粉瘤(アテローム)は皮膚内部に形成される袋状の構造物で、角質や皮脂が内部に蓄積し、時間と共に増大する腫瘍の一種です。特に顔、首、背中、耳の後ろなどに発生しやすく、半球状のしこりとして現れます。中央に開口部があり、圧力を加えると臭い泥状の物質が出ることがあります。そんな粉瘤の初期症状をご存じでしょうか。 本記事では粉瘤の初期症状について以下の点を中心に解説します!
- 粉瘤の初期症状
- 粉瘤と似ている疾患
- 粉瘤の検査方法
粉瘤の初期症状について理解するためにも参考にしていただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
粉瘤の初期症状とは?
以下に、粉瘤の初期症状について詳しく説明します。
粉瘤は初期段階では、皮膚が盛り上がり、柔らかい塊として表れます。基本的に初期の小さな粉瘤は白色〜肌色で、大きくなるにつれて、黄色、黒色、青色など、さまざまな色に変化することがあります。また、膨らんだ塊の中心の開口部が黒い点として見えることがあります。初期段階では、痛みやかゆみといった症状は少ない場合が多いですが、化膿してしまうと腫れて赤くなり、痛みが生じる可能性があります。 また、角質が増加すると、徐々に大きさを増していき、数cm以上になることもあります。 これらの症状が見られた場合、早めに皮膚科か形成外科を受診することをおすすめします。また、放置すると徐々に大きくなっていくこともありますので、なるべく小さな時期に摘出できるように早期に受診しましょう。
粉瘤と似ている疾患の見分け方
粉瘤と似ている疾患の見分け方について解説します。
ニキビ
ニキビは皮膚の毛穴や皮脂腺が皮脂や古い角質で詰まり、その中でアクネ菌が増殖することで炎症を起こし、皮膚に隆起した発疹(発赤)を形成する皮膚病です。以下に、ニキビの主な特徴と種類について詳しく説明します。
- 白ニキビ:ニキビの初期段階で、毛穴の中に皮脂がたまっている状態です。毛穴まわりの角質によって毛穴がふさがれ、排出できない皮脂が毛穴内にたまることでブツブツと盛り上がります。自覚症状がないため、ニキビが発生していることに気付かない人もいます。
- 黒ニキビ: 白ニキビが進行すると毛穴が開き、詰まっていた皮脂や古い角質などが空気に触れて酸化し黒く変色します。白ニキビと同様に、痛みや赤みなどの症状は少なく、炎症もあまり起こらないとされています。
- 赤ニキビ(紅色丘疹): 白ニキビが改善されないと、アクネ菌が繁殖し、炎症を引き起こし、その炎症によって赤くなったり腫れたりするのが「赤ニキビ」です。
- 黄ニキビ: 赤ニキビがさらに進行すると、膿ができてしまう「黄ニキビ」になります。
ニキビの種類によっては自覚症状がない場合もあります。 ニキビか粉瘤かわからない場合は医療機関で検査を受けることをおすすめします。
脂肪腫
脂肪腫は、脂肪細胞が増えることで形成される良性の腫瘍で、触感は柔らかいです。脂肪腫は、粉瘤よりも柔らかく、皮膚の下で移動します。粉瘤は、弾性を持つ硬いしこりであり皮膚にくっついて動きます。また、粉瘤はそのままにしていると徐々に大きくなりますが、脂肪腫は長年サイズが変化しないことが多いといわれています。脂肪腫と思われる塊であっても悪性腫瘍の可能性があるため、すぐに受診する必要があります。
おでき・イボ
おできは、皮膚の常在細菌である黄色ブドウ球菌が毛穴とその周囲に感染を起こすことで起こります。複数の毛包が炎症を起こすと「よう」と呼ばれます。黄色ブドウ球菌は、皮膚に常駐している菌類の一つですが、菌のバランスが崩れ、疾患やストレスなどにより免疫力が落ちると悪化しておできができてしまいます。厚みのあるしこりができ、赤く腫れ、痛みが出る場合があります。腫れがでて約3〜5日経って大きくなると、腫れは次第に柔らかさを増し、膿が出始めます。これは炎症性粉瘤の症状と似ていますが、おできは感染初期からすぐにしこりが形成され、痛みを伴うので、徐々に成長する粉瘤とは進行過程の違いがかなり大きいので、間違えることはほとんどありません。
イボは皮膚の表面が硬くなって突起したもので、主に手や足にできるとされています。イボはヒトパピローマウイルス(HPV)によって引き起こされ、感染力が強いです。イボは自然に消えることもありますが、消えるまでには数ヶ月から数年かかることがあります。イボが痛みを伴う場合や、自己処理によって症状が悪化する場合は、医療機関での治療が必要です。
粉瘤の検査方法
粉瘤の検査方法について説明します。
問診と診察
粉瘤の診断は主に問診と皮膚の状態の診察から行われます。
問診では、患者さんの症状やその変化、健康状態、生活習慣などを詳しく聞きます。これにより、粉瘤の可能性や他の皮膚疾患の可能性を評価します。
診察では、医師が皮膚の状態を直接観察します。粉瘤はこぶのようになるため、皮膚の表面から確認できることが多いです。粉瘤は数mmから数cmの大きさで、腫瘤の中央に黒い点のような穴が開いていて、強く押すと、特有の臭いと共に粘り気のある物質が出てくることがあります。
他の病気と区別がつきにくい場合には、より詳しい検査が必要になる場合があります。詳しい検査というのは、下記で説明する超音波検査やMRI検査、病理検査などです。
超音波検査・MRI検査・病理検査
粉瘤の診断には、以下のような検査が行われることがあります。
超音波検査:超音波は、体内の組織や器官の画像を生成します。これにより、腫瘍の位置や大きさ、形状を詳しく調べられます。また、腫瘍が固いか柔らかいか、液体を含んでいるかどうかなど、腫瘍の性質についても情報を提供します。
MRI検査:MRIは、強力な磁場と無線波を使用して体内の詳細な画像を生成します。これにより、超音波検査だけでは確認できない詳細な情報を得られます。特に、腫瘍が周囲の組織や器官に広がっているかどうかを調べるのに有用です。
病理検査:病理検査では、腫瘍の一部を取り出して顕微鏡で調べます。これにより、腫瘍が良性か悪性か、特定の種類の腫瘍かどうかを確認します。また、腫瘍の細胞がどの程度正常から外れているか(つまり、腫瘍がどれだけ進行しているか)も評価できるとされています。
粉瘤の治療法
粉瘤の治療法について解説します。
初期の場合
粉瘤の初期治療法についてですが、痛みがある場合には、鎮痛薬を使用します。また、軽い炎症がある場合には、抗生物質を使用することもあります。これらの薬は、痛みを和らげ、感染を抑えるために使用されます。
ただし、これらの薬は一時的な対策であり、粉瘤自体を治すものではありません。粉瘤は皮膚の下にできた袋状の構造物に皮膚の老廃物が溜まってこぶのようになるもののため、最終的には手術による除去が必要となることが多いです。
細菌感染がある場合
粉瘤(アテローム)が化膿して炎症を起こしている状態は「炎症性粉瘤(炎症性アテローム)」と呼ばれ、すみやかな治療が必要となります。
炎症性粉瘤の治療は、状態により異なり、細菌感染がある場合、袋が周囲にしっかりと結合しているので、袋全体を除去することはできないとされます。そのため、まずは細菌を袋からなくす治療から始めます。この治療には、抗生物質の経口投与や塗布により、徐々に小さくする方法と、小さく切開し、膿を排出する方法(切開排膿)があります。
切開は少し痛みがありますが、激しい炎症がある場合は抗生剤のみでは治る見込みがない場合が多いため、「切開排膿」をおすすめすることがあります。アテロームがそれほど大きくない、または手術によるダメージが大きくなると見込まれる場合、抗生剤で小さくしていく方法が選ばれます。
また、抗生物質の使用は医師の指示に従って行われるべきであり、自己判断での使用は避けるべきです。抗生物質の不適切な使用は、抗生物質の耐性が発生する可能性があります。
細菌感染がない場合
細菌感染がない場合、粉瘤(アテローム)の治療は「構造物を取り出す」手術(くり抜き法)が行われます。くり抜き法は、皮膚に直径5mm程度の円形の穴を開け、そこから内容物と袋を絞り出すことで、構造物全体を取り除くものです。この手術の利点は、切開部分が小さいことです。しかし、絞り出す時に袋の一部が残ってしまうことがあり、これが再発につながる可能性があります。
粉瘤を悪化させないために
粉瘤を悪化させないためにはどうすればいいかについて解説します。
患部を触らないようにする
粉瘤を悪化させないためには、患部を触らないことが非常に重要です。粉瘤に対する治療法には、抗生物質の内服、切開排膿、手術による摘出などがあります。
抗生物質の内服は、炎症が軽い場合に用いられる方法ですが、粉瘤内に血管が通っていないため抗生物質が十分に届かず、期待できる効果が限定的なことがあります。
切開排膿は、患部に局所麻酔を行い、専門の器具を用いて老廃物を排出し、袋状の組織も摘出する治療方法です。これにより一時的に症状を抑制できるとされていますが、痛みや再発のリスク、継続的な通院が必要になる場合があります。
手術による摘出は、粉瘤を取り除くための方法で、根治を目指す際に適しています。局所麻酔後にメスで切開し、粉瘤を摘出した後、止血して縫合します。日帰り手術で行えることも多いです。
粉瘤を自分で触ったり潰したりすることは、炎症を悪化させたり、感染のリスクを高める可能性があります。自己判断での処置は避け、専門の医師の診断と治療を受けましょう。
自分で潰さない
粉瘤は、皮膚下に垢や皮脂などの老廃物が溜まって形成される良性腫瘍です。これは自然治癒せず、放置すると大きな袋状に成長していきます。粉瘤の中央にある開口部(へそのような部分)から細菌が侵入しやすく、これが炎症の医学的な原因となります。
粉瘤の袋は免疫細胞が含まれていない構造をしているため、細菌感染に非常に弱いです。特に、粉瘤を触ったり潰したりすると、細菌が入り込んで炎症性粉瘤を引き起こす可能性があります。
まとめ
ここまで粉瘤の初期症状についてお伝えしてきました。粉瘤の初期症状についてまとめると以下の通りです。
- 粉瘤は初期段階では、皮膚が盛り上がったやわらかいしこりができる
- 粉瘤はおできと似ているが、徐々に成長する粉瘤とは進行過程の違いがかなり大きい
- 粉瘤を診断するための検査には、MRI検査や病理検査がある
これらの情報が皆様のお役に立てれば幸いです。 最後までお読みいただきありがとうございました。