お尻の穴やそのまわりにできものができた場合、「痔かな?」と思いつつも「何かほかの病気だったらどうしよう」と不安になってしまう方が多いのではないでしょうか。この記事では、そのような不安や疑問を抱える方に向け、お尻の穴にできるできものの種類について解説しています。どのような疾患ができものの原因となっているのかを知り、適切なタイミングで治療を受けることで、早期改善につなげていただければと思います。
痔によるお尻の穴のできもの
お尻の穴にできものができる原因はいくつかありますが、中でも多いのが「痔」が原因となっている場合です。痔には、いぼ痔、切れ痔、痔ろうといった種類があります。
- いぼ痔について教えてください。
- いぼ痔は、正式には痔核と言い、何らかの原因で肛門の血流が滞り、うっ血してこぶ状になったもののことです。外から触れる場所にあるものは外痔核と呼ばれており、「肛門にできものができた」という場合には、外痔核を指す場合が多いでしょう。この場合には、痛みや出血はない場合がほとんどです。それに対し、肛門の内側にできたこぶ状のものは、内痔核と呼びます。内痔核の場合には、排便時に出血があったり、排便時にいぼが脱出したり、脱出したいぼが戻らなくなることもあります。症状がひどい場合には、手術による治療が必要となります。
- 切れ痔でもできものはできますか?
- 切れ痔は、肛門の粘膜が裂けてしまった状態を指します。便が硬かったり太かったり、強くいきんでしまったりすることが原因で起こり、通常は出血や痛みといった症状を伴います。しかし、中にはこの切れ痔が原因で、肛門にできものができることもあります。裂肛による炎症で皮膚が腫れ、できもののようになるためです。腫れを抑えるためには、便秘を改善したり外用薬で処置したりといった治療が必要となります。
- 痔ろうについて教えてください。
- 痔ろうは、肛門まわりに膿がたまり、その膿が管を形成してしまった状態のことです。膿がたまってしまった状態を「肛門周囲膿瘍」と呼び、その状態を放置しているとさらに膿がたまり痔ろうとなります。症状としては、膿のほか、痛みや発熱などがあります。「できもの」と呼ばれる状態になることはあまりありませんが、痛みなどがなく、ゆっくりと膿がたまっていった場合に、しこりのように感じることもあります。
皮膚疾患によるお尻の穴のできもの
「痔」ではなかった場合、できものの原因としてはどのような疾患が考えられるのでしょうか。ここでは、皮膚疾患によるお尻の穴のできものについて解説します。
- 皮膚疾患によるできものの種類にはどんなものがありますか?
- 前述したように、肛門周囲膿瘍がまれにしこりのような形で現れることがあります。肛門周囲膿瘍は、放置すると痔ろうになる可能性があるため、早めに医療機関で診察を受けることが大切です。また、肛門周囲炎では、肛門まわりに湿疹やかぶれといった症状が出るため、ブツブツとした湿疹をできもののように感じることがあるかもしれません。感染性の皮膚炎である膿皮症も、赤い発疹や膿が症状として現れます。
- 肛門周囲膿瘍の治療法について教えてください。
- 肛門周囲膿瘍は、市販薬では改善が見込めないため、早期に医療機関を受診しましょう。治療法としては、切開をして膿を出すことが第一選択となります。また、超音波検査などで膿がたまっている場所や量を確認したうえで、抗生剤を用いた保存療法を行う場合もあります。
- 肛門周囲炎の治療法について教えてください。
- 肛門周囲炎を改善するためには、患部を清潔に保つことが大切です。治療法としては、外用薬の処方のほか、石けんで刺激を与えないようにやさしく洗う、汗で蒸れた状態をできるだけ避けるといった生活指導が行われます。
- 膿皮症の治療法について教えてください。
- 膿皮症は、軽度であれば薬を処方して経過観察をすることも可能です。しかし、症状が進行している場合には、病変部を切除する外科的治療が必要となります。症状が広範囲に及ぶ場合には、遊離植皮が必要になることもあります。
皮膚疾患以外によるお尻の穴のできもの
痔や肛門周囲膿瘍といった皮膚疾患以外にも、お尻の穴やその周囲にできものができることがあります。
- 皮膚疾患以外によるお尻の穴のできものの種類にはどんなものがありますか?
- 脂肪腫や粉瘤は全身に症状が出ることがあり、お尻のまわりも例外ではありません。脂肪腫は、皮膚の下の脂肪細胞が増殖し、できもののようになる病気のことです。良性のため命に関わることはありませんが、お尻の穴の近くにできると生活に支障をきたす場合があります。粉瘤もできものの一つであり、皮脂や垢などがたまってできます。
- お尻の穴にできた脂肪腫の治療法について教えてください。
- 脂肪腫ができた場合の治療法は、主に切開による摘出手術となります。基本的には、局所麻酔下での日帰り手術が可能ですが、大きすぎる場合や皮下脂肪との境目がはっきりしていない場合、筋肉に入り込んでいる場合などは、入院をして全身麻酔での手術が必要になることもあります。
- お尻の穴にできた粉瘤の治療法について教えてください。
- 粉瘤の治療も脂肪腫と同様に摘出手術となり、切開やくりぬき法によって行います。炎症している場合は、排膿処置を行って炎症を鎮めてから後日手術となる場合もあります。また、再発のリスクをできるだけ低くするためには、皮脂や垢などがたまっている袋ごと摘出することが大切です。粉瘤は、目立った症状がなく、生活にも支障をきたさない場合は治療をせずに様子を見ることも可能です。しかし、ほかの病気の可能性がないかを調べておくためにも一度医療機関で診察を受けておくことをおすすめします。
- 性病でもお尻の穴にできものができるのは本当ですか?
- 性感染症の一種である尖圭コンジローマは、陰部を中心に小さないぼができる病気です。症状が進むと、数が増え、サイズも大きくなっていくという特徴があります。いぼ同士がくっつくことにより、カリフラワーのような見た目になることもあります。治療は、外用薬の処方やレーザー焼却、液体窒素による凍結などで行われますが、体内にウイルスが残ることから症状を繰り返す恐れがあります。尖圭コンジローマを予防するためには、避妊具を使って感染リスクを軽減することが大切です。
- お尻の穴にできる可能性があるがんの種類について教えてください。
- お尻の穴の近くにできるがんとしては、直腸がんや肛門がん、皮膚がんなどがあります。直腸がんは肛門に近い場所にできるがんのため、血便が症状として現れることが多く、進行してがんが大きくなると外からでも触れるくらいにまでなります。肛門がんは、肛門管から肛門まわりの皮膚組織にできるがんのことです。肛門周囲の痛みや腫れ、排便時の出血などが症状として現れます。また、肛門の周囲に皮膚がんができることもあります。赤い斑点や白い湿疹が症状として出ることがあるため、こういった症状に気づいたら早めに医療機関を受診しましょう。
編集部まとめ
この記事では、痔や肛門周囲膿瘍、がんといった、お尻の穴にできるできものの原因となる疾患について解説しました。お尻の穴にできものができた場合、痛みや腫れがなくても、座っているときや排便時に違和感があり、生活に支障が出るかと思います。「痔だと思っていたら別の病気だった」ということを避けるためにも、気づいた段階で医療機関を受診し、適切な治療を受けるようにしましょう。
参考文献