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肛門外科

痛みを伴う痔瘻の症状と治療方法は?下痢をしやすい人は痔瘻になりやすい!?

痛みを伴う痔瘻の症状と治療方法は?下痢をしやすい人は痔瘻になりやすい!?

肛門の周辺組織が炎症し、激しい痛みを伴う痔瘻。下痢をしやすい人は痔瘻になりやすいと聞いたことがある方もいるかもしれません。痔瘻は、自然に治ることはなく、放っておくとどんどん悪化してしまうため早期に手術が必要な病気です。

この記事では、痔瘻の症状と治療方法について詳しく解説し「痔瘻になるとどんな症状がでる?」「治療方法はあるの?」という痔瘻についての不安や疑問を解消します。記事の最後には、痔瘻の治療にかかる費用についてもまとめています。ぜひご覧ください。

痛みを伴う痔瘻の主な症状

痛みを伴う痔瘻の主な症状 肛門の病気のなかでも、強い痛みを伴うことで知られる痔瘻ですが、痔瘻の状態によって、痛みのほかにもさまざまな症状が出てきます。痔瘻は放っておくと悪化するため、早期の治療が肝心です。痔瘻の症状について正しく知り、もし当てはまる症状があれば、早めに受診することをおすすめします。

ここでは、痔瘻の主な症状について、詳しく説明します。

痔瘻とは?

痔瘻とは、肛門周囲の皮膚が炎症を起こし、膿が通るトンネルができる病気です。肛門の内側にある肛門陰窩というくぼみに細菌が入って感染を起こすと、肛門周囲の皮膚の内部に膿がたまります。その膿が肛門周囲の皮下組織に広がると、最終的に皮膚から外に排出されます。そのときにできる膿の通り道が、瘻管と呼ばれる管のようになった状態が痔瘻です。 痔瘻を発症すると自然治癒は見込めず、手術が必要になりますが、瘻管のできる場所によって、治療の方法や難易度が変わります。放置していると痔瘻が悪化し、癌が発生するリスクもあるため、早めに病院を受診し、治療を開始することが重要です。

痔瘻の主な症状

・肛門の周囲に痛みや腫れがある
痔瘻の症状として最も訴えが多く、分かりやすいのが、肛門周囲の痛みや腫れです。肛門周囲が炎症を起こしているため、ズキンズキンとした激しい痛みを伴い、何もしていないときにも痛みを感じることも多いです。痛みが強いと、歩いたりするのも苦痛で椅子に座ることすらできないというケースも少なくありません。

痔瘻にはいくつか種類があり、瘻管の出口が肛門周辺の皮膚に貫通している場合と、していない場合があります。瘻管が肛門周辺の皮膚を貫通している場合には、目で見たり、触ったりすると、しこりやふくらみを確認できる場合があります。瘻管が貫通せず、体の中にできている場合には、見た目では分からないこともありますが、肛門の奥の方で痛みや違和感を感じます。

・38~39℃の熱が出る
肛門周囲が炎症を起こすため、高熱が出ることがあります。痔瘻が発生した場所によっては、見た目での変化がない場合や、皮膚の外に膿が排出されないこともありますが、その場合でも肛門の異変とともに高熱の症状があるならば、痔瘻の可能性が考えられるでしょう。

・おしりが熱を持っていて、膿が出る
肛門周囲の炎症により、肛門周囲が熱を持つことがあり、こうなると少し動くだけで激しい痛みを伴います。また、痔瘻が皮膚の外まで貫通している場合、瘻管の出口から常に膿が排出されてしまいます。量にもよりますが、膿が出ることによって肛門周辺のかゆみやかぶれが生じる場合もあるでしょう。

・下着が汚れる
膿が外に排出されると、下着が汚れてしまいます。瘻管から膿が排出されると、痛みや腫れなどの症状が軽快する場合があります。しかし、一時的に症状が治まったように見えても、痔瘻が自然に治癒することはありません。時間が経つと再び炎症を繰り返し、膿が外に排出されます。膿の量が多い場合は、そのままの状態が続くと肛門周辺のかぶれや細菌感染のリスクが高まります。パッドを使用し、汚れたらこまめに交換する、肛門をシャワーで洗い流すなどできるだけ清潔に保つように気を付けましょう。

痛みを伴う痔瘻の原因と予防方法

痛みを伴う痔瘻の原因と予防方法 強い痛みだけでなく、腫れや、発熱、膿の排出などの症状が現れる痔瘻。誰しも痔瘻にはなりたくないと思うはず。そこで、痔瘻の原因や予防方法はあるのか、解説します。

下痢をしやすい人や炎症性腸疾患の人は痔瘻になりやすい

痔瘻を引き起こす原因の1つが下痢です。痔瘻は、肛門の内側にある肛門陰窩というくぼみから細菌が入ることで発症します。通常は、肛門陰窩に便が入り込むことはありませんが、軟らかい下痢の場合はこのくぼみに便が入り込み、細菌に感染することがきっかけで痔瘻を発症します。

また、潰瘍性大腸炎やクローン病など、繰り返す下痢や消化管の炎症を起こす炎症性腸疾患の場合も痔瘻のリスクが高まります。炎症性腸疾患がある場合、症状が悪化しやすく、体の中にいくつもの瘻管ができる多発痔瘻になることもあるため、必要に応じて適切な検査や治療を受けることが大切です。

細菌感染による化膿

痔瘻は、肛門内部の組織に便が入り込み、細菌感染を起こすことが原因です。細菌に感染すると、皮膚の内部が化膿して膿がたまり、痔瘻を発症します。肛門内部に傷があったり、免疫力が低下していると細菌感染を起こすリスクが高くなります。過度の労働やストレス、アルコールの飲みすぎなども下痢や免疫力の低下を招くため、注意が必要です。

痔瘻の予防方法

残念ながら、痔瘻の発症を完全に予防する方法はありません。しかし、下痢にならないような食生活や、肛門に負担をかけない生活習慣を身に付けることは痔瘻の予防に役立ちます。 たとえば、バランスの取れた食事や十分な水分摂取で腸内環境を整えることや、長時間同じ姿勢での座り仕事をせず適度な運動を取り入れること、排便時に無理にいきみすぎないことなどが挙げられます。

痛みを伴う痔瘻のタイプと特徴

痛みを伴う痔瘻のタイプと特徴 痔瘻は、膿の通り道である瘻管が発生した場所によって4つのタイプに分けられます。痔瘻かどうかの診断はすぐにできることが多いですが、どのタイプの痔瘻なのかは、触診や外から見ただけでは判断することができず、MRIで確認する必要があります。 それぞれに特徴があり、治療のしやすさも変わります。1つずつ見ていきましょう。

Ⅰ型痔瘻

4種類の痔瘻のうち最も皮膚の浅いところにできるものです。裂肛に合併してできることが多く、裂肛の傷から細菌に感染することがきっかけで発生します。

瘻管が肛門を締める筋肉である肛門括約筋をつらぬいていないことが特徴で、皮膚に近い場所に瘻管があるため、診断や治療が比較的容易にできる痔瘻と言えます。

Ⅱ型痔瘻

瘻管が内肛門括約筋と外肛門括約筋の間を走行しているもので、最も発生頻度が高い痔瘻のタイプです。Ⅱ型痔瘻は、瘻管が上に向かってできる「高位筋間痔瘻」と、瘻管が下に向かってできる「低位筋間痔瘻」の2つに分けられます。Ⅱ型痔瘻のうちほとんどが低位筋間痔瘻です。

高位筋間痔瘻の場合、膿の出口が体の奥へ向かっていくため、皮膚から膿が自然に排出されることはありませんが、肛門の奥の方に痛みや違和感を感じることが多いです。また、瘻管が1本のものを単純型、2本以上あるものを複雑型と言います。 複雑型痔瘻になると、治療の難易度が上がり、治癒までの期間も長くなります。

Ⅲ型痔瘻

瘻管が、肛門括約筋をつらぬいて伸びていく痔瘻です。坐骨直腸窩痔瘻とも呼ばれ、内肛門括約筋と外肛門括約筋、坐骨直腸筋の間に深く大きな原発巣ができやすく、瘻管が体の中で枝分かれするなど形状も複雑になることが多いです。瘻管が肛門括約筋をつらぬいているため、筋肉の機能を温存するために慎重に術式を選択する必要があります。

Ⅳ型痔瘻

瘻管が体の奥の方向に広がるもので、4つの痔瘻のうち最も深い場所にできるタイプの痔瘻です。全体の痔瘻のうち数%と発生頻度は少なく、まれにしか見られませんが、中で瘻管が複雑に走っている場合が多く最悪の場合、人工肛門になる恐れもあります。外肛門括約筋の上にある肛門挙筋という筋肉にまで瘻管が達しているため、手術は難易度が高く、何度も再発を繰り返すこともある複雑な痔瘻です。

痛みを伴う痔瘻を緩和する応急処置

痛みを伴う痔瘻を緩和する応急処置 痔瘻による激しい痛みに襲われた際は、応急処置を行うことで痛みを緩和できます。しかし、一時的に痛みが和らいだとしても、痔瘻は自然に治ることはありません。放置していると、症状が悪化したり、患部が癌化することもあります。症状が落ち着いたら早めに病院を受診しましょう。

患部を冷やす

肛門周囲の炎症が起きると、腫れて熱を持ちます。痛みがひどい場合には、患部を冷やすことで一時的に痛みを緩和できます。うつぶせになり、保冷剤などで患部を冷やします。直接冷やすと刺激が強く、かえって痛みが強くなることがあるため、タオルの上から優しく冷やすのがおすすめです。

お尻を清潔に保つ

細菌が繁殖し炎症が悪化するのを防ぐため、肛門周囲は清潔に保つように心がけましょう。毎日のシャワーはもちろん、肛門周囲から膿が出ている時には排便後に軽く洗い流すことも有効です。炎症がひどく、膿が出ている場合には温めると症状が悪化し逆効果になるため、長湯はせずにぬるま湯で洗い流すようにしましょう。

痛みを伴う痔瘻の治療方法と費用

痔瘻ができている位置や状態によって手術方法は変わりますが、痔瘻の治療には、基本的に手術が必要です。どの治療法を選択するかについては、視診だけでなくMRIなどの画像診断を用いて痔瘻の状態を確認し、医師と相談しながら最適な治療方法を決定。また、効率的な治療を行うために、飲み薬を併用することもあります。

どのような治療法があるのか、また、治療にはどの程度の費用がかかるのかについて、詳しく説明します。

飲み薬

痛みが少なく、膿があまり出ていない場合や、自然に膿が排出されている場合には抗菌薬の飲み薬で経過観察を行う場合があります。しかし、飲み薬だけでは完治には至らず、治療には瘻管を切除する手術が必要です。 また、手術を行う際にも、化膿を抑える抗生物質や、炎症を抑えて痛みを軽減する消炎鎮痛剤、血行を促進し傷の治りを早めるビタミンEなどの飲み薬を併用することがあります。

瘻管切開開放術

瘻管が皮膚の浅い場所を通っていて単純な形をしているⅠ型痔瘻の場合に多く行われる手術です。瘻管に沿って、肛門括約筋を一部切り取りますが、肛門の機能に影響を及ぼすことはありません。再発の可能性も少ないのが特徴です。 肛門の皮膚に近い部分をごく浅く切開するのみで、多くの場合は肛門科の日帰り手術で対応が可能です。ただし、肛門括約筋を切開するため、瘻管の位置が深い場合や広範囲に括約筋を傷つけるような場合にはこの術式は選択できません。

括約筋温存術

瘻管を切開せずにくり抜いて治療する方法です。Ⅲ型痔瘻のように深い部分にできた痔瘻で、瘻管切開開放術では肛門括約筋の機能を損なう可能性がある場合に適応されます。肛門括約筋を切り取らないため、肛門の機能を温存することができます。 しかし、手術の難易度が高く、再発の可能性もある点に注意が必要です。複雑な痔瘻に行われる手術であり、入院が必要となることが多いでしょう。

シートン法

瘻管にシートンというゴム紐を通して縛り、ゴムが締まる力を利用して瘻管と肛門括約筋をゆっくりと切開する治療法です。肛門括約筋を切除する点は瘻管切開開放術と同じですが、シートン法では時間をかけて少しずつ切開していく点が異なります。

治療には4~12カ月ほどかかり、定期的にゴム紐を少しずつ締め直したり、交換したりする必要があります。また、治療期間中はずっと瘻管にゴム紐が通っている状態になるため、痛みや違和感が気になることもあるでしょう。しかし、肛門括約筋を治癒させながらゆっくりと切開を進めるため、肛門括約筋への負担が少なく、再発率も低いのがメリットです。

痔瘻の手術は保険適用されます。費用は、手術の方法や入院が必要かどうかによって変わりますが、3割負担で単純痔瘻の場合は約2~4万円、複雑痔瘻の場合には約3~6万円、入院が必要な場合には一泊あたり約8000円~1万円の費用がかかることが多いようです。

手術を受けて月の医療費が高額になった場合は、高額療養費制度を申請すると一部費用が返還される場合があります。また、生命保険や傷害保険に加入していれば、保険の契約内容によっては給付金が受け取れるので、確認をしておきましょう。

まとめ

まとめ 痔瘻は、下痢が原因となって発症し、強い痛みを伴います。痛み以外にも、腫れや発熱、膿の排出などの症状があり、手術が必要となる病気です。痔瘻を完全に予防する方法はありませんが、下痢や肛門への負荷をかけすぎないよう、食事や生活を心がけることが大切です。

痔瘻の手術は症状にもよりますが、約2~6万円がかかり、入院が必要になる場合もあります。手術となると病院への足が遠のくかもしれませんが、痔瘻は自然に治ることはないため、放っておくとどんどん悪化し、治療も大変になります。 肛門に異変を感じたら、早めに受診し、医師と相談しながら治療を進めましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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