新着記事

注目のトピック

肛門外科

痔瘻は再発する?再発する原因と治療法について解説!

痔瘻は再発する?再発する原因と治療法について解説!

お尻に痛みを感じると「病院に行くのはハードルが高いし、市販薬でどうにか治せないかな」と思う人もいるのではないでしょうか? 痔にもいろいろと種類があり、セルフケアで症状が改善できるものから、手術が必要なものまでさまざまです。ここでは、痔のなかでも1番厄介といわれる「痔瘻(じろう)」の原因や症状、種類、再発の可能性に焦点を当ててご紹介します。再発しにくい治療法も、ぜひ参考にしてください。

痔瘻(あな痔)とは

痔瘻(あな痔)とは 痔瘻は、お尻に膿のトンネル(瘻管:ろうかん)ができて化膿を繰り返す病気です。直腸と肛門周囲の皮膚を直結する部分に瘻管ができてしまうもので、痔瘻の原因となる穴を原発口、感染を持続させるもととなる部位を原発巣、皮膚開口部を二次口と呼びます。一般的にイメージする切れ痔(裂肛)やいぼ痔(内痔核、外痔核)とは、発生する仕組みが異なるのです。ここでは、痔瘻の原因や症状について詳しく解説します。

痔瘻の原因

痔瘻はお尻に瘻管ができてしまう病気ですが、瘻管ができるには原因があります。肛門周囲膿瘍が慢性化することがきっかけで瘻管ができ、症状が悪化し、瘻管が伸びて痔瘻の発症につながるのです。 痔瘻の前段階である肛門周囲膿瘍は、直腸と肛門の境目にある肛門陰窩(こうもんいんか)というくぼみに細菌が入って発症します。下痢や疲れなどで免疫力が低下したときに肛門腺で炎症が起こり、肛門周囲が化膿してしまいます。細菌は、大腸の常在菌が原因となることがほとんどです。
また、化膿を繰り返すと、瘻管が途中でアリの巣のように枝分かれをして進行します。これを10年以上など長い期間放置すると、痔瘻癌になるリスクが高まります。そのため、痔瘻になったら自己判断せず、専門の医師の診察を受けることが必要です。

痔瘻の症状

瘻管に膿がたまることで肛門周囲が赤く腫れ上がり、日常生活を送れないほどのズキズキとした、拍動性の激しい痛みが生じ伴います。排便に関係なく肛門から膿や分泌物が出るため、下着の汚れなどは重要な手がかりになります。また、悪化すると全身症状の悪化につながり、38℃以上の発熱や敗血症、ショック症状を引き起こすため、一刻も早い治療が必要です。 肛門周囲膿瘍は、破裂して膿が出ることで痛みは一時的に治ります。しかし、膿の出口が塞がればまた膿がたまるため、痛みが再発するのです。再発を防ぐためにも、痔瘻の種類に合わせた適切な治療を受ける必要があります。

痔瘻の種類

痔瘻の種類は、瘻管の伸び方によって大きく4つに分けられます。

Ⅰ型痔瘻

瘻管が肛門上皮、または皮下にあり、肛門括約筋を貫いていないのが特徴です。発生頻度が低い痔瘻で、皮下痔瘻や粘膜下痔瘻とも呼ばれます。裂肛の裂け目に便がつまることで発症し、病巣が肛門腺にないことがほとんどです。

Ⅱ型痔瘻

最も発生率の高い痔瘻で、その割合は全体の約70%です。瘻管が1本の場合は単純型、2本以上の場合は複雑型といいます。瘻管の深さによって種類が分かれており、歯状線より下に発生するものを低位筋間痔瘻、上に発生するものを高位筋間痔瘻と呼びます。

低位筋間痔瘻は、瘻管が内肛門括約筋と外肛門括約筋の間を、下に向かって伸びる種類の痔瘻です。Ⅱ型痔瘻の多くの人に発症するのがこのタイプです。瘻管が伸びる方向によって治療法が異なり、後方へ向かっている場合は切開開放術、前方または側方へ向かっている場合は括約筋温存手術やシートン法が推奨されます。

高位筋間痔瘻は、瘻管が内肛門括約筋と外肛門括約筋の間を上に向かって伸びます。排膿する出口がないため発見しづらく、括約筋温存手術がメジャーな治療法です。

Ⅲ型痔瘻

肛門括約筋の奥にある肛門挙筋より下に瘻管が発生し、坐骨直腸窩痔瘻とも呼ばれます。全体の約20%を占め、発症する人のほとんどが男性です。肛門の背中側にある原発口に便が入り込み、原発巣が深く大きい特徴があります。これは、内肛門括約筋と外肛門括約筋、坐骨直腸筋の間が広いためです。治療法は、括約筋温存手術に似た肛門保護手術が推奨されます。

Ⅳ型痔瘻

骨盤直腸窩痔瘻とも呼ばれる、まれなタイプの痔瘻です。瘻管が肛門拳筋を貫いて上に伸び、治療が非常に難しく、人工肛門になるケースもあります

痔瘻(あな痔)になりやすい人の特徴

痔瘻は男性の方が発症しやすく、女性の2~5倍といわれています。特に30~40代の男性に多く、暴飲暴食などで下痢をしやすいことが要因と考えられています。また、腸が弱く下痢になりやすい人は肛門陰窩に細菌が入りやすいため、発症しやすくなります。ストレスが多い、アルコールやタバコの摂取量が多い、糖尿病、肛門括約筋が緊張しているといった人も、痔瘻を発症しやすい傾向です。

また、他の病気と合併して発症することもあります。裂肛やクローン病、結核、HIV感染、膿皮症などがあてはまります。

痔瘻(あな痔)の再発可能性について

痔瘻(あな痔)の再発可能性について 痔瘻(あな痔)は再発する可能性の高い疾患です。その理由を解説します。

そもそも根治のための治療をしていなかった

痔瘻の治療では、手術をする必要があります薬での治療では根治できないのです。痔瘻の前段階である肛門周囲膿瘍では、腫れている部分をメスで切開し膿を出すことで、腫れが引いて熱や痛みが治ります。その後、抗生物質を服用し瘻管ができるのを予防します。しかし、これでは不規則な生活やストレスで肛門周囲膿瘍が再発しやすく、最終的に痔瘻に進行してしまうのです。

根治手術を受けても再発することがある

手術後に再発してしまう原因は、いくつかあります。

原発口の処置が不十分

原発口とは、痔瘻の原因になっている肛門皮膚と直腸粘膜の境目の小さな穴のことです。手術の際は、原発口を正確に特定することがとても重要になります。しかし、原発口は周りに紛らわしいへこみがあるケースも多いため、熟練の医師でも難しい処置になるのです。原発口に便が入らないようにきちんと処置しない限り、再発を繰り返してしまいます。

くり抜き手術の再開通

くり抜き手術(括約筋温存手術)で縫合した原発口が、再び開いてしまうことがあります。これにはさまざまな要因があり、医師の技術や患者自身の体力や治癒力、便通の状態などが関係しています。くり抜き手術は、手術による肛門括約筋のダメージが少ないため肛門機能の温存には適していますが、再び原発口が開いてしまうリスクもあるのです。

深層に空洞が残っている

切開開放術で起こりうる、皮膚の表層のみ癒合して深層に空洞が残ってしまうケースです。皮膚の下にはトンネルが残っているため、完治が難しくなります。

枝からの再発

痔瘻は、枝分かれするという特徴があります。その場合、一般的には主要な枝だけしっかり処置しておけば、小さな枝から再発することはほとんどありません。しかし、痔瘻の初期である肛門周囲膿瘍を処置しなかった場合、残った枝から再発するケースもあるのです。

痔瘻以外の病気を疑う

手術した痔瘻が完治していても、新たな場所に痔瘻ができてしまうこともあります。決してまれなことではありません。 また、痔瘻が進行すると痔瘻癌になる確率が高くなります。痔瘻癌の初期は、普通の痔瘻と全く見分けが付かないため、診察だけでは痔瘻癌の早期発見は困難です。発見されるのは、コロイド状で特徴的な分泌物が出ているケースが多くなります。 血便の症状が出る病気は他にもあり、大腸癌や潰瘍性大腸炎との区別もしなければなりません。血便なのか肛門からの出血なのかは素人では判断が難しいため、専門医の診察と適切な検査を受ける必要があるでしょう。

痔瘻(あな痔)が再発したら

痔瘻(あな痔)が再発したら 再発した痔瘻には、適切なアプローチが重要です。再発時には、患者自身のセルフケアだけでは改善が難しく、専門的な治療が求められます。ここでは、再発してしまったときの対応方法をご紹介します。

セルフケアでの改善は見込めない

痔瘻は、自然治癒が難しく、セルフケアでの改善も見込めません。初発と同じように、確実に手術が必要になります。しかし、再発しにくくすることは可能です。裂肛による細菌感染を防ぐため、下痢や便秘になりにくい食生活にしたり、生活習慣を改善したりして再発の原因となる肛門周囲膿瘍を予防しましょう。

専門医による診察を受ける

痔瘻は、初期の段階では的確に診断するのは医師でも難しい病気です。そのため、手術をせず保存療法で治療したとしても、症状の原因が初期の痔瘻だった場合は再発につながります。気になる症状がある場合は、肛門科や肛門外科で定期的に専門の医師の診察を受けることが必要です。

痔瘻(あな痔)の治療方法

痔瘻(あな痔)の治療方法 痔瘻まで進行してしまう前の肛門周囲膿瘍では、切開排膿をおこないます。一刻も早く肛門周囲の皮膚、あるいは直腸肛門内の粘膜を切開し、たまった膿を出すのです。その後、抗生物質と鎮痛剤を服用して症状を沈静化させます。 しかし、瘻管が残り痔瘻になってしまった場合は、手術が根治のための一番確実な方法です。痔瘻患者のおよそ4割が手術適応となり、原因となっている原発口をきちんと処理する必要があります。痔瘻は種類によって治療法が異なるため、それぞれの治療法やメリット、デメリットについて理解することが大切です。

瘻管切開開放術

瘻管切開開放術は、瘻管を切開してそのまま縫合せずに開放する治療法です。別名lay open法と呼ばれ、瘻管を切り開いて膿の入り口である原発口から二次口まですべて切除します。切除された部分は、肉が自然に下から盛り上がって治っていきます。肛門の後方部であれば、括約筋を切除しても肛門の機能にはほとんど影響しません。医療機関によりますが、3日程度の入院期間で治療が可能です。

瘻管切開開放術は、最も確実に治る治療です。さらに、完治するまでが早く、再発がほとんどないというメリットがあります。デメリットは、手術後の痛みを伴うこと、肛門括約筋が大きく傷つく可能性があることです。括約筋を切ってしまうため、瘻管の通る位置や深さによっては、括約筋の機能に影響を及ぼします。これによって肛門の締まりが悪くなり、便漏れが起こってしまうリスクもあるのです。

括約筋温存手術

括約筋温存手術は、瘻管をトンネル状にくり抜き、原発口や二次口、膿のもとだけを切除する手術です。患部を取った傷口は、手術後溶けてしまう特殊な糸で縫うものです。そのため、くり抜き手術やくり抜き法ともいいます。 メリットは、切る部分が少ないため、少ない痛みで治療を受けられることです。術後の経過が良ければ、完治までの期間も短くなります。肛門括約筋への影響が少ないため、手術後の肛門の機能障害の可能性も低く、瘻管が深い位置を通るような複雑なタイプの痔瘻には効果的です。

また、瘻管の位置が浅く、肛門の側方や前方を走っている場合もこの手術が適応となります。デメリットは、便の通り道の手術になるため、傷口を縫った部分が開いてしまい手術部分が化膿しやすいことです。これは痔瘻が再発する最も多い原因になり、再手術が必要になります。括約筋温存手術を受ける場合の入院期間は、3~5日程度が一般的です。

シートン法

シートン法は、瘻管の原発口から二次口へゴム糸を通して縛り、少しずつ瘻管を切開して開放する治療です。メリットは痛みをほとんど感じず、確実に治ることです。比較的簡単な治療法で、日帰りでおこなえる病院もあります。ひもを少しずつ締めていき徐々に治すため、肛門の変形が少ない治療が受けられます。治った後の肛門が硬くならないため、スポーツや激しい運動などの制限がなく、今まで通りの生活を続けられるのです。 しかし、ゴム糸の締め直しや入れ替えなど、完治するまで長いケースでは5年以上の外来通院が必要になります。肛門にゴムなどの異物を長期間着けたまま生活するため、治療期間中の違和感はデメリットになるでしょう。

まとめ

まとめ 痔瘻は、手術しか治療方法のない病気です。発症すると薬やセルフケアでの改善は見込めず、症状を放置すると悪化するだけではなく、癌化してしまう可能性もあります。気になる症状がある場合は、すみやかに専門の医療機関を受診し、早期に適切な治療を受けることが必要です。また、根治しても再発するケースもあるため、痔瘻になったことのある人は特に症状の変化に気を付けておきましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

記事をもっと見る

RELATED

PAGE TOP