新着記事

注目のトピック

肛門外科

裂肛の治し方とは?裂肛の発生因子や切れ痔の対処法についても解説します

裂肛 治し方

皆さんは、裂肛という言葉を聞いたことがありますか。初めて聞いた方もいるかもしれませんが、切れ痔という言葉なら聞いたことがあるでしょう。

裂肛とは肛門上皮が切れてできる傷のことであり、いわゆる切れ痔のことです。特に20〜40代の女性に多く見られる症状といわれています。

切れ痔と聞いただけで、とても痛そうなイメージを持つ方もいるかもしれません。実際、個人差はあるものの排便時には痛みを感じます。

誰しもそのような思いはしたくないはずですが、切れ痔になる可能性はあります。しかし、もし切れ痔になったとしても、正しい知識を頭に入れておけば焦る心配はありません。

本記事では裂肛の治し方をはじめ、発生因子や切れ痔の対処法についても解説します。

裂肛に悩んでいる方、もしくは裂肛になるのが不安な方はぜひ参考にしてください。

それでは、まず裂肛の治し方から解説しましょう。

裂肛の治し方は?悩む看護師

裂肛に悩む方にとって、どのように治したらよいのかは気になるポイントでしょう。裂肛の治療には複数の方法があります。

その治療方法とは、保存的療法・内括約筋切離術・裂肛切除術・凍結療法・皮膚移動術5つです。

治療が大がかりになるのではないかと不安に感じている方もいるかもしれませんが、心配はいりません。どの治療方法も基本的には入院などは必要なく、日帰りで治療することが可能です。

それぞれの治療方法について理解を深めておけば、落ち着いて治療に臨めるでしょう。それでは、一つずつ詳しく解説します。

保存的療法

お尻のトラブル

保存的療法とは、人体を傷つけずに行う治療方法の総称です。外科手術のように、出血をともなう治療は行われません。

裂肛における保存的療法とは、便秘に対する治療といっても過言ではありません。なぜなら、裂肛は便秘解消とともに自然治癒することが多いためです。

具体的には、便秘解消に効果のある食べ物を食べるようにしたり、レシチン炭酸座薬などにより排便を促したりする方法などがあります。

これらの方法で便秘を解消することで、裂肛は改善へと向かう可能性が高いでしょう。また、出血や疼痛などの症状には軟膏が処方されることもあります。

内括約筋切離術

括約筋とは、肛門を閉じる働きをする筋肉です。括約筋には内括約筋と外括約筋の2種類があり、内括約筋は自分の意思とは関係なく働きます。

内括約筋が過度に緊張してしまうことで、排便時に裂肛を繰り返してしまう方がいます。そのような方に向け行われる治療方法が、内括約筋切離術です。

内括約筋切離術を行うことで肛門が広がるので、排便時の痛みが劇的に改善する方がほとんどです。

裂肛切除術

裂肛が深いと潰瘍になり、治りにくい状態となってしまいます。そのような時に用いられる治療方法が、裂肛切除術です。

裂肛切除術では、潰瘍部分を切除して傷を肛門の外まで伸ばすことで、切除した部位が治りやすいように形を整えます。

内括約筋切離術と併用して行われることもあります。その場合だと再発例もなく、しっかりとした治療方法といえるでしょう。

凍結療法

裂肛の潰瘍部分に液体窒素などをあてて凍結させることで、潰瘍を壊死させて治療する方法です。

治療には局所麻酔が用いられますが、麻酔が切れれば平均して2〜3時間程痛みを感じます。しかし、翌日からは痛みはなくなる場合が多く、排便時にも自覚症状がなくなる方が多いです。

もし2週間たっても痛みがある場合は凍結不足が考えられるため、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

皮膚移動術

処置をする医師

慢性的な切れ痔により肛門が狭くなってしまった時に用いられる治療方法が、皮膚移動術です。

切れ痔により傷が深くなると、肛門周辺の皮膚が瘢痕(はんこん)化してしまいます。瘢痕とは傷跡のことです。瘢痕化してしまうと肛門が狭くなるので、切れ痔が治りにくくなってしまうのです。

皮膚移動術では瘢痕部位を切除し、皮膚が欠損した部分に肛門の皮膚をスライドさせて覆い被せます。

そうすることで瘢痕化していた肛門が広がり、治癒へと向かいます。

裂肛の症状について

問診票

ここでは、裂肛の症状について詳しく解説します。排便時に肛門に痛みを感じた経験のある方もいると思いますが、果たしてどこからが裂肛なのでしょうか。

裂肛は、急性期と慢性期の2つに分類されます。そのどちらかによって、症状や用いられる治療方法も異なってくるのです。

それぞれどのような特徴があるのか、詳しく見ていきましょう。

急性期では、トイレットペーパーにつく程度の出血と痛みがあります。また、排便時だけでなく、排便後にもジーンとした痛みが残ることも特徴です。

この段階の治療では手術が用いられることはほとんどなく、保存療法が用いられる場合が多いです。

できれば手術せずに治したいと思う方も少なくないでしょう。思い当たる症状をお持ちの方は医療機関への受診をおすすめします。

裂肛を数ヵ月にわたり放置してしまうと慢性期となり、傷が深くなって潰瘍状になってしまいます。

そうなると皮膚に突起物ポリープができたり、肛門狭窄が起きたりしてしまいます。肛門狭窄とは、肛門が狭くなり便が出にくくなってしまう症状のことです。

症状にも個人差があるので、どの治療方法が用いられるかは一概にはいえません。しかし、慢性期においては手術療法が用いられるケースが多くなってきます。

手術はしたくない方は、早期に対処しておくことが鍵となります。

裂肛の発生機序とは?

考え事をする医師

裂肛がどのような症状かについて説明しました。毎日の排便時に痛みを感じてしまうのは大きな苦痛です。

裂肛になる前に対処することができれば、そのような思いをしなくて済みます。ここでは、裂肛の発生機序について詳しく解説します。

狭窄型

お尻をおさえる

何らかの原因によって肛門が狭くなってしまうことを、肛門狭窄といいます。肛門狭窄の状態で排便をすることで、肛門に過剰な負担がかかってしまうのです。

繰り返し負担がかかることで裂肛の症状が発生しやすくなってしまいます。

脱出型

内痔核や肛門ポリープができると、排便時に脱出してしまうことがあります。その刺激により裂肛してしまうことがあります。

脱出は痛みや出血をともなうことが多いです。そのような症状のある方は、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

組織脆弱型

肛門の組織が弱いと、排便時の圧力により裂肛になってしまう可能性があります。最初は軽い切れ痔だったものが、繰り返しの刺激により慢性化してしまうこともあるのです。

トイレットペーパーによる強い摩擦なども注意しましょう。

症候型

下痢便秘などの症状が原因で裂肛が発症してしまうケースです。下痢や便秘により肛門に慢性的な刺激が加わることが主な原因です。

食生活を含め、まずは下痢や便秘を解消する生活を心がけましょう。

裂肛に起こる合併疾患の例とは?

考えている女医

裂肛になってしまうと、さらに合併疾患を発症する可能性もあるのです。ここでは、それらの疾患について詳しく解説します。

裂肛に起こる合併疾患には、内痔核・肛門ポリープ・外痔核・痔瘻4つがあります。それぞれどのような症状があるのか詳しく見ていきましょう。

内痔核

内痔核とは、肛門の内側1〜2センチの部位にできる痔核のことです。

痔核とは、肛門にできる静脈瘤と考えられています。また、それに加えて肛門の粘膜の下の組織がゆるみ、肛門外に脱出するようになったものも痔核と考えられているのです。

痔核になると、出血・脱出・痛み・腫れなどの症状がでます。

イボ痔という言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。痔核とは、イボ痔のことなのです。

痔核ができるのが不安な方もいるかもしれませんが、痔核の基本的な構造は生まれつきあります。

それが何らかの原因で肥大化してしまうことにより、症状が表面化するのです。人間が2足歩行をするようになったことで、肛門が心臓より低くなり血液がうっ血しやすくなったことも原因といわれています。

その他の原因としては、排便時のいきみ・重い荷物を持つ・筋トレによる腹圧・長時間座る・アルコールや辛いものの過剰摂取・お尻を冷やすなどが挙げられます。

肛門ポリープ

肛門内部の粘膜へ慢性的な刺激が加わることにより、肛門ポリープが発生する可能性があります。そのため、裂肛の症状をお持ちの方は特に注意が必要です。

慢性的な下痢や便秘も原因の一つです。

外痔核

先程内痔核について説明しました。外痔核は、内痔核よりも外側、もしくは肛門の外にできる痔核のことです。

基本的には内痔核と症状は変わりませんが、できる部位によって名称が変わるのです。また、内痔核と外痔核が合併した内外痔核も存在します。

手術が必要となるような痔核は、この内外痔核となっているケースが多く見られます。

痔瘻

痔瘻(じろう)はあな痔という名称でも呼ばれています。痔瘻の原因として、肛門周囲の化膿が挙げられます。

肛門の少し内側にある小さな穴から細菌が入り込むと、肛門周囲が化膿してしまうのです。自然に膿が出たり病院で膿を出したりすることで、管やしこりとなって残ります。しこりとして残ったものが痔瘻です。

炎症を起こしているうちは赤みをともなう腫れや発熱などがあり、炎症が治った痔瘻であれば痛みはなく、分泌物が出る・かゆみなどの症状がでます。

ですが、痔瘻が再び可能してしまうと痛みが発生する可能性もあるので注意が必要です。

切れ痔が起きた時の対処法

笑顔の看護師

普段どおりに生活していたとしても、ふとした時に切れ痔になってしまう可能性はあります。排便時に肛門の痛みや出血を経験したことがある方は、かなり多いのではないでしょうか。

すぐに治れば問題はないのですが、なかなか治らないと不安も募ってしまいます。その切れ痔を放置したことにより、重度の裂肛へと発展してしまう可能性も十分考えられます。

そうなってしまえば、手術が必要となるケースも出てくるのです。そうならないためにも、切れ痔が発生したら放置せずに適切な対処をしましょう。

切れ痔が発生した時の対処法は主に2つあり、薬での治療食生活の見直しです。それぞれについて、詳しく解説します。

まずは薬での治療について説明します。切れ痔の患部に軟膏などの外用薬を塗布することで、痛みや腫れを軽減できます。しかし、根本の原因を解決するわけではなく、薬はあくまで一時的な対処法です。

次に、食生活の見直しについて説明します。切れ痔自体は、自然治癒を待つしかありません。耐え難い痛みを薬で抑えながら、以下で説明する食生活など、根本原因を解決するような生活を心がけましょう。

切れ痔の原因には、排便が大きく関係しています。下痢や便秘が多い方は特に要注意です。

便秘は硬い便により肛門に圧力がかかるのでイメージしやすいですが、下痢が原因と聞いて意外に感じた方もいるのではないでしょうか。

実は下痢も切れ痔の大きな原因なのです。勢いよく出る下痢により、肛門の皮膚を傷つけてしまい、それにより切れ痔が発生します。

消化のよいものを食べたり、腹部を冷やさないようにしたりして、お腹の調子を正常に保つようにしましょう。

初期の切れ痔であれば、下痢や便秘を解消することで症状が改善・治癒する可能性は大きいです。

痛みや出血があれば薬で症状を抑えつつ、正しい食生活で根本原因をなくすように心がけましょう。

切れ痔の受診の目安は?

治療方法を考える

切れ痔の対処法について説明しました。しかし、どの程度の段階で医療機関を受診すればよいか悩む方もいるでしょう。

たしかに軽度の切れ痔であれば経験する方もいるので、放置してしまいたくなるかもしれません。

しかし、もし慢性的な切れ痔により重度の裂肛になってしまえば、手術が必要となるケースも出てきます。そのような事態を避けるためにも、早めに医療機関を受診することが大切です。

本来であれば、切れ痔の症状があった時点で受診することが望ましいです。ですが、忙しくてなかなか時間が取れない方もいるでしょう。そのような方は、まずは本記事の対処法を実施するのも一つの方法です。

ただ、もし繰り返す出血を認める時は、早急に医療機関を受診しましょう。出血が続く場合は、大腸がんの可能性も考えられるためです。

軽い切れ痔だと思っていたものが命を奪う可能性のある病気だったとすれば、それ程恐ろしいことはありません。ほかの病気に関してもいえることですが、早期発見・早期治療が何よりも重要です。

したがって、切れ痔になった際に繰り返す出血があるかどうかについては注意して観察するようにしましょう。

まとめ

親しみやすい看護師

ここまで本記事を読み進めていただいた方であれば、裂肛について深く理解いただけたのではないでしょうか。

軽い切れ痔であれば、多くの方が経験したことがあるかもしれません。しかし、放置して重度の裂肛になれば、治療が必要となります。

そうならないためにも、早期の対処が必要です。また、裂肛になってしまったとしても、本記事の対処法を知っておけば焦らずに対応できるでしょう。

裂肛の治し方について以下にまとめますので、参考にしてください。裂肛の治し方には、5つがあります。

  • 保存療法
  • 内括約筋切離術
  • 裂肛切除術
  • 凍結療法
  • 皮膚移動術

早期に対処することで、手術せずに治癒することも可能です。本記事の内容を、ぜひ役立てていただければ幸いです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

記事をもっと見る

RELATED

PAGE TOP