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痔の症状について|痔の種類・治療方法も併せて解説

痔 症状

肛門の病気のうち75%を占めるのが痔で、多くの日本人が悩むポピュラーな病気です。また、いったん発症したらなかなか改善しにくい病気でもあります。

一口に痔といっても大きく分けて3種類あり、症状も治療方法も異なる病気です。この記事では痔の症状や種類に関して詳しく解説します。

また、セルフケアも含む治療方法に関しても紹介するので、痔で悩んでいる方はこの記事を参考にして治療につなげていただければ幸いです。

痔の症状や種類

痔のマーク

痔とはどのような病気ですか?
痔は単一の病気を指す言葉ではなく、肛門の3大疾患と呼ばれる痔核(いぼ痔)・裂肛(切れ痔)・痔ろうの総称です。これらはでき方や形状が大きく違い、主な症状の痛みにしても強かったり弱かったりします。
痔は肛門の内側にも外側にもでき、内部の粘膜部分にできた場合は知覚神経がないので痛みは感じません。排便時に痛みや出血があれば気付きますが、肛門の違和感程度で長期間過ごす方も少なくないようです。
痔は性別には関係なくおこり、年齢も10代・20代から無差別におこる病気です。成人の半数に痔があるといわれ、決して特別な病気ではありません。
痔の症状を教えてください。
痔は上述のとおり痔核・裂肛・痔ろうの総称です。したがって症状にも少しずつ違いがあるので、個別に説明します。痔核は肛門周辺にある静脈叢(じょうみゃくそう=細い静脈のかたまり)でうっ血(血流の停滞)がおこり腫れたもので、症状は出血・脱出・痛み・分泌物などです。
肛門の内側にできた場合は痛みがありませんが、悪化して外に出て戻らない嵌頓(かんとん)痔核になれば強い痛みを伴います。裂肛では肛門上皮が裂けるので、排便時の強い痛みと出血が特徴です。排便の後まで痛みが続くこともしばしばみられます。
出血はペーパーにつく程度で多くはありません。痔ろうは細菌感染で化膿した病巣が慢性化し、肛門付近に膿の出口ができます。患部が腫れて膿が出るとともに、ズキズキする強い痛みが特徴です。全身症状として38~39度の高熱を伴うこともあります。痔ろうは治りにくく、化膿が続くとがん化する場合もあるので、専門の医師の治療が必要です。
痔にはどのような種類があるのですか?
痔は以下のように3種類に大別されます。
  • 痔核
  • 裂肛
  • 痔ろう

多いのが痔核で、歯状線(肛門と直腸の境目)の奥にある内痔核と外にある外痔核に分かれます。肛門周囲にある静脈叢と皮下組織が膨らんだいぼ状の腫れで、内痔核は進行とともに肛門外に脱出するようになります。
内痔核と外痔核は多くの場合合併するのが特長です。裂肛は硬い便の圧力などで肛門上皮にできた裂傷で、便秘症が多い女性によくみられます。痔ろうは細菌感染による肛門周囲膿瘍(のうよう)が慢性化し、肛門近くにできた穴から膿が流れる状態です。

痔の種類ごとの原因を教えてください
痔核は肛門周辺のうっ血(血液の滞留)が直接の原因です。うっ血をおこすのは、便秘で強くいきむことや硬い便による圧迫・長時間同じ姿勢を続ける仕事・妊娠で子宮に圧迫されることなどがきっかけになります。そして、下痢の刺激・不潔な肛門・香辛料の刺激などで悪化します。
裂肛は便秘が主な原因で、硬い便を無理に出そうとして肛門上皮が裂けた状態です。痔ろうは歯状線にある肛門小窩から細菌が入って化膿するのが原因です。主に下痢や裂肛がきっかけになり、免疫力が落ちた糖尿病やクローン病の方がかかりやすくなります。

痔の受診の目安や治療方法

男性医師

痔で病院を受診する目安を教えてください。
出血や痛み・違和感など痔の症状を認めたら、とりあえず受診するのが適切な選択です。とはいえ、時間を作って病院には行けない方もいるかもしれません。市販薬で様子をみる選択をした場合でも、数日で改善しなかったり再度症状が出たりしたら迷わず受診してください。
特に出血した場合は痔以外の病気(例えば消化器のがんなど)の可能性もあります。自己判断で痔と考え受診しないと、痔も含めて進行・悪化して治りにくい状態に陥りがちです。本当に痔かどうか確かめ、より効果的な治療を始めるためにも受診してください。何か症状があったときが受診の目安です。
痔は何科を受診すればよいですか?
痔は肛門科または肛門外科が扱います。近隣にない場合は消化器外科か消化器内科でも診察できますが、消化器内科では手術になる場合は関連他院へ紹介されます。
また、一般外科でも施設により痔の治療を扱う場合があるので確認してください。ただ、受診する施設で大腸内視鏡検査ができるかどうかを確かめましょう。痔以外の病気が疑われる場合に適切な検査が可能だからです。
痔の保存的治療方法を教えてください
保存的治療とは生活習慣や便通を改善し、悪化を抑えて症状の軽減を図る治療法です。同時に外用薬や内服薬による薬物治療が併用されます。保存的治療は痔核と裂肛の治療で主体的に行われ、痔ろうには適用されません。
痔核と裂肛で手術になるのは1割程度の方になります。具体的には、水分と繊維質の摂取で便をやわらかく出やすくし、排便時のいきみを抑え短時間で済ませることが主体です。また、便秘・下痢を防ぎ肛門を清潔に保ちます。
併せて立ちっぱなし・座りっぱなしの姿勢を改めることや適度な運動のほか、痔核のうっ血には入浴で温める温浴療法も有効です。同時に行う薬物治療は痛みや出血の緩和が目的で行われます。
痔の外科的治療方法を教えてください
外科的治療は主に痔ろうが対象で、悪化した痔核や裂肛の一部も対象です。痔ろうでは膿の通路の瘻管(ろうかん)を切開・切除する手術で完治を目指します。痔核では注射による硬化法や専用の輪ゴムで縛る結紮(けっさつ)療法のほか、汎用性・根治性に優れた標準治療の結紮切除術が行われます。
裂肛で実施されるのは、進行してできたイボ・ポリープの切除や狭くなった狭窄部を切開する手術です。従来の痔の手術では出血や痛みの合併症のリスクがあり、入院での手術が標準でした。近年では麻酔法など技術的な進歩もあって、年齢・基礎疾患の有無など条件が整えば日帰り手術も可能になっています。

痔のセルフケアや予防方法

トイレットペーパーとサプリ

痔はセルフケアで対処することもできますか?
痔は生活習慣と深い関わりがあるので、セルフケアは悪化を防ぎ恢復を促すために重要な要素です。セルフケアによって日常的に存在する危険要素を自分で取り除くことで、身体に備わっている自然治癒力を高めます。痔の場合、重要なのは便通を整えることです。便秘や下痢がない日常が実現できれば、痔の悪化が抑制できます。
さらに、お尻の負担が少ない排泄習慣を心がけてください。便意があってからトイレに行く・短時間で済ませる・肛門を清潔に保つなどです。そのほかに痔を悪化させる要因には、身体の冷え・肉体疲労・ストレス・多量の飲酒と香辛料などが挙げられます。日常の食生活などに注意を払い、悪化を防ぐことを心がけてください。
痔を予防するために注意するべきことはありますか?
痔の予防方法は、便通を整えて肛門とその周辺に負担をかけないことです。痔の悪化を防ぐセルフケアとほぼ同じといっていいでしょう。ポイントをまとめると以下のとおりです。
  • 腸内環境を整えて下痢や便秘をおこさない
  • 肛門を清潔に保つ
  • 同じ姿勢で長時間過ごさない
  • 腰やお尻を冷やさない
  • 入浴は毎日時間をかけてゆっくり暖まる
  • ストレスを溜めない

腸内環境を整えれば自然な便通が維持できます。善玉菌を増やす食生活に改め、食物繊維や水分を十分摂ってください。
楽な排便は肛門に負担がかからず、清潔であれば炎症も予防できます。また、肛門周辺のうっ血を防ぐ対応も大切です。仕事中の姿勢を変えたり冷えを防いだりするほか、適度な運動でストレスを解消すれば腸の活動も活性化します。

編集部まとめ

お尻が気になる男性

多くの方が悩まされる痔は、生活習慣と関係が深い病気です。それだけに治りにくいのが特徴であり、悩む方も少なくありません

痔は痔核など3種類に分けられますが、それぞれ痛みや出血・不快感など辛い症状が特徴です。主に保存的治療が選択されますが、痔ろうは外科的治療が主体になります。

併せて生活習慣の改善も大切で、セルフケアも含めて便通を整えることが大切です。悪化すると治療も困難で再発しやすいので、症状があれば早目の受診をおすすめします。

参考文献

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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