最近排便時に肛門周辺の痛みがある・切れてしまう・痒い・出血しているそのような症状があると気になる人も少なくはないかもしれません。
さらに肛門に何かが出ているが、痛みはないなどの無症状のものは気付きにくい場合もあります。
実は、どちらも肛門ポリープといわれる病気かもしれません。
肛門ポリープは、無症状のうちであればそのまま放置していても問題はありません。しかし症状が出てくるとなかなか厄介なものです。
こちらの記事では、そのような肛門ポリープの症状に加えて、原因・検査・治療方法についてもお話ししていきます。
現在、肛門周囲に症状・違和感・悩みがある人はもちろん、今まで、または時折肛門周囲に違和感があるという人もぜひ最後までご覧ください。
肛門ポリープの原因や症状
- 肛門ポリープとはどのような病気ですか?
- 肛門の皮膚と、その先の直腸粘膜との間の歯状線と呼ばれる箇所のうち、細長く突出した部分を肛門乳頭と呼びます。肛門ポリープは、この肛門乳頭が炎症を起こしたり、硬く肥厚・肥大してしまったりするもののことをいいます。
体外へ出ているもののイメージが強いですが、肛門ポリープは体内外どちらにもみられ、症状もさまざまです。実は肛門周囲の疾患としてはあまり珍しいものではなく、症状を訴える45%の割合の人が肛門ポリープで、女性にやや多くみられます。
通常の肛門ポリープの大きさは2〜5mm程度の大きさで、それよりも大きい2cm程度になってくるものはあまりみられません。基本的にそのまま放置していて問題ありませんが、大きくなってくると別の疾患が疑われたり、またはほかの疾患の原因となったりすることも考えられます。
- 肛門ポリープの原因について教えてください。
- 肛門ポリープは歯状線の肛門乳頭が繰り返し強い刺激を受けることや、長時間に渡る座位によるうっ血、慢性的な裂肛(切れ痔)・痔核・痔ろうに、外傷・感染による炎症などをきっかけとして起こりやすいといわれています。
強い刺激には、排便時にかかる圧も含まれます。そのため下痢や便秘による肛門部への刺激・摩擦も要因です。これらの原因で肥厚・肥大した箇所が、さらに大きくなり丸く膨らんでポリープ状になるため、肛門ポリープと呼ばれます。
- どのような症状が出るのですか?
- 主な症状としては、肛門部分とその周囲の違和感・痒み・痛み・出血などを訴える人が多く見受けられます。しかしなかには体外に出ていても症状がほとんどないというような人もいます。
肛門ポリープが大きくなると肛門部分を圧迫するようになりますが、圧迫する部分には便意を催す神経が分布しているのです。神経部分を圧迫してしまうと常に便意を感じている状態となり、便の通りも阻害するため便秘を誘発、または悪化させる要因にもなってしまいます。
- 肛門ポリープになりやすいのはどのような人ですか?
- 肛門部分への強い刺激やうっ血が主な原因となりますので、日常的にそれらを頻繁に行う生活を送っている人がなりやすい人といえるでしょう。肛門部分への強い刺激では、強い摩擦も含まれますので、下痢や便秘の人もなりやすい可能性は高くなります。
また肛門ポリープは裂肛が慢性化すると、それが要因となり裂肛の奥にできることもあります。裂肛も主に便秘などによる肛門周囲への強い刺激・損傷などが要因で起こる病気です。その点を踏まえても、やはり排泄コントロールに問題がある人が肛門ポリープになりやすいと考えます。
肛門ポリープの検査や治療
- 肛門ポリープが疑われる場合どのような検査が行われますか?
- 主に行われている検査は問診や肛門鏡ですが、深部の病変が疑われる場合など、必要に応じて大腸内視鏡検査も行われます。問診では現在の症状に加えて、生活習慣・排便状況・排便時の痛み・出血の有無も確認します。
肛門鏡は肛門ポリープの大きさや形状に加えて、裂肛の有無・程度を確認するためのものです。大腸内視鏡検査はより深部の検査が可能になりますので、詳細なポリープの状態把握や大腸病変との判別のためにも実施されることがあります。
- 治療方法について教えてください。
- 症状のある肛門ポリープの場合は外科処置で切除しますが、深い裂肛・痔核・痔ろうなどほかの症状が併発している場合は、まずそちらの根治治療を優先して行います。
これは外科処置に加えて、発症する原因となった生活習慣への指導などです。しかし症状がない、または深刻ではない肛門ポリープのみの場合は、まずは保存的療法を提案することが多いです。保存的療法としては以下を提案します。- 肛門部のうっ血を防ぐ(排便時は息まず、長時間の座位姿勢は避ける)
- 強い刺激を与えない(座浴や入浴などで優しく洗浄する)
- バランスのよい食事をとる(便秘や下痢を起こさないような食生活)
- 肛門部の衛生面を保つ(皮膚の水潤を維持する)
また肛門ポリープができてしまった原因として、生活習慣や精神と体の健康状態も要因であるといわれていますので、そちらに関しても医師が聴取し改善案を提案していきます。保存的療法は、外科的治療を行った後も継続することが必要です。
手術で肛門部を治療し改善したとしても、前述した保存的療法の内容が不十分であれば、容易に再発するリスクが高まります。肛門疾患は、生活習慣病としてとらえることも大切であるとされています。
- 肛門ポリープの手術はどのように行うのですか?
- 肛門ポリープ単独の場合は局所麻酔下で切除術を行い、通常は日帰りでできる簡単なものです。しかしもし肛門ポリープのみで症状がない場合は、前述したように手術ではなく、まずは保存的療法を提案することもあるでしょう。
例えばそのほかの症状、慢性裂肛や痔核などをともなっている場合は、それらに対する根治的な治療が必要です。側方内肛門括約筋切開術という筋肉の一部を切開し、狭くなっている肛門を拡げるものや、裂肛そのものを切り取る切除術などを行います。
そのように併発している箇所に対しての手術も行った場合は、再出血する場合もありますので、入院期間が4〜7日になる場合もあります。
肛門ポリープの注意点
- 肛門ポリープはがん化することはありますか?
- 2〜5cm程度の肛門ポリープはがん化しません。肛門ポリープとよく間違われやすい疾患に大腸ポリープがありますが、この大腸ポリープは成長するとがん化するリスクが高まるといわれています。
どちらも肛門周囲に症状が出るために自身では判別しづらく、症状がひどくなっている・大きくなっていると感じた際は、肛門科の専門の医師の下で詳細な診察を受けてください。
- 肛門ポリープを放置するとどうなりますか?
- 基本的に小さいものや、症状がほとんどない段階のものは放置していても問題ありません。しかし肛門外に脱出しており痛みが頻繁にある・血が出るなどの気になる症状がある場合は、何らかの処置が必要となります。
病悩期間が長くなると日常生活にも影響を及ぼしますし、原因解明にも時間がかかる場合がありますので、できる期間をあけずに専門の医師に相談してください。また症状が特にない状態でも、どんどん大きくなっていると感じた際は別の疾患の可能性が疑われます。
悪性疾患の疑いや、大きくなり腸管が塞がれることで起こる腸閉塞など、別の疾患の要因となる場合もあるでしょう。重ねて肛門科の専門の医師の診察を受けることをおすすめします。
- 手術後の日常生活での注意点を教えてください。
- 肛門部分をうっ血させない・強い刺激を与えない・食生活を整える・衛生面を保つ、以上に注意してください。前述した保存的療法の内容と同様になります。
例えば長時間の座位姿勢は、術部周囲をうっ血させてしまうことになり、術部の治癒に影響を与えてしまいます。次に術部周辺への強い刺激を与えないこと、つまり便秘や下痢を防ぐことです。規則正しい食事・睡眠・適度な繊維質の摂取などの生活習慣にも気を配ることが大切になります。
そして感染にも留意してください。術後は特に、創部の衛生面を保つことも重要です。紙などで肛門を強く拭くことは避け、座浴や入浴などで優しく洗浄を行うことが推奨されています。また乾燥などを防ぐため、軟膏の塗布もよいでしょう。
編集部まとめ
肛門ポリープに関して詳しくお話ししましたがいかがでしたか。
肛門ポリープは肛門周囲に発症する病気のなかでは割合が多く、女性に多くみられるものの、男性にも起こり得ます。いわば生活習慣や健康状態によって、どなたでも発症する病気なのです。
症状がないときではそれほど気にすることもないようですが、痛み・出血・痒みが見られるようになってきた、ポリープ自体が大きくなってきたなどの症状が現れ始めたら要注意です。新たな体の不調を引き起こす引き金にもなり得ますし、ほかの病気だったという可能性も否めません。
症状が軽い場合であれば保存的療法などさまざまな治療法もありますので、少しでも不安がある際はぜひ肛門科の専門の医師に相談してみてください。
参考文献