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下肢静脈瘤

下肢静脈瘤の治し方とは?予防方法や発症時の注意点についても解説します

下肢静脈瘤の治し方とは?予防方法や発症時の注意点についても解説します

日常生活でふと足元に青白い線が現れているのに気づいたら、もしかしたらそれは下肢静脈瘤のサインかもしれません。下肢静脈瘤は放置すると進行し、日常生活に支障をきたすこともあります。本記事では、下肢静脈瘤の基本情報から、その治療方法、予防策、発症時の注意点まで、幅広く解説していきます。読者の皆様にとって、足の健康を守る一助となれば幸いです。

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤とはどんな病気ですか?
下肢静脈瘤は足の血管、特に静脈の弁がうまく機能しなくなって血液が足に溜まってしまう状態を指します。通常、私たちの静脈には血液が心臓に戻るための一方通行の弁があります。しかし、この弁が弱くなると血液が下方に逆流し、静脈内の圧力が高まります。その結果静脈が拡張し、曲がったりねじれたりすることで青く太い線のような形状が肌の表面に現れるのです。この状態が下肢静脈瘤です。主に、立ち仕事や重い物を頻繁に持つ作業、または長時間の座りっぱなしの姿勢などが要因となりやすいです。また、加齢による血管の弾力性の低下も発症の一因と考えられています。下肢静脈瘤は見た目に影響を与えるだけでなく、放置すると様々な健康問題を引き起こす可能性があります。症状に気づいたら、早めに専門医に相談しましょう。
下肢静脈瘤の症状について教えてください。
下肢静脈瘤の症状は個人差が大きく、その現れ方も多様です。主に、下肢静脈瘤は「伏在静脈瘤」「網目静脈瘤」「蜘蛛の巣静脈瘤」という三つのタイプに分けられます。・伏在静脈瘤
伏在静脈瘤は最も一般的に見られる下肢静脈瘤のタイプで、大きな静脈が弁の不全により隆起し、肌の表面に明確に見えるようになる症状です。直径3mm以上の太い静脈が特徴的で、肉眼で容易に確認できる程度にポコリと隆起します。このタイプの静脈瘤は、主にレーザー治療などの手術的アプローチで対処されます。

・網目静脈瘤
網目静脈瘤は皮膚のすぐ下にある細い静脈で発症し、青く網目状に見えるのが特徴です。直径2~3mmの細い静脈が関係しており、硬化剤を用いた注射治療(硬化療法)で治療することが多いです。

・蜘蛛の巣静脈瘤
最も細い静脈瘤で、直径が0.5~1mmと非常に小さい静脈が蜘蛛の巣のように広がって見えることからこの名前がつけられました。自覚症状がほとんどなく、治療の必要性は低いとされています。しかし、症状の進行を防ぐために、医療用弾性ストッキングの使用が推奨されることがあります。

下肢静脈瘤のタイプは進行度や症状の現れ方によって区別され、タイプごとに適した治療法が異なります。適切な治療を受けるために、自分の足に見られる症状がどのタイプに当てはまるのかを知っておくことが重要です。

下肢静脈瘤の治し方

ストリッピング手術について教えてください。
ストリッピング手術は、下肢静脈瘤の根治を目指す標準的な手術方法です。約100年以上前から実施されている手術で、日本でも広く行われています。手術の手順としては、主に足の付け根や膝裏の皮膚を約2cm切開し、問題のある静脈(大伏在静脈や小伏在静脈)を専用の器具で抜き取ります。その後、残った静脈瘤を小さな切開口から取り除きます。ストリッピング手術は再発率が非常に低く、安全性が高いとされています。ただし、手術中に細かい神経が損傷することがあり、その結果、約10%の患者さんに術後のしびれが発生することがあります。静脈を抜いてしまうことを不安に感じる方もいるかもしれませんが、取り除いた後に血液が正常な深部静脈に流れるようになるので心配は不要です。また、保険適用のため費用が安いこともメリットです。
硬化療法について教えてください。
硬化療法は、特定の薬剤(硬化剤)を静脈瘤内に注入し、静脈の内膜に炎症を起こさせることで、静脈を閉塞させる治療法です。施術時間が短いことが特徴で、10分から15分程度で外来通院のみで行えます。硬化剤を注入した静脈は徐々に縮小し、最終的には体内に吸収されて消失します。硬化療法は初期段階や細い静脈瘤に特に有効ですが、伏在静脈瘤への適応がない点は注意が必要です。無麻酔で行うことができ、施術後すぐに歩くことが可能です。また、手術のように切る必要がないため、傷跡がほとんど残りません。ただし、治療後には色素沈着やしこりの形成、静脈炎などの合併症が発生することがあります。また、硬化療法の場合、約20~30%の再発率が認められることもあります。
レーザー治療について教えてください。
レーザー治療は比較的新しい治療法で、静脈内にレーザー光を導く細い光ファイバーを使用して行います。光ファイバーを通じて血管内に照射されたレーザーの熱によって、静脈を閉塞させます。その際、傷跡がほとんど目立たないため、美容的なメリットもある治療法です。通常、局所麻酔を使用して行われ、日帰り手術が可能です。他の手術に比べて低侵襲であり、体への負担が少ないのが特徴です。海外の研究によれば、5年間の術後成績でストリッピング手術よりも優れた結果が示されており、長期的な予後も期待されています。欧米では既に15年以上の歴史があり、静脈瘤治療の主要な方法として広く行われています。日本ではかつて、レーザー治療は高額な自費診療として提供されていましたが、平成23年1月から健康保険適用となり、患者さんにとって負担が軽減されました。ただし、厚生労働省が認可した特定のレーザー治療機器(980nmと1470nmの波長を持つもの)で行った場合に限り、健康保険が適用されます。
圧迫療法について教えてください。
圧迫療法は、下肢静脈瘤の管理と症状の軽減に効果的な治療法です。医療用弾性ストッキングを使用して足に適度な圧力をかけることで、余分な血液が静脈瘤にたまるのを防ぎます。弾性ストッキングは足の血液流れを改善し、静脈瘤の腫れや重さを軽減する役割があります。ただし、圧迫療法は静脈瘤を完全に治療する方法ではなく、症状の管理と悪化の遅延を目的としています。通常、患者さんは毎朝起床時に弾性ストッキングを履き始め、帰宅や入浴まで着用を続けます。夜間や睡眠中にはストッキングを履いている必要はありません。また、時間とともにストッキングが緩んでくるので、半年程度を目安に新しいものを購入することが重要です。

圧迫療法は、静脈瘤の症状を軽減し、患者の生活の質を向上させる効果がありますが、根本的な治療ではないため、完全な静脈瘤の消失を期待するようなものではありません。症状の管理と予防の観点では有用な治療法として考えられています。

CAC治療(グルー治療)について教えてください。
CAC治療(グルー治療)は、下肢静脈瘤治療の中で比較的新しい方法の一つです。特殊な生体適合性のある接着剤を使用して静脈瘤を閉塞させます。治療のプロセスでは、専用の医療用接着剤を静脈内に注入し、静脈瘤の血管を閉じることで血液の流れを正常な経路に導きます。CAC治療(グルー治療)の大きな利点は、体への侵襲が非常に少ないことです。従来の手術方法と比較して、痛みや術後の回復期間が大幅に短縮され、患者さんの日常生活への影響が最小限に抑えられます。また、レーザー手術やストリッピング手術のように広範な局所麻酔や術後の圧迫療法が不要であるため、患者さんの負担が相対的に少ないです。

日本では、この治療法として保険適応されているのはVenaSeal™(ベナシール)のみです。VenaSeal™は、n-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)という瞬間接着剤の一種を静脈内に注入し、血管を閉塞させる方法です。

下肢静脈瘤の予防方法と発症時の注意点

下肢静脈瘤の予防方法と発症時の注意点

下肢静脈瘤を予防できる運動やマッサージはありますか?
下肢静脈瘤の予防には、日常生活で足を積極的に動かすことが重要です。特に、ふくらはぎの筋肉を動かすことで血液が足から心臓へ効率的に送られ、下肢静脈瘤の発症リスクを減らすことができます。具体的には、日常生活での軽い運動や散歩が下肢静脈瘤の予防に効果的です。毎日30分程度の歩行や軽いエクササイズが理想的ですが、まとまった時間が取れない場合でもエレベーターではなく階段を使う、普段より少し遠くの駐車スペースを利用する、一駅分歩くなどの小さな工夫をすることで足を動かす機会を増やすことができます。

入浴時や就寝前のマッサージを試してみるのも良いでしょう。ふくらはぎをマッサージすることで血液の循環が促進され、静脈瘤の予防に繋がります。寝る前や入浴後にふくらはぎを優しく下から上に向かってマッサージすることで、足の血液が心臓に向かって流れやすくなります。このような簡単なマッサージを日常に取り入れるだけでも、下肢静脈瘤の予防に効果が期待できます。他にも、特に長時間の立ち仕事や座りっぱなしの姿勢は避け、定期的に休憩を取り、足を高くするなどの工夫も大切です。また、歩きやすいウォーキングシューズを使用することでも、足への負担が軽減され、下肢静脈瘤の予防に役立ちます。

弾性ストッキングの着用について教えてください。
医療用の弾性ストッキングを着用することで、下肢静脈瘤の予防と発症時の管理を効果的に行うことができます。弾性ストッキングを着用していると足やふくらはぎに均等な圧力がかかるため、血液の逆流を防ぎ、下肢の血液循環を改善することができます。弾性ストッキングは特殊な編み方で作られており、様々なサイズ、形状、圧迫度があります。そのため、自分に合ったストッキングを選ぶには医師の診察を受け、足のサイズを正確に測定することが重要です。また、弾性ストッキングは下肢静脈瘤の発症予防だけでなく、足の疲れやむくみの緩和にも効果的です。

特に、立ち仕事をする方や長時間同じ姿勢でいることが多い方には、下肢静脈瘤の初期段階であっても、医療用弾性ストッキングの使用を積極的におすすめします。日常生活で使用し続けることで足の不快感を軽減し、静脈瘤の進行を遅らせるのに役立ちます。

編集部まとめ

編集部まとめ この記事では下肢静脈瘤の基本的な理解から、予防方法、治療法に至るまでを網羅的に解説しました。下肢静脈瘤は単に見た目の問題だけでなく、放置すると健康上のリスクをもたらす可能性があるため早めの対策が重要な病態です。日常生活での適度な運動やマッサージ、医療用弾性ストッキングの着用など、簡単に取り入れられる予防策が多数存在します。この記事が下肢静脈瘤に関する知識を身につけ、適切なケアを実施できるようになるための一助になっていれば幸いです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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