胃カメラはX線などで見つけることができない病変を、直接カメラで観察できる画期的な検査です。現在の医療では一般的になりましたが、昔は見つからなかった病気を早期に見つけることができます。
受診して検査を受けたい方や胃の様子が気になる方は検査をおすすめしますが、気になるのが費用です。
検査の中でも高額な費用がかかりますので、なるべく保険診療でしっかりと検査をしてもらい、病気を早期発見して健康な生活を送れるようにしましょう。
胃カメラの検査で分かる疾患
胃カメラ検査で発見される疾患は以下の種類になります。
- 食道がん
- 胃がん
- 十二指腸がん
- 胃潰瘍
- 慢性胃炎
- 急性胃炎
- 胃ポリープ
- 胃下垂
- 十二指腸潰瘍
- 十二指腸ポリープ
- ピロリ菌
- 逆流性食道炎
- GIST(消化管間葉系腫瘍)
胃カメラでは直接胃の内側を見ることができ、さらに前後にある食道や十二指腸も一緒に観察することができます。これまではX線撮影で写ったものを推測して診断をする場合や触診や問診などから推察して診断を行っていました。
胃カメラで直接観察することで高い精度の診断を行うことができます。そのため、がんなどは早期に発見して適切な治療をすることで治る病気となりました。
症状の自覚はなくても、定期健診や人間ドックなどを受けて、胃カメラ検査で早期発見・早期治療に取り組みましょう。
胃カメラの費用は?
胃カメラ検査を受ける際に注意したいのが費用です。自費診療の場合と保険診療の場合では保険を使えるかどうかで費用が大幅に変わってきます。
自費診療の場合と保険診療の場合とで、どの程度の費用差があるのかを把握しておきましょう。
自費診療の場合
胃カメラの費用は、自費診療と保険診療に分かれます。自費診療の場合には健康保険を使わず、費用の10割が自己負担です。費用の相場として、11,400円(10割負担)(税込)が胃カメラ自体の費用(保険点数相当)となります。
その他の費用が加わり15,000円から25,000円(税込)前後が費用相場としては妥当です。
日本では医師ががんなどの悪性疾患やヘリコバクター・ピロリ菌感染症を疑う場合など、合理的な根拠がある検査は健康保険のカバー範囲となります。
人間ドックや健康診断の一環として行われる検査など、予防目的の検査や、医師が必要と判断していないが患者さんの希望によって検査を行う場合は自費診療です。
自費診療は医療機関で自由に金額設定が可能なため、同じ処置でも金額が異なります。事前に必ず費用がどのぐらいかかるのか、処置の内容と一緒に確認しておきましょう。
保険診療の場合
病気が疑わしいなどで医師が必要と判断し、胃カメラの検査を行った場合には保険適用となります。胃カメラで発見される疾患は非常に多く、確定診断が必要になる疾患もあります。
費用の相場としては、保険点数11,400円の3割負担で3,420円とその他処置や診療費が加わって、5,000円から15,000円前後が相場費用です。
もしも検査に加えて病理組織検査を行った場合は、病理組織検査の部分だけ自費になり、胃カメラの検査自体は保険適用となります。
胃カメラの費用が高額になるケースとは
胃カメラ検査をした場合に高額な費用がかかる場合があります。検査以外に治療を行う場合や麻酔などの薬剤を予定より多く使用した場合です。
検査以外に治療を伴う場合
胃カメラ検査は口や鼻からカメラ挿入するため、少なからず苦痛を伴います。そのためできることであれば一度で処置を完結できると患者さんの苦痛も少ないため、一度で治療を行うことも少なくありません。
治療を一緒に行うと治療代として胃カメラ検査に上乗せで支払いを行う必要が出てきます。
費用が心配な方は前もって医師にどのような治療をする可能性があるか聞いておき、概算の料金を聞いておきましょう。
麻酔などの薬を多く使用した場合
胃カメラ検査をする際、嘔吐反射などが激しくて検査が困難になる場合があります。また患者さんからの要望で麻酔薬を多めに使用する場合もあるでしょう。
麻酔や鎮静(眠らせる)する薬剤を多く使用するとその分の費用が上乗せとなり、高額になることがあります。
嫌な経験がある場合や医師から提案があったときには、薬剤を使用することでどの程度、料金が上がるのか確認しておきましょう。
胃カメラを受ける際の注意事項
胃カメラ検査を受ける場合の知っておきたい注意事項があります。問診のときから検査前日・検査当日・検査後とでは注意点が違うため、把握しておきましょう。
問診時
胃カメラ検査を受けるときには必ず医師からの説明や問診を受けます。まず医師の説明で同意ができなければ検査をすることはできません。
医師からの説明で同意ができれば同意書を記入しますが、この時点で分からないことは医師に質問をして聞いておきましょう。問診時には下記のようなことが問われます。
- 年齢
- 現在、胃の病気で治療中ではないか
- 現在内服中の薬はあるか
- 過去に大きな手術(胃全摘手術など)を受けていないか
- 薬剤のアレルギーはないか
- ピロリ菌の除菌治療中ではないか
- 妊娠の可否
ほかにも記載しなければいけない項目はありますが、上記は特に大切な項目です。
特に内服中の薬で血液をサラサラにする薬(抗血小板薬)を内服している場合には、出血すると止血に時間がかかることがあったり止血できないと失血してしまったりと大変なことになります。
もしも抗血小板薬の内服をしている場合には4~7日前から休薬をする必要があります。おくすり手帳などを活用して、医師へ内服薬を確認してもらい、安全に検査が実施できるように相談しておくと安心です。
検査前日
医師からの説明に納得して同意書を記入し、問診でも問題なければ検査の準備に入ります。一般的に胃カメラ検査の準備は前日からです。
胃カメラ検査の前日21時以降は絶食となり、食べ物を食べることはできません。注意点としては水分も摂取してはいけないと思って、水分を摂取しないのは間違いです。
水分は摂取しても大丈夫ですので、水分はしっかりと摂取しましょう。しかし紅茶やコーヒーなどは残渣や色が残ることもあるため、飲み物は水にしておきます。またいつも飲んでいる薬は内服しても良いか、医師に確認しておきましょう。
検査当日
検査当日は、前日夜から検査終了まで食事は食べられないため空腹の状態で病院へ向かいます。受診する2時間前までであれば水分摂取は可能ですが、コップ1杯程度にしておきましょう。
中には胃に入らないからといって飴やガムであれば大丈夫と思われる方もいますが、飴やガムを食べると、胃酸が多く分泌されてしまいます。医師によっては飴やガムも控えるよう、説明がある可能性があります。
胃カメラ検査は前処置からカメラを抜くまで1~2時間程度で終了です。カメラを入れる手技自体は10~20分で短く、病室に入ってのどに麻酔をかけ、麻酔の効果が出てきたらカメラを挿入する流れになります。
のどに塗布する薬は少量の麻酔なので、副作用が出現することは少ないです。緊張が強い場合は静脈麻酔を使用してボーっとした状態で検査を実施します。
静脈麻酔は副作用があり、血圧が低下したり脈が遅くなったりすることもあります。病院では対処できる環境にあるため、気分が悪くなったらすぐに医師や看護師に伝えましょう。
検査後
検査が終わった後は胃痛などがないかを確認しつつ、少し休憩をして医師の説明を聞く流れになります。胃カメラで胃の内側や食道などを見た結果、病変がなかったかポリープなどがあれば病理組織検査を行ったかなど写真を見ながら説明を受け、現状を知ることが大切です。
病理組織検査などは当日結果が出ないため、後日、再受診して結果を聞くことになります。のどに麻酔をかけているため、効果が切れたら飲食を再開しましょう。
のどに違和感が残っているあいだは飲み込む力が低下しているため効果が切れるまでは待たなければいけません。静脈麻酔を行った場合には、血圧低下や脈拍数減少、呼吸状態の変化がないかを確認して動き始めます。
また病理組織検査のため、生検を行った場合には出血することがあるため注意が必要です。胃痛や気分不良などがないか注意しておくとともに、アルコールや油分の摂取は控えましょう。
ほかにも鎮静剤使用後は運転を始めとする機械操作や、危険を伴う当日の活動は禁止されます。そのため、検査を受ける方は事前に同伴者を確保しておくこと、または公共交通機関を利用することなどの配慮が求められます。
胃カメラ受診でおすすめのクリニックの選び方
胃カメラ検査を受けるときに医療機関を選びます。しかしどこの医療機関を選ぶべきか、下記の項目について考えてみると良いでしょう。
- 鎮静剤の使用ができるか
- 経鼻内視鏡が選べるか
- 内視鏡治療を行っているか
- 受診に伴う苦痛がないか
- 炭酸ガス送気装置を導入しているか
以上の点をしっかり把握して受診する医療機関を決めましょう。
鎮静剤を使用できるか
鎮静剤(静脈麻酔)が使用できる医療機関では、希望があれば過度の緊張を取り除きます。そのため検査に対する恐怖感が強い方でも、安心して胃カメラ検査を受けることが可能です。
また咽頭反射が起きにくいため、検査でどうしても感じてしまう嘔吐反射の苦痛が軽減できます。しかし静脈麻酔を使用すると少し時間がかかってしまうため、時間にゆとりを持って検査の予約を取って受診するようにしましょう。
経鼻内視鏡が実施可能か
胃カメラ検査は従来より行われている口からカメラを挿入する方法と鼻からカメラを挿入する経鼻内視鏡があります。経鼻内視鏡はカメラの直径も細いため、疼痛も少なく、咽頭反射が起こりにくいといわれています。
胃カメラ検査は実施できても、器材が違ったり準備が違ったりと経鼻内視鏡はどこでもできるわけではありません。また鼻の通り道が狭い場合には経鼻内視鏡ではなく、従来の口から入れる胃カメラ検査となる場合もあるでしょう。
経鼻内視鏡での胃カメラ検査を希望する場合には、あらかじめ実施できるかどうかを確認し、経鼻内視鏡が実施できるかを医師と相談しましょう。
内視鏡治療を実施しているか
胃カメラ検査を行って、もしも病変が見つかった場合、その場で病理組織検査や内視鏡治療が可能かどうかを確認することも大切です。
内視鏡専門の医師が在籍している医療機関であれば、内視鏡のプロですので内視鏡治療も可能です。
しかし内視鏡治療ができない場合、検査で病変が見つかっても、一旦検査を終えてほかの病院で再検査をしなければなりません。
再度胃カメラを挿入して内視鏡治療になるため手間・時間・苦痛が再度伴うことがあります。胃カメラ検査で何かあればそのまま内視鏡治療ができる内視鏡専門の医師が在籍している医療機関を選ぶと良いでしょう。
受診に伴う苦痛が少ないか
受診をする場合には何か胃に症状がある場合でしょう。そのようなときに苦痛を感じる検査や悪いものではないかという不安を軽減してもらえる医療機関を選ぶことが精神的にも大切です。まず下記のことを確認してみましょう。
- しっかりと説明してもらえること
- 保険適用できる治療で経済的に負担がかからないか
- 通うまでに時間がかからないか
- もしも副作用が出たときにきちんと対処できるか
胃カメラ検査をするときには身体的にも精神的にも苦痛が生じます。少しでもその苦痛を軽減してもらえる医療機関を見つけることが大切です。しっかりと情報収集を行い、受診する医療機関を見定めましょう。
炭酸ガス送気装置が導入されているか
炭酸ガス送気装置とは、炭酸ガスを胃に入れて膨らませる装置です。
胃カメラ検査や大腸カメラ検査を行うときに空気を入れて膨らませることによって、胃壁や腸壁を膨らませて観察をします。
胃や腸は収縮運動をするため、膨らませていないとカメラに接近しすぎると視野が狭まり観察効率が悪いです。従来は空気だったものが、現在は炭酸ガスになったことで、腸管からの吸収が早くなりお腹の張りを軽減できます。
吸収された炭酸ガスは呼吸として体外に排出されるため体内に残ることはありません。
まとめ
胃カメラ検査の費用は保険診療と自費診療とで2倍近く変わってきます。保険を適用すれば3割負担となるため、検査自体は3,420円とその他診療費が加わり5,000円から15,000円程度です。
しかしピロリ菌の除去や病理組織検査を提出する場合には自費診療となるため、11,400円(税込)の検査代に加え、治療や病理組織検査の料金が上乗せとなります。そのため15,000円(税込)から25,000円(税込)が相場です。
また自費診療は医療機関によって料金設定が自由なため、相場をしっかりと把握したうえで医療機関を受診して医師と相談しましょう。
胃カメラ検査の注意点としては下記のようなことがあります。
- 抗血小板薬を内服している方は医師と相談して検査4~7日前から中止
- 検査前日は21時以降は絶食する(水は可)
- 検査当日2時間前までコップ1杯程度であれば可
- 検査後は麻酔効果が切れるまでの1時間程度は食事など控える
- 検査当日中は出血の可能性もあるためアルコールや油分は控える
胃カメラ検査を行う医療機関を選ぶときには、鼻からの胃カメラ検査や静脈麻酔ができるかなどなるべく苦痛がない方法ができる場所を選びましょう。
また医師がしっかりと検査について説明をしてもらえ、胃カメラ検査をして病変が見つかった場合には一度に治療ができるのかも確認しておく必要があります。
検査がなるべく苦痛なく実施でき、病気があれば早期発見をすることで健康な生活が送れるよう、相場費用などを考慮して医療機関を選びましょう。
参考文献