粉瘤をどのように見分けるのか知っていますか? 本記事では粉瘤の見分け方 について以下の点を中心にご紹介します。
- 粉瘤について
- 粉瘤と似た主な皮膚疾患
- 粉瘤と悪性の疾患
粉瘤の見分け方について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
粉瘤について
- 粉瘤とは何ですか?
- 粉瘤は皮膚科でよく見られる良性の皮膚腫瘍で、皮膚の下に袋状の嚢腫が形成され、中に皮膚の垢や脂がたまることで発生します。粉瘤は、表皮嚢腫とも呼ばれ、英語ではアテロームまたはアテローマともいわれています。
- 粉瘤の特徴について教えてください
- 粉瘤の特徴には、以下のようなものがあります。
少しずつ大きくなる: 粉瘤は初めは直径約1〜2cmの丸くふくらんだ形をしていますが、時間が経過すると角質や皮脂が蓄積し、10cm以上にもなることがあります。
放置していても治らない: 粉瘤は自然に治ることはありません。放置すると角質や皮脂が蓄積し、症状が悪化すると炎症や膿が出ることもあります。
腫れると痛む: 粉瘤はほとんどの場合、痛みを感じません。しかし、炎症による腫れと痛みを感じることもあります。
内容物は悪臭がする: 粉瘤の袋の中にたまった内容物が外に出ると強い悪臭が発生します。この臭いは「納豆のような臭い」や「肉や魚が腐ったような臭い」、「はき続けた靴下のような臭い」に例えられます。
中央に黒い点が見えることもある: 粉瘤の中央には、開口部に詰まった皮脂が酸化して黒く見えることがあります。
以上の特徴を持つできものが見つかった場合、粉瘤の可能性があります。ただし、粉瘤に似た症状を示すものは多種多様で、自己判断は困難な場合があります。粉瘤と疑われる場合は、医師に相談することをおすすめします。粉瘤と似た主な皮膚疾患
- 粉瘤とニキビの主な違いは何ですか?
- 粉瘤とニキビの主な違いは以下のようなものがあります。
大きさ: ニキビは毛穴が詰まり、炎症を起こすことで数mm程度に大きくなります。一方、粉瘤は皮膚の下にできる袋状の構造物に角質や皮脂が蓄積し、10cm以上にもなることがあります。
臭い: 粉瘤は、袋状の構造内に蓄積された老廃物により、特有の香りを発します。一方、ニキビは特に臭いを発することはないです。
発生場所: ニキビは10〜30歳代の顔や背中、胸部などに特に発生しやすい一方で、粉瘤は、年齢に関係なく、体の任意の部位に現れる可能性があります。
発生の仕方: ニキビは毛穴が詰まり、炎症を起こすことで突然発生します。一方、粉瘤は皮膚に形成された袋内に徐々に蓄積される老廃物により発生します。
ニキビと粉瘤には大きな違いがあります。気になる症状がある場合には病院を受診しましょう。
- 粉瘤と脂肪腫の主な違いは何ですか?
- 粉瘤と脂肪腫の主な違いには以下のようなものがあります。
大きさと形状: 脂肪腫は皮膚深層に生じ、ゴムのような柔軟性を持っています。一方、粉瘤は皮膚の浅い層にでき、硬いしこりを感じます。
成長速度: 粉瘤は放置していると徐々に大きくなります。一方、脂肪腫はゆっくり成長し、長い間大きさが変わらない場合もあります。
色調と見た目: 粉瘤は開口部があり、そこに詰まった皮脂が黒く見えることがあります。一方、脂肪腫は皮膚の下の層にできやすいため、皮膚が盛り上がっても肌の色は変わりません。
動き: 脂肪腫は周辺の組織と被膜によって区切られているため、皮膚と関係なく動きます。一方、粉瘤は皮膚とくっついて一緒に動きます。
治療: いずれの場合も、放置していて治ることはなく、除去が必要となります。
- 粉瘤とおでき(せつ・よう)の主な違いは何ですか?
- おできは、毛包炎が進行し、黄色ブドウ球菌によって引き起こされる細菌感染症で、「せつ(癤)」とも呼ばれます。毛包炎は毛根を保護する毛包が炎症を起こし、軽度の痛みや赤みを伴います。毛包炎が進行すると「せつ」になり、さらに進行すると「よう(癰)」になり、複数の毛穴で炎症が発生する状況があります。
一方、粉瘤は皮脂腺が詰まり、皮脂や垢が溜まってできるもので、しこりが突然できるものではありません。おできと同様に腫れている状態が見られますが、その原因は異なります。
おできと粉瘤は、見た目や症状が似ているため、混同されることがありますが、成り立ちと治療法は異なります。おできは薬で治療することが可能とされていますが、粉瘤は皮膚科での手術が必要な場合があります。どちらの症状も早期発見と早期治療が重要です。
- 粉瘤とガングリオンの主な違いは何ですか?
- 粉瘤は皮膚の下にできた袋状の組織に皮脂や垢などの老廃物が蓄積した良性の腫瘍として知られています。炎症が発生すると、腫れや痛みが伴うことがあります。
一方、ガングリオンは、ゼラチン状の液体で構成された腫瘍で、指や手の関節周囲などに発生する傾向があります。ガングリオンの大きさは、米粒からピンポン玉ほどまでと多種多様です。20〜50歳代で発症しやすく、特に、若い女性がこの症状を発症する可能性が高いとされています。無症状ですが、神経の近くで生じた場合、ガングリオンは神経を圧迫し、痛みや感覚麻痺を引き起こすことがあります。
粉瘤の治療には手術が必要となり、状態は悪化しやすいため、早期の治療が推奨されます。一方、ガングリオンは痛みやしびれがあり、大きくなって日常生活に差し障りがある場合に治療が必要となります。
粉瘤と悪性の疾患
- 粉瘤が悪性か良性か見分ける方法はありますか?
- 粉瘤はほとんどの場合良性の腫瘍ですが、まれに悪性腫瘍化することがあります。悪性化した粉瘤の多くは「有棘細胞癌」となり、稀に「基底細胞癌」として見られます。
診断は容易ですが、経験のある皮膚科医や形成外科医でも誤診することがあります。そのため、粉瘤切除後は必ず病理検査をすることが重要です。
悪性に関する所見で重要なのは、痛みが伴わない、粉瘤よりも赤みを伴う、周囲との癒着により、動きが制限され、赤みが見られるものの、触診時には硬さを感じることがある、などです。悪性腫瘍が疑われた場合には、ただちに「手術のできる大学病院等への紹介」が必要となります。
- 粉瘤と悪性リンパ腫の違いを教えてください
- 繰り返しになりますが、粉瘤は皮膚の下にできた袋状の組織に皮脂や垢などの老廃物が蓄積した良性の腫瘍として知られています。炎症が発生すると、腫れや痛みが伴うことがあります。粉瘤の治療には手術が必要となる場合が多いです。状態は悪化しやすいため、早期の治療が推奨されます。
一方、悪性リンパ腫はリンパ球と呼ばれる白血球の一種が悪性化したもので、悪性腫瘍に含まれます。悪性リンパ腫は、リンパ節が腫れることにより発見されることがあり、脇の下のリンパ節が腫れていることによって見つかる場合もあります。脇の下のしこりが硬く、触っても動かない場合には悪性リンパ種が疑わしいとされています。また、悪性リンパ腫は、「発熱」「体重減少」「寝汗」といった症状が現れることが多いです。
- 粉瘤と間違えやすい病気は他にどのようなものがありますか?
- 粉瘤と間違えやすい病気には以下のようなものがあります。
石灰化上皮腫(毛母腫)は、小児によく見られ、触感が石のように硬いことが特徴です。被膜がなく、筋層内や皮下脂肪に入り込むことが珍しくなく、手術後の痕跡は長く残る可能性があります。
血管脂肪腫は、皮下に形成され、全身に広がる可能性のある腫瘍です。皮膚の色には影響を与えません。腫瘍の治療は、外科的な除去が必要となります。
外毛根鞘嚢腫は、一般的な粉瘤と見た目が区別できませんが、まれに、増殖性外毛根鞘嚢腫という名の悪性化する可能性を秘めた腫瘍に進行することがあります。
慢性肉芽腫は、ニキビや粉瘤が不完全な炎症を引き起こし、その結果として腫瘍が大きくなる状態を指します。
化膿性汗腺炎は、繰り返し炎症と膿瘍を起こす疾患で、炎症性の粉瘤と初期の段階では見分けがつきません。
毛巣洞(毛巣瘻)は、肛門と尾骨の間に形成される膿瘍として知られています。炎症性粉瘤と似ているため区別が難しいです。
耳瘻孔は、耳たぶ付近にできる嚢胞性の疾患で、病態は粉瘤に近いです。
皮膚線維腺腫は、粉瘤と同様にしこりとなる病気ですが、粉瘤が皮下の病気に対して、皮膚線維腺腫は皮膚にできる病気で、皮膚ごと切除する必要があります。
外傷性・術後瘢痕は、粉瘤の手術後に形成される硬い塊で、再発する粉瘤との識別は、難しい場合があります。
多発性脂腺嚢腫は、思春期以降に皮下に形成され、全身に広がる可能性のある腫瘍として知られています。
これらの病気は、粉瘤と間違えやすい特徴を持っていますが、それぞれ異なる治療法が必要となります。適切な診断と治療のためには、専門的な医療機関での診察が重要です。
編集部まとめ
ここまで粉瘤の見分け方についてお伝えしてきました。粉瘤の見分け方の要点をまとめると以下の通りです。
- 粉瘤は皮膚科でよく見られる良性の皮膚腫瘍で、皮膚の下に袋状の嚢腫が形成され、その中に皮膚の垢や脂がたまることで発生する
- 粉瘤と似た主な皮膚疾患には、「ニキビ」「脂肪腫」「おでき」「ガングリオン」などがあるが、どの疾患も早期発見と早期治療が重要
- 粉瘤はほとんどの場合良性の腫瘍である。しかし、まれに悪性腫瘍化することがあるので、注意が必要
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。