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食道静脈瘤の治療方法は?原因・症状についても解説

食道静脈瘤 治療

食道静脈瘤は血管が膨らんだ瘤で、破裂すれば大量吐血・下血が起こります。破裂しない限りほぼ自覚症状がないので、検査を受けない限り自分に静脈瘤があることがわかりません。

しかし、放置して破裂すると致命的な状態になるので、軽くみてはいけません。食道静脈瘤の多くは重度の肝障害(もしくは肝機能障害)がきっかけでできることがわかっており、肝臓が悪い方は注意が必要です。

この記事では食道静脈瘤の原因・症状・治療法などを解説します。自分や家族に思い当たる節がある方は、この記事を参考にしてください。

食道静脈瘤の原因や症状

問診するドクター

食道静脈瘤とはどのような病気ですか?
食道静脈瘤は食道内部の粘膜下にある静脈が膨れ上がり、瘤ができる病気です。瘤は一つのこともありますが、多くは複数の瘤が連なった連珠状になります。
肝疾患などで消化器から肝臓へ向かう門脈の血流が滞り、その影響が食道・胃の周囲にある静脈におよびます。静脈内の血圧が上がり、血管壁が盛り上がって怒張した結果が食道静脈瘤です。血管が膨らんだ瘤なので、中身は血液だけになります。これがあるだけでは特に不都合は起こりませんが、食物の通過や胃液の刺激などがきっかけで破裂・出血すると危険です。
圧力が高いので出血量が多くなり、出血性ショックで死亡することも少なくありません。肝硬変の患者さんが亡くなる3大原因の一つに数えられる程、重大な病気です。
原因について教えてください
食道静脈瘤の原因にはいろいろありますが、大部分は肝硬変が原因になります。肝硬変から食道静脈瘤に至る経路は以下のとおりです。

  1. 肝炎ウイルスやアルコールによって肝臓に慢性的な炎症が起こる
  2. 次第に肝細胞が死滅して線維組織に置き換わり、機能が落ちて硬くなる
  3. 消化器から肝臓に栄養を運ぶ門脈の血流が滞留・圧力が上昇する
  4. 門脈圧が一定以上になると胃や食道付近に側副血行路ができる
  5. 側副血行路が瘤状に盛り上がって食道静脈瘤ができる

同じようなメカニズムが食道につながる胃にも働き、胃粘膜の下にある静脈にできた瘤が胃静脈瘤です。メカニズムは同じですが、胃静脈瘤が破裂すると出血量が多く、止血が難しくなります。危険性が大きいのは胃静脈瘤の方です。

どのような病気の人に起こりやすいのですか?
食道静脈瘤は門脈の血圧上昇(門脈圧亢進)に起因しますが、門脈圧亢進症は大部分が肝硬変によるものです。また、肝硬変以外にも下記のような門脈亢進症の原因が存在します。

  • 特発性門脈圧亢進症
  • バッド・キアリ症候群
  • 肝外門脈閉塞症など

肝硬変が8割に対し、これらの原因が合わせて2割程度です。原因不明の特発性門脈圧亢進症は、肝臓や門脈に異常がないのに門脈の末端が塞がって門脈圧が上がります。指定難病でも腹水と出血に注意すれば予後は良好です。
バッド・キアリ症候群は、肝臓から出る肝静脈・下部大静脈が塞がったり狭くなったりして門脈圧が上がります。これも指定難病で、70%が原因不明のため対症療法が主体です。肝外門脈閉塞症は、肝臓の外部にある門脈が塞がることで門脈圧が上がります。

どのような症状が出るのですか?
食道静脈瘤の症状は、瘤ができているだけの状態ではほぼありません。ただし、原因である原疾患の症状がさまざまな形で表れます。原因の多くを占める肝硬変であれば、黄疸・倦怠感・手のひらの赤み、胸の血管が浮くなどの症状です。特徴的な症状は、静脈瘤の破裂によって突然起こる大量の吐血・下血と貧血になります。
吐血では胃液が混じった真っ赤な血液を嘔吐し、下血では真っ黒なタール状の便が出ることが多いですが、一部暗赤色のものをともなうこともあります。また貧血になると、めまい・冷や汗・動悸などの症状がみられることがあります。
食べ物の通過による刺激、血圧上昇などが引き金になり破裂するので予測はできません。出血の量は静脈瘤の大きさや破裂の状況で異なりますが、大量出血では出血性ショックで死亡する場合も少なくありません。静脈瘤破裂による死亡率は25〜65%といわれ、危険性が大変高い病気です。

食道静脈瘤の検査や治療方法

血液検査の健康診断の結果

食道静脈瘤が疑われる時はどのような検査を行いますか?
食道静脈瘤が疑われる目安となるのは、肝硬変など原因となる原疾患の存在です。重い肝臓病が疑われたり診断されたりした場合には、食道静脈瘤の検査も行われます。
検査はX線による造影検査、または胃カメラを使う上部消化管内視鏡検査です。造影検査では静脈瘤の形まではわかりますが、胃カメラなら形に色調、破裂の兆候まで観察できます。機能的に胃カメラの方がはるかに有効なため、多くの医療機関で検査に使われているのが胃カメラです。
静脈瘤の表面が赤くなるなどの破裂の兆候が認められたら、ただちに予防的な治療が開始されます。初回の検査で切迫性が認められなくても、原疾患がある以上リスクは残るので定期的な検査が必要です。
治療方法について教えてください
食道静脈瘤の治療はほぼ内視鏡的治療になります。安全性と効果が高く患者さんへの負担も少ないという点がその理由です。食道静脈瘤の治療は、現在破裂しているもの・出血の既往歴があるもの・破裂が切迫しているものが対象になります。危険性が高い出血中の静脈瘤では内視鏡を使って出血部位を特定し、硬化剤を注入する(硬化法・EIS)かゴムで瘤を縛って壊死させる(結紮術・EVL)方法です。
出血部位が特定できない場合は、バルーンなどで止血した後、EISかEVLで治療します。現在出血していない場合も含め、どの状態でも肝障害が軽い場合は硬化法、重い場合は結紮法の選択が一般的です。また、患者さんの状態によって内視鏡が使いにくい場合は、腹腔鏡によるHassab手術を選ぶ場合があります。薬物治療は門脈圧を下げるなどの補助療法で、外科手術は緊急時などの限定的な治療法です。
手術が行われるのはどのようなケースですか?
食道静脈瘤の治療で外科手術が行われるのは、静脈瘤が破裂して内視鏡的にどのような方法を用いても止血できない場合に限られます。その場合でも保険適用外のTIPS(肝内門脈肝静脈短絡術)に次ぐ第2選択肢です。
方法としては、過去に標準治療だった食道離断術になります。食道離断術は胃の幽門部と食道を離断して血流路を塞いだうえ、再度接合する方法です。大がかりな開腹または開胸手術のため患者さんへの負担が大きく、手術死亡率は10%を超えていました。現在ではほかの手段で止血できないような緊急時以外、外科手術はほとんど選択されません。

食道静脈瘤の再発や注意点

説明する医師

食道静脈瘤を放置すると危険なのですか?
できてしまった食道静脈瘤は、時間がたてば回復する性質の病気ではありません。原疾患(原因になる病気)である肝硬変などが存在する限り、悪化の道をたどります。そのまま放置していると、静脈壁が内圧に耐え切れず破裂・出血する可能性が時間とともに増大するばかりです。
そうなると出血性ショックで死亡する、最悪の事態が起こる可能性も決して低くはありません。食道静脈瘤の存在がわかっているのであれば、早急に予防的治療を始めてください。身体への影響が軽くて済む内視鏡治療が受けられます。硬化剤を静脈瘤や周辺に注入して固めてしまうEISや、静脈瘤の根元をゴムで縛って壊死させるEVLによって短時間での治療が可能です。
食道静脈瘤を治療しても再発する可能性はありますか?
食道静脈瘤は原疾患がある病気です。その原因を取り除かない限り再発する可能性が残ります。ただし、治療の方法とか原疾患の状態によって再発率に差が出ることが明らかです。標準的な内視鏡による治療法の一つEVL(結紮法)は、EIS(硬化法)より再発率が高いとされます。
また、治療前に肝硬変が重度の方の再発率は、軽度の方の4倍近くになりました。さらに、アルコールの摂取量でも再発率に差があります。静脈瘤の手術後も毎日飲酒していた方の再発率は、少ない方の3倍でした。再発の時期は73%が1年以内で87%が2年以内と、より早い時期に再度発症しています。原疾患の多くが、完治しにくい難病や重度の肝臓病であることがその理由です。
食道静脈瘤が発見された場合の日常生活での注意点を教えてください
食道静脈瘤は、多くの場合肝臓病の治療・検査で発見されます。すぐに治療を受けない場合は日常生活に注意しながら過ごすことが大切です。
定期的に検査を受けることはもちろんですが、破裂を防ぐこと・原疾患の悪化を防ぐことを常に念頭において生活してください。食事では硬いもの・熱いもの・塩分の多いもの・刺激物を避けよく噛んで食べ、飲酒は禁止です。
降圧剤を忘れずに飲み、門脈圧を下げる亜硝酸剤のテープを貼ってください。便秘を避け便をやわらかく保って排便時にいきまないことと、重いものを運ぶことや激しい動作もできる限り避けるべきです。

編集部まとめ

内視鏡

血管が膨張してできた食道静脈瘤が要注意なのは、破裂すれば大出血を起こして命を脅かすためです。治療法が進化した現代でも、危険な病気には変わりありません。

自覚症状がないので見つけにくい病気ですが、多くは重い肝臓病が原因です。そちらの検査で発見が可能なので、肝臓が悪い方は定期的な検査で早期発見に努めてください。

症状は吐血・下血が突然起こり、緊急で治療しないと致命的です。対応は内視鏡が主体で、以前の開腹手術よりも患者さんの身体への負担が少なく安全性の高い治療法が確立しています。

無事治療が終わったとしても、原疾患がある以上高い率で再発の可能性があります。原疾患の治療に取り組むとともに、必ず定期検査を受けてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松繁 治医師(新東京病院)

松繁 治医師(新東京病院)

岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科

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