痔瘻(じろう)とは、肛門の周りに膿が溜まる病気です。痔瘻は自然に治ることはほとんどありません。放置すると、症状が悪化したり、がんになる危険性もあります。本記事では、痔瘻を放置するとどうなるのかについて、以下の点を中心にご紹介します。
- 痔瘻の症状と原因
- 痔瘻を放置した場合どうなるのか
- 痔瘻の治療法
痔瘻を放置するとどうなるのかについて理解するためにも、ご参考いただけると幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
痔瘻について
- 痔瘻はどのような病気ですか?
- 痔瘻は、肛門や直腸の周辺に膿がたまり、その膿が皮膚を通じて排出される状態を指します。
この病気は、肛門周囲膿瘍が悪化し慢性化したもので、膿の通り道である瘻管が形成されることが特徴です。
痔瘻は、30~40代の若い年代に多く見られ、特に男性に多い病気といわれています。また、痔瘻を放置すると悪化し、手術が難しくなる可能性があります。
さらに、長期間放置するとがんになることもあるため、早期の治療が重要です。
痔瘻の症状が見られた場合は、早めに医療機関を受診することが推奨されます。
- 痔瘻の症状を教えてください
- 痔瘻の主な症状には、以下のようなものがあります。
- 痛みと腫れ:肛門の周囲に生じる痛みと腫れは、痔瘻に多い症状の1つです。これは、膿が溜まることによって引き起こされます。
- 発熱:痔瘻は、ときに38~39℃の発熱を伴うことがあります。これは、感染が体全体に影響を及ぼしていることを示しています。
- 膿の排出:膿は、肛門の周囲の皮膚を通じて外に排出されます。膿の性状や量によっては、下着が汚れることもあります。
- しこりの感触:瘻管のみの場合、肛門の周囲にしこりが触れることがあります。また、分泌物が少し出ることもあります。
- 痔瘻の再発:肛門周囲膿瘍が改善した後も、痔瘻自体は治療が必要です。痔瘻は自然治癒することがほとんどなく、手術による瘻管の切除が必要になることが多いといわれています。
- 痔瘻の原因は何ですか?
- 痔瘻の原因は、主に肛門腺の細菌感染によるものです。 肛門腺は、肛門管内の小さな穴で、通常は便が入り込むことはありません。
しかし、下痢などにより便が肛門腺に入り込むと、大腸菌などの細菌が侵入し、感染を起こして化膿します。
これが肛門周囲膿瘍の発生につながり、さらに進行すると痔瘻になります。痔瘻は、肛門周囲膿瘍が慢性化し、肛門の周りに膿が溜まった状態であり、これが悪化すると、皮膚が破れて膿が自然に出ます。
また、医療機関で皮膚を切開し膿を出すことで一時的に改善しますが、その後に膿の通り道である瘻管が残ります。
この瘻管が、痔瘻の主な特徴です。その他の痔瘻の原因としては、肛門陰窩(こうもんいんか)という肛門部分の直腸と皮膚部分の境目にある小さな窪みに、便が入り込むことが挙げられます。
これにより細菌感染が起こり、膿が溜まります。
肛門周囲膿瘍で溜まった膿は、皮膚表面に向かって出口を求めて進み、肛門周囲組織に穴を開け、最終的には皮膚表面に穴を開けて膿を排出します。
排出後もトンネル状の穴が残り、これが痔瘻となります。痔瘻の発生には、下痢になりやすい体質、肛門の緊張が強い状態、糖尿病、免疫力の低下、睡眠不足や過労などのストレスが関連しているとされています。
また、クローン病や炎症性腸疾患などの合併症としても痔瘻が発生することがあります。
痔瘻は放置するとどうなるのか
- 痔瘻を放置した場合、悪化しますか?
- 痔瘻を放置した場合、いくつかの深刻な問題が生じる可能性があります。
以下に主なリスクを挙げます。- 慢性的な痛みと不快感:痔瘻を放置すると、膿を排出する瘻管が形成されるため、痛みや不快感が継続的に生じることがあります。
- 感染の悪化:瘻管が存在すると、細菌が侵入しやすくなり、感染が悪化する可能性があります。これは、さらなる炎症や腫れ、痛みを引き起こす可能性があります。
- 膿の蓄積:瘻管の閉塞によって膿が溜まり、肛門周囲膿瘍を形成することがあります。これは大きな痛みを伴い、ときには切開して膿を排出する必要があります。
- 手術が複雑になる:長期間放置すると、瘻管が複雑になり、手術がより困難になる可能性があります。これは手術のリスクを高め、回復期間を延長させることがあります。
- がん化のリスク:長期間放置した痔瘻は、まれにがん化するリスクがあります。特に、瘻管が長期間存在する場合、悪性変化を起こす可能性が指摘されています。
以上の理由から、痔瘻の症状が見られた場合は、早めに医療機関での診断と治療を受けることが重要です。
自然治癒することはほとんどないため、早期に適切な治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、より良い治療結果を得られます。
- 痔瘻を手術しないとどうなりますか?
- 痔瘻を手術しない場合、以下のようなリスクが考えられます。
- 悪化して瘻管が複雑になる:痔瘻を放置すると、瘻管が枝分かれしたり複雑になったり、深いところに膿がたまったりして、治療が難しくなる可能性があります。これにより、手術がより困難になり、治療に時間がかかる可能性があります。
- 急激に症状が悪化する:痔瘻を放置すると、急に悪臭を伴う大量の血と膿が漏れ出し、下着や衣服が汚れることがあります。また、急に腫れと痛みが襲い、歩けなくなることもあります。
- がん化のリスクがある:長期間放置した痔瘻は、まれにがん化するリスクがあります。痔瘻ががんに発展すると、痔瘻よりもはるかに大変な手術をしなければならなくなり、病状が重篤化する可能性があります。
- 日常生活に悪影響を及ぼす:痔瘻を放置すると、痛みや不快感が継続し、日常生活に支障をきたすことがあります。また、予期せぬタイミングで膿や血が漏れ出ることにより、社会生活にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
痔瘻の治療法
- 膿の量が少ない場合、飲み薬(抗菌薬)で改善しますか?
- 痔瘻の治療において、膿の量が少ない場合には、抗菌薬による治療が選択されることがあります。
この治療法は、痔瘻の症状が軽度で、痛みが小さく、膿の量が少ない場合に適しています。 抗菌薬による治療は、痔瘻の症状を和らげ、感染の拡大を防ぐことを目的としています。しかし、飲み薬による治療は痔瘻の根本的な解決にはならず、症状の一時的な緩和や感染の管理に留まることが多いとされています。
痔瘻は、肛門周囲膿瘍が慢性化し、瘻管が形成された状態であり、この瘻管が残っている限り、痔瘻は自然治癒することはほとんどありません。
したがって、痔瘻の改善には、通常、手術による瘻管の切除が必要です。
- 痔瘻は切開する必要がありますか?
- 痔瘻の治療において、切開が必要かどうかは、痔瘻の状態によって異なります。
膿の量が少ない場合は、上述のように抗菌薬で経過を見ることがあります。
この場合、切開して膿を出す必要はありません。
ただし、抗菌薬は痔瘻の症状を一時的に和らげる治療であり、瘻管が残っている限り、痔瘻が完治するわけではありません。一方、膿が自然に出ていない場合は、皮膚を切開し膿を出す必要があります。
切開する際は、外来で局所麻酔をした上で実施することが多いようですが、痛みが苦手な場合や膿の量が多い場合には、入院し腰椎麻酔下で実施することもあります。
- 痔瘻の手術にかかる時間を教えてください
- 痔瘻の手術にかかる時間は、痔瘻のタイプや状態によって異なります。
通常、痔瘻の手術は数十分から1時間程度で完了することが多いとされていますが、痔瘻が複雑である場合や、痔瘻が広範囲に及ぶ場合は、より長い時間がかかることがあります。
編集部まとめ
ここまで、痔瘻を放置した場合についてお伝えしてきました。 痔瘻を放置するとどうなるかについての要点をまとめると、以下の通りです。
- 痔瘻の症状には、肛門周辺の痛みや腫れ、発熱、膿の排出などがあり、原因は主に肛門腺の細菌感染である
- 痔瘻を放置した場合、慢性的な痛み・不快感、感染の悪化、がん化の可能性などのリスクがある
- 痔瘻は、抗菌薬で様子を見ることもあるが、通常、手術による瘻管の切除が必要である
これらの情報が、少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。