「ニキビやおできだと思っていたけど、薬を塗ってもなかなか治らない」「小さなしこりだから、病院へ行かずに自分で治したい」と思ったことはありませんか? もしかしたらそれは、粉瘤(ふんりゅう)という皮膚の病気かもしれません。ここでは、見分けのつきにくい粉瘤とニキビの違いについて、特徴や治療方法なども含めて詳しくご紹介します。腫れやしこりなど、皮膚の症状でお悩みの人はぜひ参考にしてくださいね。
粉瘤とは
粉瘤と聞いても、ピンとこない人もいるかもしれません。しかし、これは誰でもなる可能性のある身近な病気なのです。ここでは、粉瘤の特徴や治療方法について詳しく解説します。
- 粉瘤の特徴について教えてください。
- 粉瘤は、皮膚や皮下組織にできる良性の腫瘍です。皮膚の下が腫れ、皮膚に密着して周りより硬いしこりになります。大きさはさまざまで、直径が数mmから数cmに及ぶこともあります。真ん中にやや黒っぽい開口部が見られることも特徴です。 また、 粉瘤は通常、痛みやかゆみをともないませんが、感染が起こると圧迫したときの痛みや赤み、腫れが生じます。良性腫瘍のため重篤な問題を引き起こすことはありませんが、細菌感染を起こしている場合は適切な治療やケアが必要なケースもあります。
- 粉瘤の治療方法について教えてください。
- 粉瘤は外用薬での治療が難しく、完治させるには手術で取り除くことが必要です。粉瘤より少し長めに皮膚を切開し、内容物を袋ごと摘出します。袋が残っていると再発する可能性があるためです。感染があって腫れている場合は、抗生剤や抗炎症剤を内服して鎮静化させてから、内容物の摘出を行います。
ニキビとは
90 %以上の人が1度は経験するのがニキビです。とても身近な皮膚の病気ですね。しかし、ニキビの種類や正しい治療方法を知らない人も多いのではないでしょうか。ここでは、ニキビの種類や特徴、治療方法を解説します。
- ニキビの特徴について教えてください。
- ニキビは、皮脂腺や毛穴の詰まりによって生じる皮膚の炎症性疾患です。一般的には、顔や首、背中、胸などの皮膚の油脂分泌が多い部位によく発生します。ニキビは大きく3つの種類に分けられます。それが「赤ニキビ」「白ニキビ」「黒ニキビ」と言われるものです。 赤ニキビは、皮膚の表面に突起していて、赤みを伴った軽度な腫れがあり、触ると痛みを感じるものです。白ニキビは、中心部に白い膿(うみ)が溜まった状態のニキビを指します。この白い膿は、毛穴が詰まって皮脂や細菌、死んだ皮膚細胞が混ざったものです。また、黒ニキビには毛穴の開口部に皮脂や細菌が酸化した黒ずみ(ブラックヘッド)が見られます。 ニキビは思春期に最も頻繁に見られますが、成人や幼児にも発生することがあります。ホルモンの変化、皮脂の過剰分泌、細菌感染などが原因です。ときには色素沈着が残ることもあるため、適切なスキンケアや治療を行い、日頃からニキビの発生を防ぐことが大切です。
- ニキビの治療方法について教えてください。
- ニキビの治療方法は、程度や原因によって異なりますが、一般的には塗り薬、レーザー治療、食生活やライフスタイルの改善がメインになります。 軽度なニキビの場合、ベンゼトニウム塩化物、サリチル酸などの成分が入っている市販薬がおすすめです。これらの薬は皮脂の過剰分泌を抑制し、詰まった毛穴を開いてニキビを治療します。重度のニキビには、皮膚科で処方される薬が必要です。また、外用薬で治らない場合はレーザー治療が有効です。皮脂腺の活動を抑制し、炎症を軽減することで、ニキビを改善させます。 また、健康的な食事、十分な睡眠、ストレス管理などのライフスタイルの改善は、ニキビの治療に役立ちます。特に、食事における糖分や乳製品の摂取量を見直すことは、ニキビの発生や悪化を抑制するのに効果的です。
粉瘤とニキビなどとの違い
粉瘤とニキビはどちらも良性の皮膚疾患ですが、これらに見た目の違いなどはあるのでしょうか? ここでは、その見分け方やその他の「似たできもの」についても解説します。
- 粉瘤とニキビの違いはありますか?
- 粉瘤とニキビはとても似ていますが、以下のような違いがあります。 まず、できものの表面に黒い点があるかどうかです。粉瘤は、しこりの中心に開口部という黒い点があるのが特徴です。ただ、黒い点は黒ニキビでも見られることがあるため、見分けがつきにくいこともあります。 次に、サイズはどれくらいなのかという点です。ニキビは大きくなっても数mm程度ですが、炎症を起こした粉瘤は数cmにもなることがあります。 内容物に悪臭があるかどうかも違う点です。粉瘤には独特の匂いがありますが、ニキビにはありません。特に炎症を起こした粉瘤が悪臭を放つ傾向にあり、粉瘤の内容物が表に押し出されたときに臭いを強く感じます。袋内に溜まった老廃物や細菌が、炎症によって臭いを生じるのです。
- ニキビ以外に粉瘤に似たできものはありますか?
- 脂肪腫(リポーマ)、おでき、イボなどが、粉瘤と似た外観や感触を持っています。
- 脂肪腫の症状と治療法について教えてください。
- 脂肪腫は、皮下組織にできる良性の腫瘍です。脂肪細胞が増殖してできたもので、粉瘤と同様、皮膚の下にやわらかいしこりができます。脂肪腫は通常、化膿することはなく、皮膚との癒着が少なく皮膚の下で動かせるのが特徴です。皮下に生じるできものの中で発生頻度が最も高く、背中、肩、首、腕、足など体のどこにでもできます。 脂肪腫の治療法は、手術による摘出です。脂肪腫は自然に治ることはなく、15cm程度まで大きくなることもあります。ほとんどが日帰りで行える手術のため、大きくなりすぎる前に摘出するとよいでしょう。
- おできの症状と治療法について教えてください。
- おできは「せつ」と呼ばれ、小さな傷からブドウ球菌などが細菌に感染することで生じる皮膚膿瘍(のうよう)です。粉瘤と違い、できてから早い段階で炎症や腫れ、圧迫することで痛みを生じます。脇や太ももの付け根、お尻などにできることが多い皮膚疾患です。 治療は抗菌薬の内服がメインになりますが、おできに膿がたまって炎症がひどくなった場合は切開して膿を出すこともあります。
- イボの症状と治療法について教えてください。
- イボは皮膚表面にできる良性の腫瘍であり、ウイルス性のイボと紫外線や加齢が原因のイボに分けられます。最も一般的なイボは、表面がブツブツと盛り上がる尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)です。ウイルス感染によって発症するため、触れたりほかの人と接触したりすることで感染する可能性があります。 イボの治療は、液体窒素療法が一般的です。これは超低温の液体窒素を使った凍結療法で、イボを凍結して壊死させます。凍結した箇所は2週間程度でかさぶたになり、皮膚が削り取られるようにして治るのです。簡単な治療法ですが、一定の痛みをともなうことと、2週間おきに通院して複数回治療を受ける必要があります。また、大きなイボや液体窒素療法で効果が出ない場合は、手術やレーザーで取り除くこともあります。
編集部まとめ
粉瘤やニキビは皮膚の良性の疾患ですが、それぞれ治療法が異なるため、自分で判断せず専門の医師の正しい診断を受けることが重要です。また、イボはウイルス感染する特徴があるため、周りの人へうつさないように早めの治療が必要になります。粉瘤やニキビは、大きくなると治療が大変になったり傷跡が残りやすくなったりします。腫れやしこりなど、皮膚に気になる症状があれば早めに専門の医療機関へ相談することが大切です。
参考文献