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肛門外科

肛門掻痒症の症状は?定義・原因・治療について解説

肛門掻痒症 症状

肛門周辺のかゆみ「肛門掻痒症」に悩まされた経験のある人は世代や性別を問わずいるのではないでしょうか。肛門部はデリケートでちょっとした刺激でかゆみを感じやすいとされています。

ただし、肛門掻痒症は皮膚自体が悪いのではなく、人工的に作り上げてしまう症状なのです。

本記事では、肛門掻痒症の症状・治療法・ケア方法について解説しますので、ぜひ参考にしてください。

肛門掻痒症(そうようしょう)の定義や症状について

お尻をおさえる女性

肛門掻痒症とはどのような病気ですか?
肛門掻痒症は肛門の周囲がかゆくなる病気です。原因はさまざまですが、肛門の周りがかゆい場合は総じて肛門掻痒症と診断されます。
年齢や性別に関係なく人口のおよそ5%もの人が悩まされている身近な病気なのです。肛門周囲は非常にデリケートで、ほかの部位と比較してもかゆみを感じやすいとされています。
肛門掻痒症の定義について教えてください。
肛門掻痒症は医学的に明確に定義されています。まず、肛門周囲が蕁麻疹のように体の内側から出てきた湿疹ではなく、掻痒感のある状態です。自分で肛門周囲を掻いたり擦ったりすることで、人工的に形成してしまう湿疹を指します。
つまり、皮膚病ではなく明らかに原因となる疾患があるものではありません。あくまで人工的に作り上げてしまう疾患と理解しておきましょう。
原因について教えてください。
肛門掻痒症の原因については患者さんによって異なり、さまざまな要因で発症するといわれています。主な原因は以下のとおりです。

  • 肛門部の不潔
  • 肛門部の過剰衛生
  • 便通異常

特に、肛門部の不清潔な状態が原因となるケースが多くみられます。汚物の拭き取りが不十分な場合に加え、女性の場合は生理用品の不適切な使用による不潔状態も原因の一つです。
一方で、肛門部を洗いすぎたり拭きすぎたりする過剰な衛生が引き起こすケースも少なくありません。近年では、温水洗浄便座つきのトイレが当たり前となりました。温水洗浄便座の長時間の使用や強水圧による肛門への刺激など、不適切な使用が肛門を刺激してしまうのです。
洗いすぎてしまうと、皮膚の表面に存在する皮脂膜が消失し、皮膚のバリア機能が低下します。その結果、肛門掻痒症を引き起こしてしまうのです。また、便秘や下痢などの便通異常によって肛門周囲が刺激を受けることで発症するケースもあります。
さらに内痔核・切れ痔・痔ろうなどの肛門疾患を罹患している人は、病変からの分泌物が付着し肛門掻痒症に繋がるのです。

どのような症状が出るのですか?
肛門掻痒症の症状はその名のとおり、かゆみが主な症状です。初期は肛門周囲の違和感により、ムズムズしたむずがゆさを自覚します。特に、排便後・入浴後・就寝時に感じることが多いです。
さらに症状が進行すると、ひどいかゆみに悩まされ眠れないケースもあります。掻いてしまうことによって、さらにかゆみが引き起こされ悪循環に陥る可能性もあるのです。かゆみが長期間続き掻いてしまうと、擦り傷が発生し水やお湯がしみたり痛みを感じたりします
人によっては下着が当たるだけで痛みを感じてしまうほどです。痛みとかゆみが同時に現れるため、心理的にストレスを感じてしまうでしょう。
肛門掻痒症の皮膚症状について詳しく教えてください。
肛門掻痒症は進行するにつれて皮膚症状も現れます。発症初期は赤みを帯びていることがほとんどですが、かゆみを放置すると肛門の周辺の皮膚が白くなる色素脱失の状態となります。
慢性化するにつれて顕著に白くなってくるのが特徴です。一方で、かゆみに耐えられず掻き続けてしまうと肛門周囲の皮膚が硬くなり色素沈着を起こすケースもあります。この場合は黒っぽくシミのような状態です。
また、掻き傷がびらんのように残ったり、赤切れのように皮膚に亀裂が入ったりする症状もみられます。肛門掻痒症が何年も長引き湿疹が慢性化すると、皮膚が分厚くなり苔癬化(たいせんか)も引き起こします。

肛門掻痒症の治療について

軟膏

肛門掻痒症の治療方法を教えてください。
まずは肛門のケア方法の見直しが重要です。具体的に指導する内容は以下のとおりです。

  • 温水洗浄便座を長時間・強水圧で使わない
  • 拭きすぎない
  • 洗いすぎない
  • 刺激物の摂取を控える(香辛料・アルコールなど)

清潔を保つことは重要ですが、肛門周囲は敏感であり過度にケアする必要はありません。正しいケアと生活習慣が大切です。
また、下痢や便秘など排便異常がある場合もリスクが高まるため、腸内環境を整え規則正しい排便習慣を心がけましょう。また、かゆみを抑えるための抗ヒスタミン薬の軟膏を塗布して治療します。
この際、かゆみが治ったからといって自己判断で治療を中止すると繰り返し症状が現れるケースも少なからずみられます。医師の指示に従って、処方通りに治療を行ってください。かゆみや湿疹がひどい場合にはステロイド外用薬を用いて治療します。
症状を繰り返さないようにステロイドの量を調節しながら治療を進めていくとより効果的です。ただし、かゆみの原因が真菌症であった場合、ステロイド剤の使用は症状を悪化させる恐れがあります。症状や原因に合わせた治療が必要なため自己判断での塗布は避けましょう。

手術が行われるケースもあるのですか?
肛門掻痒症のかゆみに対して手術を選択するケースはほとんどありません。ただし、肛門掻痒症の症状が進行し、肛門周囲の皮膚がびらんや浮腫状となっている人もいます。
その場合、便が付着し拭き取りにくいため、さらなる皮膚炎や湿疹を引き起こしてしまうこともあるのです。皮膚びらんや浮腫状皮膚を局所的に切除するケースもあります。
また、肛門掻痒症と思っていても皮膚癌や肛門癌が原因で症状として湿疹が現れているケースもあるのです。その場合は、手術などの選択肢も含めて原因疾患の治療に取り組む必要があるでしょう。

肛門のケア方法やそのほかのかゆみの原因

トイレットペーパー

肛門の正しいケア方法を教えてください。
まずは排便時の拭き方について解説します。排便後に便が残らないように拭き取ることが重要ですが、強く擦らず優しく拭き取りましょう。
拭き取り回数が多くなる場合は、温水洗浄便座の使用もよいでしょう。ただし、温水洗浄便座の使用にも注意が必要です。長時間の使用や強めの水圧で使用すると、肛門付近の皮膚を保護する粘液が流されてしまいます。
清潔を保とうと排便後に脱脂綿やアルコール綿で拭き取りをする行為も同様に、肛門のバリア機能を低下させてしまっているのです。入浴時に優しく洗う方法がベストですが、石鹸を使いすぎると自浄作用の低下に繋がり、かえってかゆみを増強させます。
肛門周囲を清潔に保ちながら、なるべく刺激を与えないよう心がけましょう。
排便後に注意するべきことはありますか?
排便後は便が残らないよう優しく拭き取ることが大切です。便が肛門周囲に付着した状態が続くと、弱酸性であるべき肛門周囲の皮膚が炎症を起こしてしまうからです。
特に、下痢や軟便など残存しやすい場合は、温水で軽く洗い流して清潔を保ちましょう。何度拭いても便が拭き取れないときは、便が出し切れていない可能性もあります。
無理に拭き取ろうとせず、便をすっきりと出し切ることのできるタイミングで排便するとよいでしょう。拭きすぎず刺激を与えないよう注意が必要です。
肛門掻痒症以外に考えられる肛門のかゆみの原因を教えてください。
肛門掻痒症以外に考えられる肛門のかゆみの原因は以下のとおりです。

  • 皮膚真菌症
  • 尖圭コンジローマ
  • 蟯(ぎょう)虫症
  • 痔疾患
  • かぶれ
  • 皮膚癌・肛門癌

肛門掻痒症以外にも肛門のかゆみを感じる原因はいくつかあります。肛門のかゆみを感じた場合は原因を特定し、適切な治療を行う必要があるのです

編集部まとめ

問診中の医師

肛門のかゆみは羞恥心から肛門科を受診せず、自己判断で市販薬を使用して対処している人もいるのではないでしょうか。

かゆみだけだからと放置していると皮膚症状が現れ、治療が長引く恐れもあります。肛門掻痒症の原因や症状を理解して早めに受診するとつらいかゆみからも早く解放されるでしょう。

日頃から正しい肛門のケアを行い、なるべく負担をかけずに清潔を保つことが重要です。特に、排便時の拭きすぎや肛門周辺の洗いすぎに心当たりのある人は注意しましょう。

肛門掻痒症は繰り返しやすく、悪化するケースもあります。まずは肛門科を受診して、治療と予防を行いましょう。

参考文献

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