お腹がシクシクと痛むと「なぜこれほど痛みが続くのだろうか」「大きな病気だろうか」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、腹痛の種類・腹痛が起こるメカニズム・お腹がシクシクと痛む場合の原因などについて詳しく解説していきます。
記事の後半では、腹痛を感じた場合に自分でできる対処法や、腹痛の原因を確認する「内視鏡検査」についても触れるのでぜひ参考になさってください。
シクシクした痛みが起こるメカニズム
お腹がシクシクと痛むメカニズムは、内臓痛・体性痛・関連痛の3つに分けられます。
内臓痛は、胃や大腸など内臓が縮んだり拡張したり痙攣したりして発生する痛みです。
内臓の痛みであることは分かっていますが、痛みを起こしている範囲が漠然としており明確ではありません。腹痛に加えて、冷や汗・吐き気・下痢・便秘などを伴う場合もあります。
一方で体性痛は、内臓を包む腹膜・胸部と腹部を隔てる横隔膜などが物理的あるいは化学的な刺激を受けて痛みを発生させることが特徴です。
突き刺すような鋭い痛みが持続し、痛みが起きている場所が明確になります。体を動かしたり痛みのある部分に触れたりすると、強い痛みを感じるでしょう。
また関連痛は、内臓痛の原因となる部分とは異なる部位に痛みが生じてしまう症状です。
脊髄神経を通じて、体性知覚神経の支配領域である皮膚・筋肉に痛みが生じます。痛む場所が明確で、強い痛みを発する点が特徴です。
以上のように腹痛は、痛みを発生させるメカニズムがあり、何かしらの原因を伴って起こるため、その原因を突き止めることで痛みを軽減できるでしょう。
お腹がシクシク痛みを感じる原因
お腹がシクシクと痛みを感じる原因は、以下の11個が挙げられます。
- ストレス
- 過剰に胃酸が分泌している
- 生活習慣の乱れ
- 過敏性腸症候群
- 薬剤の摂取
- 急性胃炎
- 機能性ディスペプシア
- 大腸憩室炎
- 感染性胃腸炎
- 便秘
- 月経痛
どの事例も、何かしらの作用により胃腸が正常に働かず痛みを生じます。しかし、適切な処置を行うことで、痛みが軽減するものもあるでしょう。
一方で、すぐに受診を検討すべき症状もあるため、不安な場合は消化器内科を受診してください。
ストレス
ストレスが原因で、お腹がシクシクと痛む可能性があります。自律神経が乱れ、腸の働きをコントロールできなくなるためです。
例えば、緊張・不安・イライラなど精神的なストレスを感じると腸の働きに影響が出て、腹痛・下痢・便秘などの症状が出るでしょう。
このことを「脳腸相関」と呼び、近年注目されています。このように脳と腸は連携しているため、過度のストレスは腹痛の原因となります。
過剰に胃酸が分泌している
過剰に胃酸が分泌されると、お腹がシクシクと痛む可能性があります。強烈な酸によって胃が炎症を起こしてしまうためです。
実際に胃は、口から入った食べ物を消化したり、一緒に入ってしまった細菌・ウイルスの殺菌をしたりしています。
このように胃の粘膜は胃酸を分泌して腸の働きを助けていますが、過剰に分泌されると腸の働きが悪くなり、腹痛が発生するでしょう。
生活習慣の乱れ
生活習慣の乱れにより、食べ過ぎ・飲み過ぎになると、胃粘膜を傷つけてしまうリスクがあります。胃は、消化・吸収を促すために胃酸の分泌量を増やすためです。
実際に天ぷらやステーキといった高脂肪の食事は、消化しにくいため胃酸が多く分泌されます。先ほど述べたように、過剰な胃酸の分泌は腹痛の原因です。
このように胃酸の分泌量が増えないようにするためにも、生活習慣の改善が望まれるでしょう。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群とは、緊張・不安といった精神的なストレスによってお腹が痛くなる病気です。ストレスを感じると、下痢や便秘を繰り返します。
命に直結するような病気ではありませんが、仕事や学業に影響するでしょう。生活の質を大きく低下させる原因となるため、なるべく早く消化器内科を受診してください。
また、先ほど述べたようにストレスに関係があると考えられており、心療内科の受診が必要になる場合もあります。
薬剤の摂取
薬剤の摂取により、腹痛が起こる可能性があります。薬は全身に影響しており、副作用の症状が現れる可能性があるためです。
症状は、腹痛・下痢・消化管からの出血などがありますが、原因となる薬の服用を中止することで症状が改善されるでしょう。
ただし、腹痛の症状が現れたとしても、勝手に薬の服用をやめることは危険です。
薬によっては服用をやめると悪影響を及ぼす可能性があるため、腹痛の症状が出たら必ず医師に相談しましょう。
急性胃炎
急性胃炎とは、胃の粘膜に急性の炎症が起こる病気で、突然胃が痛くなります。
原因は、暴飲暴食・ストレス・細菌やウィルスの感染などが挙げられ、腎不全・肝硬変などの疾患でも起こる可能性があるため注意が必要です。
胃の痛みと同時に、胸焼け・吐き気・胃の膨満感などの症状が伴うでしょう。
また先ほど紹介した「ストレス」「胃酸の過剰分泌」によって急性胃炎を起こし、腹痛が発生する場合もあります。
機能性ディスペプシア
機能性ディスペプシアは、胃腸の神経過敏状態により、腹痛が発生する病気です。ストレスや不眠など精神的な負担が原因といわれています。
代表的な症状は吐き気・ゲップなどですが、腹痛を伴うケースもあるため注意が必要です。
症状がある場合は消化器内科を受診するとよいですが、精神的な問題が原因の場合が多いため心療内科の受診も検討しましょう。
大腸憩室炎
大腸憩室炎とは、大腸にできた憩室が糞便に含まれる細菌によって炎症を起こす病気です。
腹痛・発熱・下痢の症状があり、炎症が強く憩室から出血する場合は下血を起こす可能性もあります。
そもそも憩室とは、大腸の壁が腸の外側に飛び出し袋状になるものです。腸の壁に圧力がかかると、壁の弱い部分に負担がかかり外に飛び出してしまいます。
憩室は袋状になっているため、糞便が溜まりやすく、細菌の住処となり炎症を起こしやすくなるでしょう。
同じように糞便による細菌が原因となり炎症を起こして腹痛の症状が出る「虫垂炎」と似ているため、エコー検査やCT検査などでしっかりと調べてもらうとよいでしょう。
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎とは、細菌・ウィルスなどの感染により、腹痛・発熱・下痢・嘔吐・悪心などの症状が起こる病気です。
多くの細菌・ウイルス・寄生虫が原因となり、腸炎ビブリオ・病原性大腸菌・ロタウイルス・腸管アデノウイルス・アメーバ・ランブル鞭毛虫などが挙げられます。
季節性の感染症や食中毒によって発症するため、流行期の手洗いや感染者との濃厚な接触を避ける必要があるでしょう。また、汚染された水・食品の摂取に注意が必要です。
便秘
便秘とは、便の水分が減って硬くなったり腸管が狭くなったりすることで、排便が難しくなり排便頻度が減っている状態です。
下腹部の痛み・膨満感・残便感などの症状が起こります。便秘が継続すると大腸疾患・痔の発症リスクが上昇するため注意が必要です。
便秘は大腸の働きが悪くなることで起きるため、暴飲暴食・ストレスなど胃腸に負担をかけないことが予防になります。改善するには、生活習慣の見直しが、重要になるでしょう。
月経痛
月経痛とは、生理期間中に起こるお腹や腰の痛みです。「生理痛」とも呼ばれており、痛みが強く悩んでいる女性も少なくありません。
症状を緩和するには、下腹部を温めたり十分な栄養と睡眠を心がけリラックスしたりするとよいでしょう。
月経痛の強さは個人で異なりますが、日常生活に支障が出るほどの痛みがある状態を「月経困難症」と呼び、保険内治療の対象となります。
月経痛の痛さは本人にしか分からないため「自分の生理痛は一般的な痛み」と我慢せず、不安な場合は産婦人科に相談するとよいでしょう。
腹痛の種類について
腹痛には痛みの感じ方によって以下のような種類があります。
- キリキリする:鋭い痛みが起こる
- シクシクする:鈍い痛みが起こり、長時間継続する
- ズキズキする:脈を打つような痛みが起こる
- キューっとする:胃が締め付けられるような痛みが起こる
お腹が痛いといっても、以上のような種類があり、どのような痛みなのかは本人の感じ方次第です。
「キリキリする」「キューっとする」のような鋭い痛みや締め付けられるような痛みがある場合は、我慢せず早めに消化器内科を受診するとよいでしょう。
そのほかの痛みでも、短時間で治るものもあればなかなか治らないものもあるため、異常を感じたらすぐに病院を受診してください。
腹痛が起きた際の対処法
腹痛が起きた際の対処法は、以下の2つが挙げられます。
- 整腸剤を服用する
- 腹部を温める
腹痛の原因によって対処法が異なりますが、胃腸が正常に働いていない状態で腹痛が起きている場合は整腸剤を服用することで改善される可能性があるでしょう。
また、便秘や月経痛の場合は腹部を温めることで痛みが緩和され、楽になることがあります。
ただし、上述した対処法は痛みを緩和するもので治療にはなりません。原因が分からない場合や痛みが治らない場合には、病院に受診することをおすすめします。
整腸剤を服用する
腹痛が起きた際は、整腸剤を服用してみましょう。整腸剤を服用することで、腸内細菌のバランスがよくなるためです。
腸内には約100兆個の細菌が存在しています。その細菌を大きく2つに分けたものが、善玉菌と悪玉菌です。
名前の通り、善玉菌は人間にとってよい働きをする細菌で、悪玉菌は腸内で有害な働きをします。
この2つの細菌のバランスがよければ問題は起きません。しかし、バランスが崩れると腹痛・便秘・下痢などの症状が現れるでしょう。
また整腸剤には、乳酸菌のような菌類が入っているものや漢方薬が含まれているものがあります。
ドラッグストアで購入できるため自分に合ったものを選択できますが、不安な場合は消化器内科を受診して医師に処方してもらいましょう。
腹部を温める
腹痛は、腹部を温めることで痛みを軽減できる可能性があります。腹部を温める方法は「温罨法」と呼ばれており、以下の効果が期待できるでしょう。
- リラクゼーション
- 心理的な興奮を静める
- 血流を増加させる
- 筋肉の緊張を和らげる
- 新陳代謝を促進させる
以上のように薬を用いて直接胃腸に働きかけるのではなく、体や心の調子を整え、心身ともに正常な状態に導いてくれる点が特徴です。
先述したように脳と腸は連携しており、脳にかかる負担は「胃腸の不調」といった形で現れます。腹部を温めて、心身ともにリラックスすることでお腹の痛みも軽減されるでしょう。
このように、冷え・ストレス・生活習慣の乱れなど日常的な原因により引き起こされた腹痛は、一時的な症状のみですぐに改善することもあります。
しかし、痛みが強い・腹痛以外にも症状がある・症状が持続している・頻繁に繰り返すなどの場合には医療機関を受診することをおすすめします。
受診の目安となる痛みの度合い・症状の例は下記のとおりです。もし「受診するべきだろうか」と迷ったら、こちらも参考にしていただけたらと思います。
- 冷や汗が出るほどの腹痛がある
- 腹痛により歩行が辛いほどである
- 徐々に痛みが強くなる
- 下血・吐血など出血を伴っている
- 痛みとともに発熱がみられる
腹痛の原因が分かる内視鏡検査とは?
腹痛の原因が分かる内視鏡検査とは、太さ1cm程度の細長い管を口もしくは肛門から挿入し、食道・胃・十二指腸・大腸の内部を観察するものです。
管の先端には、小型カメラ(CCD)が内蔵されており、十二指腸・大腸の内部が鮮明に映し出されます。
腹痛の症状がある場合は、内蔵に異常がみられるケースとみた目に異常がないケースが存在するため、内視鏡検査によって腹痛の原因を限定できるでしょう。
例えば、大腸憩室炎の場合は大腸に憩室ができている状態のため、内視鏡検査によって状態が分かります。
一方で、機能性ディスペプシアなどの場合は腹痛の症状があっても内視鏡検査で異常がみられません。そのため、エコー検査・問診など別の方法で診断します。
ただし、結果的には消化管のみた目に異常が出ない病気だったとしても、診断の過程で内視鏡を行い炎症・腫瘍・潰瘍がないと確認することは重要です。
そのため、腹痛の原因を調べる際には、感染症が強く疑われる場合を除いて内視鏡検査を行うことが多いでしょう。
内視鏡検査は、年齢・体調などに応じて入院が必要な場合もありますが、基本的には日帰りで行える検査です。
また、検査に伴う苦痛が強い患者さんには、鎮静剤などを用いた鎮静下検査を行っている医療機関もあります。
まとめ
腹痛には、ストレス・生活習慣の乱れ・疾患などさまざまな原因があります。原因によっては、市販薬を飲んだり身体を温めたりすることで症状が治まる場合もあるでしょう。
しかし、ときには内臓の炎症・腫瘍・潰瘍など治療が必要な病気のサインとして腹痛がみられることがあるため注意が必要です。
もし、痛みが強かったり腹痛のほかにも症状がみられたりした場合は、医療機関を受診して原因を調べることをおすすめします。
参考文献