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下肢静脈瘤

下肢静脈瘤の治療で用いられる弾性ストッキングとは?期待できる効果や注意点

下肢静脈瘤 ストッキング

下肢静脈瘤の治療には、さまざまな方法が存在します。
そして治療法の1つにストッキングが用いられることもあります。
本記事では、下肢静脈瘤の治療で用いられるストッキングについて、以下の点を中心にご紹介します。

  • 下肢静脈瘤の治療とストッキングの関係とは
  • ストッキングの種類とは
  • ストッキングの使用で大切なこととは

下肢静脈瘤の治療で用いられるストッキングについて理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

下肢静脈瘤について

下肢静脈瘤について

下肢静脈瘤は、足の静脈の弁の機能不全により血液がうっ滞し、静脈が拡張して瘤のように膨らむ病状です。
重力に逆らって血液を心臓に戻す必要がある下肢に多く見られ、立ち仕事、遺伝的要因、妊娠などがリスク要因とされています。

また、静脈瘤は見た目の問題だけでなく、痛みや重だるさ、夜間のけいれんなどの症状を引き起こすことがあり、放置すると皮膚の変色や潰瘍へと進行する可能性もあります。

そして、治療法の1つに後述する弾性ストッキングを用いた圧迫療法があります。

弾性ストッキングとは

弾性ストッキングとは

弾性ストッキングは、特別に設計された着圧ソックスであり、足から心臓への血液循環を促進し、静脈の逆流や血液の滞留を防ぐ目的で用いられます。
足首に圧力をかけ、そこから徐々に圧力が膝や太ももにかけて減少するように設計されています。

この圧力勾配は、血液が下肢から心臓に向かって効率的に戻るのを助け、静脈内の圧力を軽減し、静脈弁の機能をサポートするとされています。

また、医療用弾性ストッキングは、深部静脈血栓症の予防、長時間の立ち仕事や座り仕事による足の疲れやむくみの軽減、妊娠中の静脈圧の増加による不快感の軽減など、様々な症例で推奨されます。

弾性ストッキングの種類

弾性ストッキングの種類

弾性ストッキングは、以下のようにさまざまな種類が存在します。

ハイソックスタイプ

ハイソックスタイプは、足首から膝下までをサポートする形状です。

特に下腿部の静脈還流を促進することを目的としており、足首で圧力を提供し、徐々に上部に向かって圧力が減少する勾配圧力を有しています。
この圧力勾配が、血液を心臓方向へと押し上げ、静脈の逆流や血液の滞留を防ぎます。

長所としては、その着脱の容易さと着用時の不快感が少ない点があげられます。
また、初めて弾性ストッキングを使用する人や日常的な使用を考えている方にもおすすめです。

しかし、大腿部までの圧迫ができないため、下肢静脈瘤が大腿部にも及んでいる場合には、ほかのタイプの弾性ストッキングを検討する必要があります。

ストッキングタイプ

ストッキングタイプは、足首から大腿部までを包み込む形状です。

下肢全体に均一または段階的に圧力をかけることで、血液の心臓への戻りを促進し、静脈内の血液逆流や滞留を防ぐことが期待できます。
特に、大腿部までカバーすることで、下腿部だけでなく上部の静脈系にも影響を及ぼすため、広範囲の静脈瘤に対してよい期待ができます。

長所としては、大腿も圧迫できる点、比較的着脱が容易であること、そして蒸し暑さが少ないため長時間の使用においても快適性が期待できる点があげられます。

一方で、短所としては、ストッキングがずり落ちやすいという点があります。
これは、特に活動量が多い日や、体型によってフィット感が異なる場合に顕著になることがあります。
そのため、適切なサイズ選びと、場合によってはストッキングを支えるために追加のアクセサリーの使用が推奨されることもあります。

パンストタイプ

パンストタイプは全体的な圧迫を提供し、特に下半身全体にわたる均一な圧力が必要な場合に適しています。

足首から太もも、さらにはお腹周りまでをカバーし、下肢全体に対して圧迫を施すことが期待できます。
長所は、ずり落ちにくく、食い込みにくい点にあり、これにより長時間の着用でも快適性が保たれやすいとされています。

短所としては、片側のリンパ浮腫や左右差が大きいリンパ浮腫には使いにくいという点があげられます。
また、着脱がしにくいことや、蒸し暑い季節や温かい環境下では、その全体的なカバー範囲が災いして蒸れやすくなることも注意が必要です。

片脚用パンスト

片脚用パンストは、特に一方の脚のみに静脈瘤やリンパ浮腫などの問題がある場合に適しているとされています。

片方の脚全体を覆い、大腿部から足首にかけて段階的に圧力をかけることで血液循環を促進し、静脈の逆流や血液の滞留防止が期待できます。
片脚用パンストは、健康な脚には不必要な圧迫を避けつつ、必要な脚に適切なサポートになります。

長所としては、ずり落ちにくく、食い込みにくい点にあります。
また、比較的履きやすく、蒸し暑さが少ないため、長時間の使用にも適しているとされています。

短所としては、健側が締め付けられることがある点、価格が高めであること、ファッション性に劣る可能性があることがあげられます。

弾力性ストッキングで期待できる効果

弾力性ストッキングで期待できる効果

弾力性ストッキングを着用することで、以下のような働きが期待できます。

下肢静脈瘤の症状を緩和

弾性ストッキングの着用により、下肢静脈瘤の症状緩和が期待できます。
弾性ストッキングの圧力勾配により、血液を心臓に向かって効率的に戻すのを助け、下肢の静脈内での血液の逆流や滞留防止が期待できます。

特に、弱った静脈弁の機能を補助し、静脈の拡張を抑えることで、足の重だるさ、痛み、むくみなどの症状軽減が期待できます。

合併症の予防

弾性ストッキングの着用により、合併症の予防が期待できるとされています。

治療後のリカバリー期間中、特に手術や硬化療法などの処置を受けた患者さんにおいて、弾性ストッキングは血液循環を促進し、足の腫れや痛みの軽減が期待できます。

これにより、深部静脈血栓症(DVT)のリスクが低減され、血栓が心臓や肺へ移動することによる肺塞栓症の発生を防ぐことが期待できます。

そして、立ち仕事や長時間の座位など、日常生活での足への負担を軽減し、静脈瘤の再発や症状の悪化を防ぐことも期待できます。
また、弾性ストッキングは皮膚の保護にも役立ち、手術や治療による皮膚の損傷や潰瘍形成のリスク減少が期待できます。

圧迫圧の選び方

圧迫圧の選び方

弾性ストッキングを選ぶ際、自分に合った圧迫圧のものを選ぶことも重要となります。

20未満

圧迫圧が20mmHg未満のものを選ぶケースは、主に軽度の症状を持つ患者さんや特定の予防目的で使用されるとされています。

20mmHg未満のものは、血栓症の予防、軽度の静脈瘤、高齢者に見られる静脈の問題、またはほかの疾患による軽度の浮腫(むくみ)の管理に適しているとされています。
これらの条件では、足の血液循環を軽くサポートし、足の疲れや軽度のむくみを軽減するための軽い圧迫が求められます。

20mmHg未満のものは、日常生活での使用に適しているとされており、長時間の立ち仕事や座り仕事、長距離の飛行機移動などで足の不快感を感じやすい人に推奨されます。

また、軽度の静脈瘤があるが、まだ重大な合併症や深刻な症状が現れていない患者さんにとって、この圧迫レベルのストッキングは、症状の進行を遅らせるための初期介入として役立つことがあります。

しかし、より高い圧迫圧が必要な症状が進行した静脈瘤や、深部静脈血栓症(DVT)の予防など、より専門的な医療的介入が必要な場合には、この圧迫レベルは不十分である可能性があります。

20~30

圧迫圧が20~30mmHgのものは、主に静脈瘤が存在し、その症状が中程度の場合や、静脈瘤の手術後のリカバリー期間に適しているとされています。

20~30mmHgは、足の血液循環を促進し、静脈内の血液の逆流や滞留を防ぐのに十分な圧力を提供しつつ、過度に圧迫することなく快適に着用できるバランスを保つとされています。

そして、静脈瘤による軽度から中程度の症状(例えば、足の重だるさ、疲労感、軽度のむくみ)の緩和が期待できます。

また、静脈瘤の手術や硬化療法などの治療後に生じる可能性のある腫れや不快感の軽減が期待できます。

30~40

圧迫圧が30~40mmHgのものを選択する場合は、特に中等度から重度の静脈疾患が対象となるとされています。

30~40mmHgは、皮膚病変を伴う静脈瘤、血栓症後症候群、またはリンパ浮腫の患者さんに推奨されます。
これらの状態では、下肢の血液循環が著しく悪化しており、より強い圧迫によって血液の逆流を防ぎ、静脈とリンパの流れを改善する必要があります。

皮膚病変を伴う静脈瘤では、皮膚の栄養不良や潰瘍形成のリスクが高まります。 そのため、30~40mmHgの圧迫圧を持つストッキングは、血流を促進し、皮膚の状態を改善するのに役立つとされています。

また、血栓症後症候群の患者さんでは、深部静脈血栓症(DVT)の後遺症として痛みや腫れが持続することがあり、適切な圧迫によってこれらの症状の管理が期待できます。

リンパ浮腫の場合、リンパ液の滞留による腫れを軽減し、リンパの流れを促進するために、選ばれやすいです。
これにより、腫れや痛みの軽減、さらには感染リスクの低減が期待できます。

40~50

圧迫圧が40~50mmHgのものを選択する状況は、特に重度の静脈系の疾患が存在する場合です。

40~50mmHgは、下腿潰瘍を伴う下肢静脈瘤、重症血栓症後症候群、中等症リンパ浮腫の患者さんに対して推奨されます。
これらの症状は、静脈の機能不全が進行し、下肢の血液循環が著しく悪化していることを示しています。

下腿潰瘍は、長期間にわたる静脈圧の高さにより皮膚に栄養障害が生じ、最終的に開放性の傷となる状態です。
治癒が難しく、適切な圧迫療法によって血液循環を改善し、潰瘍の治癒を促進する必要があります。

重症血栓症後症候群は、深部静脈血栓症(DVT)の後遺症であり、慢性的な痛みや腫れ、ときには皮膚変化を伴います。
この状態においても、高圧の弾性ストッキングは、静脈還流の改善を通じて症状緩和が期待できます。

中等症リンパ浮腫では、リンパ液の滞留による腫れが特徴であり、強い圧迫によってリンパの流れを促進し、腫れを軽減することが目的です。 この圧力範囲のストッキングは、リンパ液の過剰な蓄積を管理し、患者さんの不快感を軽減するとされています。

50以上

圧迫圧が50mmHgを超えるものの選択は、非常に特殊な状況下だとされています。

この圧力範囲は、主に高度リンパ浮腫や重度の静脈不全、下腿潰瘍が再発しやすい患者さんに推奨されることがあります。
これらの症状は、下肢の血液循環障害が極めて進行しており、標準的な治療法では管理が難しいケースを指します。

高度リンパ浮腫の場合、リンパ液の過剰な蓄積により、患部が著しく腫れ上がり、皮膚の硬化や感染のリスクが高まります。
このような状況では、非常に強い圧迫によってのみリンパ液の流れを改善し、腫れを軽減することが期待できます。

また、重度の静脈不全においては、血液の逆流が顕著で、下肢に重度の痛み、腫れ、色素沈着、潰瘍形成などの症状が見られることがあります。
強い圧迫が必要とされるため、50mmHgを超える圧迫圧を持つストッキングが選択されることがあります。

下腿潰瘍が再発しやすい患者さんにおいても、強い圧迫によって血液循環を促進し、潰瘍の治癒を支援し、再発を防ぐために、同様の圧迫圧が適用される場合があります。

弾性ストッキングを使用するときの注意点

弾性ストッキングを使用するときの注意点

最後に、弾性ストッキングを使用するときの注意点をご紹介します。

着用方法

弾性ストッキングの正しい着用は、不快感や皮膚トラブルを避けるために必要です。

まず、ストッキングを履く前に、足の乾燥を確保し、足指の間も含めて皮膚に異常がないかを確認します。
足に通す際は、ストッキングを裏返しにして足首まで引き上げ、その後、残りの部分を徐々に上に向かって正しい位置に調整していきます。

足首から膝、必要に応じて太ももまで、ストッキングが均等にフィットするように注意が必要です。
この過程で、しわやたるみがないようにすることが重要で、これらは圧迫が不均一になる原因となり、効果を低下させるだけでなく、不快感や皮膚へのダメージにつながる可能性があります。

また、着用時には、ストッキングを均等に引き上げるために、手袋を使用すると滑りが良くなり、より簡単に着用できることがあります。

そして着用する時間は、起床直後が推奨されます。
朝の時点で足は最も腫れにくく、ストッキングが適切にフィットしやすい状態とされています。

交換する頻度

弾性ストッキングの交換時期は、使用頻度やケアの方法によって異なりますが、約6ヶ月を目安に交換することが推奨されています。

弾性ストッキングは日常的に使用することで、徐々に伸縮性が失われ、適切な圧迫力を提供できなくなる可能性があります。
緩く感じられるようになったり、圧迫感が以前ほど感じられなくなった場合は、新しいものに交換する時期かもしれません。

お手入れ

弾性ストッキングは、特殊な素材で作られており、適切な圧迫力を保つためには正しいお手入れが必要です。

洗濯時には40℃以下のぬるま湯を使用し、中性洗剤を使って手洗いするか、洗濯ネットを使用して洗濯機で洗うことが推奨されています。

強い力を加えて絞るのではなく、軽く手で押し洗いし、よくすすいでから軽く手でしぼります。
乾燥機の使用は避け、陰干しで自然乾燥させることも大切です。
直射日光やアイロンがけ、柔軟剤の使用、塩素系漂白剤やドライクリーニングは、素材を痛める原因となるため避けた方が良いとされています。

まとめ

まとめ

ここまで、下肢静脈瘤の治療で用いられるストッキングについてご紹介しました。
下肢静脈瘤の治療で用いられるストッキングについてまとめると、以下の通りです。

  • 下肢静脈瘤の治療の1つである圧迫療法では弾性ストッキングが用いられ、足に適度な圧力を加え、血液のうっ滞を軽減や静脈の血液循環改善が期待できる
  • 弾性ストッキングの種類はさまざまでハイソックスタイプやストッキングタイプ、パンストタイプ、片脚用パンストなどがあげられる
  • 弾性ストッキングは自分に適した圧迫力のものを選び、お手入れや適度な交換などが大切である

これらの情報が少しでも皆様のお役に立てますと幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
白水 寛理医師(しろうず脳神経外科 院長)

白水 寛理医師(しろうず脳神経外科 院長)

長崎大学医学部卒業 / 九州大学脳神経外科医局所属 / 専門は脳神経外科

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