新着記事

注目のトピック

肛門外科

いぼ痔のような硬いしこりができて痛い!そんな時の対処法や病院に行く目安などについて解説

いぼ痔のような硬いしこりができて痛い!そんな時の対処法や病院に行く目安などについて解説

お尻にしこりや腫れを感じても、まわりの人に相談したり、すぐに医療機関を受診したりする人は少ないのではないでしょうか。それは、お尻というデリケートな場所にできた症状であることが原因かと思います。しかし、お尻の症状には放っておくと悪化したり慢性化したりしてしまうものもあります。どのような病気が原因として考えられ、どういった治療が必要になるのかを知ることで、医療機関へ行く際の目安としていただければと思います。

痔のような硬いしこりが痛い時に考えられる病気

痔のような硬いしこりが痛い時に考えられる病気 まずは、お尻に痔ような硬いしこりができた場合の、考えられる病気についてご説明します。

毛嚢炎(もうのうえん)

しこりの原因として考えられる病気の一つが、毛嚢炎です。毛嚢炎は、毛包炎とも呼ばれる皮膚感染症です。毛穴から細菌が入り込むことで起こり、赤い丘疹や痛みなどを伴います。お尻だけにできるわけではなく、毛が生えている箇所であればどこにでもできる可能性があるため、うなじや陰部周辺にも発症することがあります。また、毛嚢炎が悪化して痛みや腫れなどがひどくなった状態を「せつ」と呼びます。せつになると、できもの部分が膿を伴った「皮膚膿瘍」と呼ばれる状態になることがあり、ズキズキとした痛みを伴います。さらに、炎症が広がると「よう」と呼ばれる状態になります。この状態では、患部だけでなく、倦怠感や発熱といった全体症状を伴うことがあります。

臀部膿皮症

毛嚢炎と同様に、細菌感染が原因でお尻にしこりを形成する病気として臀部膿皮症があります。臀部膿皮症は、お尻や太ももの付け根の汗腺が黄色ブドウ球菌などに感染し、腫れやかゆみ、痛みを起こす病気です。感染により、皮膚が硬くしこりのようになり、膿も伴います。症状が長引いたり、再発を繰り返したりすることも多く、患部が跡になったり、しこりが残ってしまったりすることも多々あります。また、がん化する場合もあるため注意が必要です。治療は、主に外科手術によるしこりの切除となっており、そのほかには注射による治療も出てきています。

炎症性粉瘤

粉瘤は垢や皮脂などの老廃物が皮膚の下にたまってできもののようになる病気であり、それが炎症を伴っている場合を「炎症性粉瘤」と呼びます。粉瘤の状態であれば、皮膚が盛り上がってしこりのようになってはいるものの、痛みや腫れなどは特にありません。しかし、炎症性粉瘤となると強い痛みや腫れが生じます。できやすい場所としては首や背中、股関節、お尻などがあり、細菌感染や異物反応などが原因として考えられています。粉瘤自体は良性の腫瘍ですが、炎症性粉瘤は悪化すると合併症を引き起こしたり、悪性化したりする恐れもあるため注意が必要です。治療としては、抗生剤の内服・切開による排膿処置・手術による摘出処置が行われます。

脂肪腫

脂肪腫は、背中やお尻、腕などにできる脂肪のかたまりです。原因ははっきりしておらず、数mmから10cm程度までと大きさにも幅があります。痛みや腫れといった症状は基本的にありませんが、お尻などにできた場合は座り姿勢での圧迫などが原因で痛みや出血を伴うことがあります。また、しこりが大きくなると夏場など薄着の季節は服の上からでもわかるようになります。良性の腫瘍のため放置していても身体に影響が出ることはありませんが、ほかの病気の可能性もあるため自己判断するのではなく医師の診察を受けることが大切です。治療をする場合は、局所麻酔を用いた外科手術で除去するのが一般的です。

臀部肉腫

臀部肉腫は、お尻の皮下脂肪や筋肉などに発症するがんです。脂肪肉腫や平滑筋肉腫といった種類があり、触るとしこりを感じられます。早期の段階では痛みを伴うことはありませんが、しこりに気づいた段階で医師の診察を受け、適切な治療を受けることが大切です。

いぼ痔

「お尻にしこりやできものがある」と聞いて、多くの方が思い浮かべるのがいぼ痔ではないでしょうか。いぼ痔は痔核とも呼ばれる肛門疾患であり、肛門の内側にできる内痔核と、肛門の外側にできる外痔核の2種類があります。原因としては、排便時のいきみすぎや座りっぱなし、便秘などがあり、これらによって肛門周辺の血流が滞りうっ血が生じることで発症します。内痔核の場合は、痛みはほとんどなく、排便時の出血やイボの脱出が主な症状です。外痔核の場合は、激しい痛みを伴います。治療は、軟膏や座薬といった薬の処方を中心に、状態に応じて結紮切除術やジオン注射(ALTA療法)などの外科的処置が選択されます。

痔のような硬いしこりが痛い原因

痔のような硬いしこりが痛い原因 お尻にしこりができる病気について前述しましたが、そのような症状が生じる背景には生活習慣が関わっている場合があります。しこりなどのできものを予防・再発防止するために、日常で見落としがちな習慣にも気を配りましょう。

便通の異常

まずは、肛門疾患の原因の代表格である、便通異常についてです。便秘や下痢といった便通異常は、肛門まわりの炎症やいきみによるうっ血を引き起こしやすく、いぼ痔や痔ろうといった痔疾患の原因となります。また、肛門まわりが膿を持ってしまう「肛門周囲膿瘍」も、便通異常が原因となることがあります。便秘がちの方やおなかが弱い方の場合、体質だからと慣れてしまっている方も多いかもしれませんが、別の病気の原因になることもあるため、乳製品や食物繊維、野菜などをバランスよく摂取して便通改善を心がけましょう。

汗で蒸れる

また、毛嚢炎や肛門周囲膿瘍といった病気は、お尻が汗で蒸れて清潔な状態を保てていない場合によく起こります。下着は綿やシルクなどの通気性が良い素材を選ぶ、座りっぱなしを避ける、夏場などはこまめに着替えやシャワーを行うといった、汗で蒸れた状態を長引かせない生活を心がけてください。特にデスクワークや運転している時間が長い方は、座りっぱなしを避けるために、適度に立ったり休憩したりすることが大切です。

痔のような硬いしこりが痛い時の痛みを和らげる方法

痔のような硬いしこりが痛い時の痛みを和らげる方法 ここまで、お尻にしこりができた場合の考えられる病気や原因について説明してきました。では、そのしこりが痛みを伴っている場合は、どのような対処法があるのでしょうか。ここからは、応急処置方法や治療方法についてご説明します。まずは、応急処置方法についてです。

肛門を温める

いぼ痔などが原因の場合に効果的なのが、肛門を温めることです。血流の滞りが原因でできた内痔核や外痔核の場合、肛門付近を温めて血行をよくすることで痛みが和らぎます。温め方としては、ゆっくりお風呂に入る、ホットタオルや使い捨てカイロを使う、座浴をするといった方法があります。ただし、痔ろうや肛門周囲膿瘍の場合は、温めることで痛みが悪化してしまう可能性がありますので注意しましょう。これらの場合は、患部を冷やすことで痛みの緩和が期待できます。

OTC医薬品などの市販薬を使う

しこりや腫れ、痛みといったお尻の症状が気になった場合、まずは市販薬で様子を見てみてもいいかと思います。市販の薬には、軟膏・注入軟膏・座薬・飲み薬などの種類があり、それぞれに得意とする症状があります。例えば飲み薬の場合は、便秘を改善する作用や、腫れを抑える作用などがあり、身体の中から症状の緩和を促せます。軟膏や注入軟膏、座薬などは、患部に直接塗るタイプの薬であり、より早く症状を抑えたいと考えている方に向いています。医師や薬剤師による処方を受けずとも購入が可能なOTC医薬品であれば、薬を買う際の抵抗感も少し薄れるかと思います。

痔のような症状が痛い時に病院へ行く目安

痔のような症状が痛い時に病院へ行く目安 「肛門を温める」「市販薬を使う」といった応急処置では痛みが引かない場合は、なるべく早く医師の診察を受けましょう。デリケートな部位のため受診をためらってしまうかもしれませんが、症状を長引かせないためには早めに対処することが大切です。では、具体的にはどのような症状がある場合に医療機関へ足を運ぶべきなのでしょうか。

痛みの程度が大きい

強い痛みがある場合には早期の受診をおすすめします。触ってもいないのに痛みがある、ズキズキとした痛みがあり眠れない、痛みが強くて座ることができないなど、生活に支障が出ている場合は早めに受診してください。もちろん、「触ったら少し痛みがある」程度だとしても、可能であれば医師の診察を受けておくことが大切です。

膿が出る

また、しこりから「膿」が出ている場合も、受診すべきタイミングです。その膿の原因が肛門周囲膿瘍や痔ろうの場合、市販薬やセルフケアでは直すことができません。また、臀部膿皮症であった場合はがん化する恐れもありますし、炎症性粉瘤が悪化していた場合は発熱が生じたり、皮膚の壊死につながったりする場合もあります。膿が出ている状態では、下着や衣服が汚れるなど日常生活にも支障が出ますので、早めに医師による適切な処置を受けることをおすすめします。

熱っぽさがある

しこりを触ると熱っぽさを感じる場合も、医師の診察を受けたほうが良いでしょう。炎症を伴っている状態ですので、衣服による摩擦でさらに炎症が悪化したり、何かに触れて皮膚が破け膿が出てきたりといったことが考えられます。応急処置として保冷材などを使って冷やすのもいいですが、あくまで一時的な処置と考えましょう。

しこりが徐々に大きくなっている

しこりが徐々に大きくなっている場合も、様子を見るのではなく診療を受けましょう。例えばそのしこりが内痔核の場合、しこりが小さいうちは服薬や生活習慣改善などの保存的治療で治療が可能です。しかし、大きくなって肛門の外に飛び出している状態になると、外科的処置が必要になることがあります。また、炎症性粉瘤の場合、しこりが大きく腫れるにしたがって手術の負担は大きくなりますし、腫れを抑える処置と粉瘤を取り除く処置の両方が必要になって通院回数が増えるなど、負担も大きくなります。

痔のような硬いしこりができた時の治療方法

痔のような硬いしこりができた時の治療方法 最後に、痔のような硬いしこりができた場合の治療方法についてご説明します。受診に際し緊張や不安を感じる方も多いかと思いますので、治療の全体像を把握しておくことで少しでもリラックスして治療に臨んでいただければと思います。

何科に行くべきか

お尻にしこりのようなできものができた場合や、お尻に痛みや腫れがある場合は、肛門外科に行きましょう。その名の通り、肛門疾患を専門としている診療科のため、より正しく症状を見極め、治療法を提案してもらうことが可能です。もし、近くにすぐ行ける肛門外科がないという場合には消化器外科や泌尿器科、またはかかりつけの皮膚科や内科などで一度相談するのもおすすめです。そのクリニックで治療が可能な場合はそのまま治療を受け、治療に対応していない場合には専門のクリニックを紹介してもらえるでしょう。

いぼ痔(内痔・外痔)の場合

内痔核や外痔核といったいぼ痔の場合、症状が重くなければ保存的治療で経過を観察するのが一般的です。外用薬の処方とともに、食事や運動などの生活習慣指導が行われます。生活習慣を改善する際に大事なのは、便通を整えることです。そのために、日々の食事や排便のリズム、運動量や仕事内容などの問診が行われます。その結果をもとに、摂ったほうが良い食材や食事の時間、取り入れやすい運動のアドバイスなどが行われるでしょう。ストレスが大きいと症状が悪化することがあるため、ストレス発散についてのアドバイスが行われることもあります。

臀部膿皮症の場合

臀部膿皮症の治療では、外科的切除が行われるのが一般的です。基本は入院による治療となり、治癒までには長い時間がかかります。また、切除範囲が大きい場合には皮膚移植をする場合もあります。

​​炎症性粉瘤の場合

炎症性粉瘤は、抗生剤の投与と切開排膿、粉瘤の摘出手術を行うことで改善を促します。切開排膿のみでも炎症は治まりますが、粉瘤の袋状の組織が残ったままだと再発する恐れがあるため、切開排膿をして炎症が治まった後に、粉瘤の摘出手術を行うという流れが一般的です。多くのクリニックで、日帰りでこれらの手術が行われています。

まとめ

まとめ お尻にしこりがある、痔のようなできものができて痛いという場合の原因や治療法について解説しましたが参考になったでしょうか。痔の場合でも、ほかの病気の場合でも、悪化すると手術の恐れがあり、早めの対策が肝心だということがわかっていただけたかと思います。しこりが症状として現れる病気の中には、入院が必要なものもありますので、お尻を清潔に保つなど生活を整えて予防するとともに、なってしまった場合には早めの受診を心がけましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

記事をもっと見る

RELATED

PAGE TOP