痔核でお悩みの方の中には、「少し症状が良くなったと思ってもまたひどくなる」「何度も同じような場所にいぼができる」といった方も多いのではないでしょうか?痔は、便秘や下痢、血流の悪さなど生活習慣が原因となる場合も多いため、同じような生活を続けていれば再発や慢性化してしまうリスクがあります。そこで今回は、痔核を根本から治療する「根治術」について解説します。痔核についてよく知り、健康なお尻を保てるようになりましょう。
痔核(いぼ痔)とは
まずは、痔核(いぼ痔)とはどのような病気で、何が原因でできるのかを解説します。
- 痔核(いぼ痔)の種類について教えてください。
- 痔核は、内痔核と外痔核の2つに分けられています。肛門の中にある「歯状線」と呼ばれる箇所の内側にできるのが内痔核であり、周辺に痛みを感じる神経が通っていないため、いぼができても痛みを感じにくいという特徴があります。ただ、内痔核が悪化していぼが肛門の外に脱出すると、強い痛みを感じるようになります。その他の症状としては、排便時の出血が代表的です。外痔核は、歯状線よりも外側にいぼができる痔のことであり、知覚神経が通っている場所のため痛みを伴います。特に、炎症を起こして血栓ができると激しい痛みを伴うという特徴があります。
- 痔核(いぼ痔)ができる原因は何ですか?
- 内痔核や外痔核は、肛門の静脈叢が何らかの原因によってうっ血してしまった状態です。はっきりとした原因はわかっていませんが、うっ血とは静脈内に余分な血液がたまった状態を指すため、血液の流れを滞らせる行動が、痔核の発生につながっていると考えられています。具体的には、排便時の強いいきみや、長時間のいきみ、座りっぱなしによるお尻への負担、身体の冷えなどがうっ血のリスクになります。また、香辛料やアルコールのとりすぎ、妊娠や出産などもいぼ痔の原因になります。
痔核根治術(結紮切除術)について
痔核の治療法として広く行われているのが、結紮切除術です。幅広い症状に対応可能であり、根治性が高い方法のため、「痔核根治術」と呼ばれることもあります。
- 痔核根治術(結紮切除術)の流れについて教えてください。
- 結紮切除術では、まず痔核となっている部分の皮膚を、肛門まわりの筋肉を傷つけないように切開します。その後、外側から少しずつ痔核を剥離していき、剥離が完了したら痔核の根元部分を結紮し血管を縛ります。切開した箇所は、その大きさなどに応じて半分だけ縫合、開放といった選択をとります。また、この手術は主に入院で行われるものとなっており、手術前には血液検査や尿検査、レントゲンといった身体の状態を確かめるための検査が行われます。手術後は、傷の確認や健康状態のチェックなどを数日間行った後に退院となります。日帰りで行われる場合は、麻酔が切れた後に帰宅することが可能ですが、術後数日間は自宅での安静が必要となります。
- 痔核根治術(結紮切除術)はどのような症状がある場合に推奨されますか?
- 結紮切除術は、内痔核、外痔核ともに対応可能な術式です。便通を整えたり薬を塗ったりといった治療法では改善が見込めない場合や慢性化している場合に行われることが多く、痔ろうや切れ痔を併発していても対処可能であるというメリットがあります。また、内痔核は、症状の進行度合いによって4段階に分けられていますが、結紮切除術はどの段階の内痔核に対しても行うことができます。
- 痔核根治術(結紮切除術)のリスクはどのようなものですか?
- 結紮切除術のリスクとしては、合併症が挙げられます。術後は、強い腫れや痛み、出血、難治創、肛門狭窄などが起こるリスクがあり、そのリスクを限りなく少なくするためには経験のある肛門外科の医師を選ぶことが大切です。また、手術におけるデメリットとしては、ほとんどの場合に入院が必要になることが挙げられます。症状にもよりますが、1週間から2週間ほどの入院期間が必要となっており、時間や費用面でのやりくりをする必要が出てきます。
痔核根治術以外の痔核(いぼ痔)の治療法
結紮切除術は、幅広い症例に対応することができ根治性の高い手術法だと説明しましたが、痔核にはその他にもいくつかの治療法があります。どのような治療法があるのか、それぞれにどんな特徴があるのかを見ていきましょう。
- 痔核根治術以外の痔核(いぼ痔)の治療法にはどのようなものがありますか?
- 痔核には、ジオン注射療法(痔核硬化療法)、ICG併用レーザー治療、ゴム結紮術などの治療法があります。それぞれの治療法にメリット・デメリットがあり、入院の有無なども異なります。適する症状も異なるため、自身の症状や生活状況に応じて、どの治療法を選択するかを考えましょう。
- ジオン注射療法(痔核硬化療法)の流れについて教えてください。
- ジオン注射療法はALTA療法とも呼ばれる治療法であり、注射をして痔核に流れ込む血液の量を少なくすることで痔を硬化・縮小する方法です。内痔核に対して適応があり、数カ所に注射をするだけの治療法のため、日帰りや1泊程度の入院で受けることができます。注射の作用が出るまでに数日から数週間ほどかかるというデメリットはありますが、患者さんへの負担が少ない方法であり、ほかの治療法と組み合わせて行われる場合もあります。
- ICG併用レーザー治療の流れについて教えてください。
- ICG併用レーザー治療は、ジオン注射療法が一般的となる以前によく行われていた方法です。ICGという薬剤を痔核に注射して、そのうえでレーザー照射をすることで、痔核を縮小させます。局所麻酔のみで行える身体への負担が少ない方法であるものの、痔核のサイズによっては対応が難しかったり、ほかの治療法に比べて再発リスクが高かったりというデメリットがあります。
- ゴム結紮術の流れについて教えてください。
- ゴム結紮術は、内痔核の根元をゴムで縛ることで痔核を縮小させる方法です。痛みを感じにくい内痔核に対して有効であり、局所麻酔などを用いなくても対応が可能というメリットがあります。
痔核根治術(結紮切除術)の治療時間や日常生活への復帰時間
再発リスクが低く、さまざまな症例に対応できることが結紮切除術のメリットです。しかし、前述したように多くの場合で入院が必要になるなど注意点もあります。
- 痔核根治術(結紮切除術)の手術時間はどれくらいかかりますか?
- 結紮切除術にかかる時間は、10分から15分ほどです。内痔核の個数や、合併している病気があるかどうかなどによっても異なりますので、気になる場合は医師に確認をしておきましょう。
- 痔核根治術の手術後、日常生活にはどれくらいの期間で戻れますか?
- 結紮切除術は、多くの場合に1週間から2週間ほどの入院が必要となります。退院後は、経過観察のための通院が必要となり、激しい運動などは控える必要がありますが、通常の生活に戻ることが可能です。
- 痔核根治術の手術後に気をつけるべきことを教えてください。
- 術後は、翌日や翌々日からは入浴をし、患部を清潔に保つ必要があります。また、根治術と呼ばれているとはいえ、生活習慣によっては再発してしまうこともあります。便秘や下痢にならないような食生活をする、座りっぱなしやトイレでのいきみを避けるといったことに気をつけ、痔を予防しましょう。
編集部まとめ
痔核根治術と呼ばれる「結紮切除術」を中心に、痔核の治療法を複数まとめましたが参考になったでしょうか。痔核は痔疾患の中でも発症する方が多い疾患であり、治療法もさまざまあります。症状によっては市販薬やセルフケアでも改善が見込めますが、なかなか良くならなかったり、何度も繰り返してしまったりすることもあるでしょう。自分にどのような治療法が合っているかがわからない場合は、一度肛門外科の医師に相談してみることをおすすめします。
参考文献