肛門の皮膚部分と粘膜部分の境界にある小さなくぼみに起因し、通常は便が入り込むことはありませんが、下痢などで大腸菌が侵入しやすくなります。
免疫力の低下や細菌感染により、肛門周囲膿瘍が形成され、これが自然治癒する過程で瘻管が残ることが痔瘻の成立につながります。痔瘻は自然には治らず、放置すると膿がたまり破裂するなどの症状を繰り返し、最終的には手術が必要になることが多いです。
治療には、瘻管を開放し根治させる切開解放法や、ろう管に輪ゴムを通して括約筋をゆっくり切っていくシートン法などがあります。痔瘻は、適切な診断と治療を受けることで改善が期待できますが、再発の可能性もあるため、医師の診察を受けることが重要です。

痔瘻(痔ろう)の原因

痔瘻(痔ろう)の原因

痔瘻は、特に下痢が繰り返されることで発生しやすくなりますが、切れ痔からの細菌感染によっても起こることがあります。頻繁に下痢をする人や、切れ痔の傷が深くなっている人は痔瘻になりやすいとされています。また、過度の飲酒やストレスによる免疫力の低下も痔瘻のリスクを高める要因となります。

痔瘻(痔ろう)の種類

痔瘻(痔ろう)の種類

痔瘻(痔ろう)にはI〜Ⅳ型のタイプがあります。それぞれの特徴について以下に解説します。

Ⅰ型痔瘻

Ⅰ型痔瘻は、瘻管が肛門上皮や皮下に存在し、肛門括約筋を貫通していないタイプの痔瘻です。このタイプは「皮下痔瘻」または「粘膜下痔瘻」とも呼ばれ、裂肛の裂け目に便が詰まることによって発生することが多いですが、肛門腺が原発巣でない場合もあります。発生頻度は高くはありません。Ⅰ型痔瘻は、痔瘻の中でも単純な構造をしており、治療が容易なケースが多いですが、正確な診断と適切な治療が必要です。

Ⅱ型痔瘻

Ⅱ型痔瘻は、内肛門括約筋と外肛門括約筋の間を通る瘻管が特徴の痔瘻です。このタイプは、痔瘻の中で最も一般的であり、全体の70〜80%を占めています。Ⅱ型痔瘻は「筋間痔瘻」とも呼ばれ、瘻管の位置によって「低位筋間痔瘻」と「高位筋間痔瘻」に分類されます。低位筋間痔瘻は歯状線より下に、高位筋間痔瘻は歯状線より上に瘻管が位置します。さらに、瘻管が1本の場合を「単純型」とし、2本以上ある場合を「複雑型」と分類します。

Ⅲ型痔瘻

Ⅲ型痔瘻は、肛門括約筋の奥にある肛門挙筋より下方に発生し、坐骨直腸窩痔瘻とも呼ばれるタイプです。このタイプの痔瘻は、痔瘻全体の約20%を占め、主に男性に見られます。肛門の背側が原発口となり、そこから便が入り込むと、内肛門括約筋と外肛門括約筋、そして坐骨直腸筋の間に広がるコートネイのスペースが広いため、深くて大きな原発巣が形成されやすくなります。

この原発巣から外肛門括約筋を貫通して、左右に瘻管が形成されることが特徴です。瘻管が片側にのみ存在する場合と両側に存在する場合があります。Ⅲ型痔瘻の治療には、瘻管の構造や炎症の程度に応じた手術が望ましいとされています。

Ⅳ型痔瘻

Ⅳ型痔瘻は、骨盤直腸窩痔瘻とも呼ばれ、痔瘻の中でも特に深く、複雑な構造を持つタイプです。このタイプの痔瘻は、肛門挙筋を貫通し、直腸の方向に進行します。発生頻度はまれで、痔瘻全体の中で少数を占めますが、治療が困難であり、専門的な知識と技術を要することが特徴です。

Ⅳ型痔瘻の治療には、痔瘻の通り道を正確に把握するための詳細な診断が必要となります。治療法としては、瘻管を完全に除去することが理想ですが、痔瘻の位置や拡がりによっては、括約筋の機能を保持しつつ治療を行う必要があるため、手術方法の選択には慎重な判断が求められます。場合によっては、複数回の手術が必要になることもあります。

痔瘻(痔ろう)の手術法

痔瘻(痔ろう)の手術法

痔瘻(痔ろう)の手術法として、切開解放法、括約筋温存手術、シートン法性があります。それぞれの手術法の特徴について、以下に解説します。

切開解放法

切開解放法は、痔瘻(痔ろう)の治療法の一つで、痔瘻の入り口から出口までの瘻管を切り開いてすべて切除し、その後自然に肉が盛り上がるのを待つ手術方法です。痔瘻の形が複雑ではなく、浅い部分にできている痔瘻に有効です。

この手術では、瘻管が走る位置や深さに応じて、括約筋が傷つくことがありますが、痔瘻が改善すると同時に肛門の締まりが悪くなる、または肛門がいびつになる可能性があります。特に肛門後方部で行われる場合、括約筋を切除しても肛門の機能に大きな影響はないとされています。この手術法は再発がほとんど見られないため、痔瘻の治療において有力な方法の一つです。

括約筋温存手術

括約筋温存手術は、痔瘻(痔ろう)治療のための手術方法の一つで、肛門の機能を保持しながら痔瘻を治療することを目的としています。この手術法では、肛門括約筋をできるだけ傷つけないようにしながら、痔瘻を形成している瘻管を除去します。特に、瘻管が深い位置にある複雑な痔瘻に対して役立つ治療法とされています。

括約筋温存手術の特徴は、瘻管だけを慎重にくり抜き、膿の入り口や出口部分だけを切除することにあります。手術後は、特殊な糸で縫合し、瘻管が再形成されるのを防ぎます。この方法により、肛門の機能障害を最小限に抑えつつ、痔瘻の治療を目指します。

しかし、括約筋温存手術には再発のリスクが伴うことがあり、すべての痔瘻患者に適しているわけではありません。患者の状態や痔瘻のタイプに応じて手術方法を選択する必要があります。切開解放法は単純な痔瘻に対して役立ち、括約筋温存手術は複雑または深い痔瘻に対して適しています。どちらの手術法も、痔瘻の根治を目指し、再発を防ぐために重要な選択肢となります。

シートン法性

シートン法は、痔瘻(痔ろう)治療のための手術方法の一つで、特に複雑または深い痔瘻に対して役立ちます。この手術法では、痔瘻の瘻管に輪ゴムや特殊な糸(シートン)を通して、徐々に肛門括約筋を切断していきます。この方法により、瘻管を体外に開放させつつ、肛門括約筋の損傷を最小限に抑え、肛門の機能を保持できます。

シートン法の大きな利点は、根治性が高く、再発率を低く抑えられる点にあります。しかし、治療には時間がかかります。2−3週間に1回程度の処置が必要で、完治するまでに数ヶ月から1年程度を要することがあります。また、シートンを挿入している間は、痛みや不快感を感じることがあり、定期的な医師の診察が必要になります。

痔瘻(痔ろう)手術の流れ

痔瘻(痔ろう)手術の流れ

痔瘻(痔ろう)手術の流れは、患者さんが痔瘻の症状を自覚し、肛門科の医師に相談することから始まります。診察では、医師が患者さんの症状や肛門の状態を詳しく聞き取り、必要に応じて肛門周囲の触診や肛門鏡検査を行います。これにより、痔瘻の位置や深さ、括約筋への影響などを評価し、治療法を決定します。

手術が必要と判断された場合、患者さんは手術の日程を決め、入院の準備をします。手術前には、血液検査や心電図検査などの全身状態を確認するための検査が行われることが一般的です。手術前日には、医師や看護師から手術の流れ、手術後の注意点、入院生活についての事前説明が行われます。この時、患者さんは手術に関する疑問や不安を解消する良い機会となります。

手術当日の朝は、水分のみ摂取し、朝食は控えます。これは、手術中のリスクを最小限に抑えるための一般的な準備です。手術は腰椎麻酔の下で行われ、手術中は意識がある状態で安静にして過ごします。手術が無事終了すれば、昼食もしくは夕食から通常の食事が再開されます。

手術翌日からは、身の回りのことは基本的に自分で行います。特に、排便は積極的に行うように促され、排便時の痛みや出血の有無を翌日に確認します。便が出ない場合は、下剤を使用して排便を促します。また、手術後は、痔瘻が完全に治癒するまでの間、定期的な通院が必要になります。手術部位のケアや、再発防止のためのアドバイスが医師から提供されます。改善までの期間は、痔瘻の複雑さや患者さんの体質によって異なりますが、適切なケアとフォローアップにより、多くの患者さんが痔瘻からの回復を遂げています。

通常、手術から3泊4日で退院となり、その後は自宅での自己管理が始まります。退院後は、2週間前後の間隔で2回、外来に再来院し、手術部位の経過観察が行われます。痔核結紮切除術(LE)の場合、改善まで約4週間を要し、通常は2回目の再来院で終了となります。

痔瘻手術の流れは、患者さん一人ひとりの状態に合わせて細かく調整されるため、具体的な手順や必要なケアは医師の指導に従ってください。適切な準備とフォローアップにより、多くの患者さんが痔瘻からの回復を遂げています。

手術後の注意点

手術後の注意点

痔瘻(痔ろう)手術後の注意点は、患者さんの快適な回復と再発防止において重要です。手術後は、以下の点に注意してください。

  • 清潔保持:手術部位は常に清潔に保つことが重要です。医師の指示に従って、適切な洗浄方法を実践し、感染リスクを最小限に抑えましょう。
  • 痛みと出血の管理:手術後、最も一般的な合併症は痛みと出血です。切開解放法やシートン法では創が開放されているため、特に痛みや出血が生じやすい状態にあります。痛みについては、医師の指示に従って痛み止めを適切に使用し、痛みのコントロールを行います。出血に関しては、手術後2週間は特に注意が必要で、この期間はバイクや自転車の使用を避け、遠隔地での出血が起こった場合の対応が難しいため、出張や旅行も控えることが推奨されます。
  • 食生活の調整:適切な食生活は、便秘や下痢を防ぎ、手術部位の負担を軽減します。食物繊維を豊富に含む食事を心がけ、十分な水分を摂取しましょう。
  • 術後の生活習慣:手術後約2週間は、安静に過ごすことが求められます。スポーツなどの激しい活動は避け、身体への負担を最小限に抑えることが大切です。また、術後の体調管理には、医療機関で開発された「術後日記アプリ」などを利用して、日々の症状の変化を記録し、必要に応じて医師に相談しましょう。
  • 定期的なフォローアップ:手術後の経過観察は、合併症の早期発見や再発防止に役立ちます。定期的に医師の診察を受け、症状の変化や不安があれば相談しましょう。
  • 長期的な合併症への対策:長期的な合併症としては、肛門の変形や便漏れ(便失禁)が挙げられます。これらのリスクを最小限に抑えるためには、術前の正確な診断と適切な手術方法の選択が重要です。複雑な痔瘻の場合、便失禁の発症率は0~54%と報告されており、特に注意が必要です。適切な手術方法の選択により、肛門括約筋の過度な切除や侵襲を避けられます。

痔瘻手術後の回復は個人差がありますが、適切なケアと注意を払うことで、多くの患者さんが正常な生活に戻れます。手術後は医師の指示に従い、健康的な生活習慣を心がけることが、快適な回復への鍵です。

まとめ

まとめ

ここまで痔瘻の手術についてお伝えしてきました。
痔瘻の手術の要点をまとめると以下の通りです。

  • 頻繁に下痢をする人や、切れ痔の傷が深くなっている人は痔瘻(痔ろう)になりやすい
  • Ⅰ型痔瘻は瘻管が肛門括約筋を貫通していないタイプ、Ⅱ型痔瘻は瘻管が内肛門括約筋と外肛門括約筋の間を通るタイプ、Ⅲ型痔瘻は瘻管が肛門括約筋の奥にある肛門挙筋より下方に発生しているタイプ、Ⅳ型痔瘻は痔瘻の中でも特に深く、複雑な構造を持つタイプ
  • 痔瘻(痔ろう)の手術法において、単純な痔瘻に対しては切開解放法、複雑または深い痔瘻に対しては括約筋温存手術やシートン法が選択されることが多い

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
松繁 治医師(新東京病院)

松繁 治医師(新東京病院)

岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科

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