内視鏡検査・治療について|内視鏡治療による合併症も解説
私達にとって身近な内視鏡検査の詳細な内容をご存知でしょうか。内視鏡検査では食道・胃・十二指腸・大腸の内部を観察して検査し、必要に応じて治療もします。
また、膀胱の検査や治療も行っています。これらは開腹しないため、体への負担が小さくて済む治療方法です。
今回は内視鏡検査および治療の種類や、内視鏡治療を受ける場合の注意点・合併症などをわかりやすく解説します。あなたやご家族の健康にぜひお役立てください。
内視鏡検査は、内視鏡という器具を用いて食道・胃・十二指腸・大腸の内部を観察する検査です。さらに、必要に応じて治療も行います。
なお、一般的に利用されるのは先端にCCDカメラもしくはレンズがついた細い管です。口や鼻、または肛門から挿入して内臓の内部を観察します。カプセル型の内視鏡もよく使用されており、飲み込むだけで検査が可能です。この検査は大きく分けて以下の4種類になります。
順番に解説します。
上部消化管内視鏡検査は、咽頭の一部・食道・胃・十二指腸を内側から直接的に観察する検査です。内視鏡の中でも、ファイバーの細い管の先端にCCDカメラのような小型撮像素子がついている「胃カメラ」を使用して検査します。
検査の手順は、以下のとおりです。喉の麻酔を行ったうえで、胃カメラを口あるいは鼻から入れて咽頭の一部や、食道・胃・十二指腸を内側から直接的に観察します。
より検査を精密に行う方法としては、色素内視鏡検査と画像強調内視鏡検査が一般的です。また、検査時に病変から一部組織を取る「生検」を行うこともあります。
色素内視鏡検査は、内部に色素を撒いて病変をわかりやすくする検査方法です。一方の画像強調内視鏡検査は、特殊な光を照射して消化管の粘膜表面の模様などの色調を強調して観察します。
症状は無いが疾患の疑いがある患者さんに対して疾患を発見するために行う検査(スクリーニング)であれば、検査の所要時間は6分〜8分程度です。
ただし、必要に応じては10分以上かかることもあります。検査が辛い場合には静脈麻酔を使っての対応することも可能なため、検査を担当する医師に相談しましょう。
大腸内視鏡検査は、直腸から盲腸(回盲部)までの大腸全体を内側から直接的に観察する検査方法です。この検査でも、ファイバーの細い管の先端にCCDカメラのような小型撮像素子がついている内視鏡(ビデオスコープ)を使用します。
この検査では、大腸の状態を見るため検査の前に大腸を空にしておく必要があります。病院から予め指示されますので、その指示に従ってください。
検査の際には、必要に応じて鎮痛剤や鎮静剤を使用したうえで肛門からビデオスコープを挿入して大腸内を直接的に観察します。
より精密に検査を行う方法としては、上部消化管内視鏡検査と同様に色素内視鏡検査や強調内視鏡検査が一般的です。
この検査では、ズーム式拡大内視鏡を用いて表面構造を詳細に観察する拡大内視鏡検査をすることもあります。また、検査時に「生検」を行うことがあるのは上部消化管内視鏡検査と同じです。
通常、この大腸の検査は15分~1時間程度でおわります。静脈麻酔を使用した検査も可能なため、検査を担当する医師に相談しましょう。
病変の状態によっては、その場で日帰りのポリペクトミーや内視鏡的粘膜切除術(EMR)などの治療が可能な場合もあります。その場合、治療後1週間〜10日間ほどの期間は食事や日常生活の制限が必要です。
カプセル内視鏡検査では、カプセルの中にカメラが封入されている内視鏡を飲み込むことで体内の画像を撮影します。体外に画像データを受信するレコーダーを装着してカメラが撮影したデータを受信し、保存する仕組みです。
データの送受信の際に電磁波が発生するため、ペースメーカーや植え込み型除細動器を使用している場合にはこの検査を受けられません。
現在では、小腸カプセル内視鏡検査と大腸カプセル内視鏡検査は保険適用です。ただし、大腸カプセル内視鏡は通常の大腸内視鏡検査が困難な場合に適用されるので医師に相談してみましょう。
なお、カプセル内視鏡は使い捨てで検査後は破棄されます。また、飲み込んで撮影する方法のため検査時に苦痛をともなうことはありません。
超音波内視鏡検査は、内視鏡先端に超音波を送受信する装置がある機器を使用する検査方法です。理論的には体外からのエコー検査と同様で、検査したい部分に超音波を送受信して状態を知ることができます。
「胃カメラ」と同様に口から挿入して体内の胃壁や十二指腸壁にあて、超音波を送受信して胃・腸・食道などの「壁」の異変を検査することが可能です。
これにより、通常の内視鏡では見られない各臓器の壁の深さ方向の情報が得られます。胃・腸などの消化器のほか、膵臓や胆道の検査にも有用です。
CTやMRIの検査で膵臓や胆道の病気が疑われた場合、より詳しく調べるためにこの検査がよく使用されます。
内視鏡検査を受ける際の注意事項を検査の種類ごとにまとめましたので参考にしてください。
一般的な治療方法の主なものは以下の3つです。
順番に解説します。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)では、内視鏡を用いて病変部(がん)を排除していきます。スネアという輪っか状のワイヤーが出し入れできるように作られた装置を使うのが特徴です。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)による食道・胃・大腸などの消化管の病変部(がん)の治療には、太さ1cmほどの内視鏡を使用します。内視鏡専用の部屋や手術室で実施される場合が一般的です。
まず、病変部(がん)の下の粘膜層の下層部分に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウム液を注入します。粘膜は注入された生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウム液により膨れあがり、このとき病変部(がん)は押し上げられて粘膜上に浮き上がった状態です。
ここで、スネアを先端から出して輪っかを病変部(がん)の根本に掛けて徐々に締めていきます。病変部(がん)の根本をしっかり捉えたところでスネアに高周波電流を流し、病変部(がん)を切除して完了です。
この際、病変部(がん)の周囲の正常な粘膜も多少切除されてしまいます。切除後には、出血や消化管の孔(穿孔)の有無の確認が重要です。
上部消化管や小腸の内視鏡的粘膜切除術(EMR)では出血や穿孔の危険性が皆無ではないため、入院が必要です。大腸の場合は外来で施行可能なケースがほとんどですが、病変が大きい場合は入院するケースもあります。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、内視鏡的粘膜切除術(EMR)で切除するのが困難なサイズのがんの治療方法です。
がんのサイズが大きい場合、切除のために浮き上がらせるのが困難になります。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)で使用している生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウム液を注入して病変部(がん)を浮き上がらせる方法では、十分に浮き上がった状態にできません。
サイズが大きく浮き上がりにくい病変部(がん)の周りの正常な粘膜ごとナイフで剥ぎ取ることで治療が可能です。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)による食道・胃・大腸などの消化管の病変部(がん)の治療には、太さ1cmほどの内視鏡を使用します。治療環境は、内視鏡専用の部屋や手術室です。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)でも、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と同様に病変部(がん)の下の粘膜層の下層部分に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウム液を注入します。
これである程度は病変部(がん)が粘膜上に浮いた状態となります。しかし、がんのサイズによってはより浮いた状態での剥離が好適です。そこで、内視鏡先端の高周波ナイフに高周波電流を流して内視鏡的粘膜切除術(EMR)よりも大きな範囲で病変部(がん)周囲の粘膜を切開します。
病変部(がん)の周囲一周分切開した後、粘膜下層から正常な粘膜ごと病変部(がん)を剥ぎ取って終了です。切開終了後には、出血や消化管の孔(穿孔)の有無の確認を行います。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は臓器にもよりますが、大掛かりな手術となりますので入院が必要です。
経尿道的膀胱腫瘍切除術は、膀胱にできた病変部(がん)の治療に適用される方法です。基本的に筋層(きんそう)非浸潤性膀胱がんが対象になります。なお、このがんは、以前は表在性がんと呼ばれていました。
経尿道的膀胱腫瘍切除術では、太さ5〜8mmほどの内視鏡を使います。治療環境は、手術室です。
尿道から内視鏡を挿入して、膀胱腫瘍を先端部に備えた電気メスで病変部(がん)を切除します。施術の際に、膀胱粘膜の生検を行うことも可能です。
この治療法を用いれば、病変部(がん)の除去または正確な病理診断を得られます。開腹しないことから体の負担も少なくて済み、日帰りで手術を受けることも可能です。(※術前・術後に通院が必要になる場合があります)
筋層浸潤性膀胱がんの場合でも、初期の診断などではこの方法を用いた手術が行われています。
大腸がん治療を内視鏡で行った場合、合併症を起こすことがあります。主な合併症は以下のとおりです。
順番に解説します。
大腸がんの治療を行った場合、血便を起こすことがあります。出血を止めるための内視鏡による治療が必要です。
大腸がんの治療を行った場合、後述する穿孔により腹痛を起こすことがあります。腹痛の程度はご自身にしかわからないので、異変を感じたら医師や看護師に申し出ましょう。
穿孔とは、内視鏡治療の際に消化管に「孔」ができる症状です。この孔を塞ぐための内視鏡による治療が必要になります。
穿孔の場合、手術が必要になるケースもあるので術後の観察が重要です。
穿孔が起こると、発熱症状を示すことがあります。術後管理の定期的な検温はもちろんのこと、ご自身で異変に気づいたときは検温をしましょう。
膀胱がんの治療を内視鏡治療により行うと、合併症を起こす場合もあります。主な合併症は以下のとおりです。
順番に解説します。
経尿道的膀胱腫瘍切除術で病変部(がん)を切除した場合、切除部は止血処理されているものの完全に治っているわけではありません。
そのため、不用意な動きで切除部が擦れて出血してしまう場合があります。膀胱内で出血を起こすと、当然のことながら尿に血が混ざり血尿が起こるのです。
出血が多く血尿がひどい場合には、特殊なカテーテルを用いた膀胱内洗浄をします。多くの場合、出血は徐々に収まっていき血尿も収まるので安心してください。
切除部は、術後炎症を起こすケースがほとんどです。この炎症によって頻尿や排尿痛が起こります。
傷が治るにつれて頻尿や排尿痛も収まるのでご安心ください。
今回は、内視鏡検査および治療の種類やこの治療を受ける場合の注意点・合併症などを解説しました。
内視鏡検査を受ければ、あなたの病気が早期に見つかる可能性が非常に高くなります。まずは健康診断の際に内視鏡検査を受けてみましょう。
この記事があなたやご家族の健康な生活に少しでも役立てば幸いです。最後までお読み頂き、ありがとうございました。
参考文献
- 内視鏡検査|国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院
- 内視鏡検査・治療(ないしきょうけんさ・ちりょう)|国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院
- 消化管の診療|広島大学大学院 医系科学研究科 消化器内科学(旧第一内科)
- 用語解説|国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所
- 拡大~超拡大内視鏡や特殊光内視鏡を用いた診断学の改良と開発|東京大学消化器内科消化管グループ
- 大腸内視鏡検査|慶應義塾大学病院
- 超音波内視鏡 (EUS)|国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院
- 内視鏡検査を受けられる方へ|独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター
- カプセル内視鏡検査|東京女子医科大学附属足立医療センター
- 検査サービス患者様用
- 内視鏡治療|国立研究開発法人国立がん研究センター
- 経尿道的膀胱腫瘍一塊切除(TURBO)について|国立研究開発法人 国立がん研究センター 東病院
- 大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療|国立研究開発法人国立がん研究センター