下肢静脈瘤をご存じでしょうか。下肢静脈瘤は、足の静脈が太く膨らむ病気で、主に立ち仕事や高齢者、女性に多く見られます。症状は重苦しさやだるさ、痛み、むくみなどで、放置すると皮膚に変化が生じ、悪化します。そんな下肢静脈瘤には治療法がいくつか存在し、患者さんにより適した治療法が選択されます。 本記事では下肢静脈瘤の治療法の一つである硬化療法について以下の点を中心にご紹介します。
- 硬化療法の概要
- 硬化療法のメリット・デメリット
- 硬化療法の費用
下肢静脈瘤の治療法の一つである硬化療法について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
下肢静脈瘤の硬化療法について
- 硬化療法の概要を教えてください。
- 硬化療法は、下肢静脈瘤の治療法の一つで、特定の薬剤(ポリドカスクレロール)を静脈瘤に注入し、その後、皮膚の上から圧迫して静脈を閉塞させる治療法です。硬化療法により、静脈瘤は徐々に小さくなり、最終的には体内で吸収されて消えます。
硬化療法は外来で行われ、手術のように傷が残ることはありません。しかし、すべての静脈瘤が硬化療法に適しているわけではなく、初期の静脈瘤や細い静脈瘤に対してのみ有効とされ、伏在静脈瘤に対しては適用できません。したがって、硬化療法は手術やレーザー治療の補助的な治療法と考えることが推奨されます。
- 硬化療法の歴史を教えてください。
- 下肢静脈瘤の硬化療法の歴史は、1840年代に遡ります。初期の硬化剤としては無水アルコールが使用され、その後、塩化鉄、ヨードタンニン液、クロラール、5%石炭酸、高張ブドウ糖液、クエン酸ソーダなどが使用されました。そして、1930年代から1950年代にかけて、新たな硬化剤が開発され、1950年代から1960年代にかけては、圧迫併用硬化療法の概念が取り入れられ、再び注目を浴びるようになりました。
1990年代半ばからは、フォーム硬化療法が行われるようになり、下肢静脈瘤の治療成績も向上しました。液状硬化剤が静脈内で血流により急速に希釈されるのに対し、フォーム硬化療法のフォーム硬化剤は、血管の内皮への接触範囲が広く、接触時間が長いため、血管内皮に対する障害の働きが強いという特性を持っています。
このように、硬化療法の歴史は、安定性を追求する過程で、多くの進化と変化を経てきました。
- 硬化療法はどれくらいの時間がかかりますか?
- 下肢静脈瘤の硬化療法は外来で行われ、所要時間は約10分となっています。潰した静脈は初めは硬いですが、約半年から1年の間に徐々に体内で吸収され、サイズが縮小し、最終的には消えてしまいます。
下肢静脈瘤の硬化療法のメリット・デメリットと合併症について
- 硬化療法のメリットは何ですか?
- 下肢静脈瘤の硬化療法のメリットは以下の通りです。
- 1. 短時間で治療ができること:硬化療法は短時間(約10分)で行えます。
- 2. 痛みが少ない:治療に使用する針は細いため、治療時の痛みは少ないです。
- 3. 日帰り治療:硬化療法は日帰りで行うことができ、入院の必要はありません。
- 4. 傷跡が残らない:皮膚を切開することなく治療するため、傷跡が残りません。
- 5. 細かい静脈瘤に対応できること:細かく網目状に広がったクモの巣のような静脈瘤にも対処可能とされています。
しかし、後述しますが、硬化療法にもデメリットはあります。デメリットも考慮に入れて、医師と相談しながら適切な治療法を選択することが重要です。
- 硬化療法のデメリットは何ですか?
- 下肢静脈瘤の硬化療法には、以下のようなデメリットもあります。
- 1. 大きな静脈瘤には効果が期待できない:硬化療法は主に小さな静脈瘤に対して効果的とされますが、大きな静脈瘤に対してはあまり効果が期待できません。
- 2. 再発率が高い:硬化療法は簡単な治療法ですが、外科手術より再発率が高いという欠点があります。
- 3. 見た目の問題:硬化療法後、しばらくの間は皮膚の色素沈着やしこりが見られることがあり、見た目の問題となる可能性があります。
- 硬化療法は合併症の可能性がありますか?
- 下肢静脈瘤の硬化療法にはいくつかの合併症の可能性もあります。まず、硬化剤に対するアレルギー反応が起こる可能性があります。
また、手術直後には傷口に痛みを感じる可能性がありますが、徐々に軽減していきます。 そして、前述した通り、硬化剤の注入後や血栓性静脈炎の合併症後には、皮膚に色素沈着が見られることもありますが、ほとんどの色素沈着は6ヶ月〜1年程度でほぼ消失します。さらに繰り返しになりますが、硬化療法では再発の可能性もあります。特に、遺伝的な要素を持つ静脈瘤、組織学的にはほぼ正常な静脈瘤、若い年齢で発生する静脈瘤は、再発率が高い傾向が多く見られます。しかし、もし再発したとしても、静脈瘤の治療法を変更すれば、繰り返し治療を行えます。
したがって、硬化療法は有効とされる治療法である一方で、合併症のリスクが伴う可能性があります。そのため、治療法を選択する際は、医師と十分に話し合うことが求められます。
下肢静脈瘤の硬化療法の費用について
- 硬化療法は保険が適用されますか?
- 下肢静脈瘤の硬化療法は、健康保険が適用される治療法の一つです。ただし、硬化療法は血管にある程度の太さが必要で、注射できないほど細い血管では治療対象外となる可能性があります。
- 硬化療法の費用相場を教えてください。
- 下肢静脈瘤の硬化療法は、令和4年度の診療報酬点数によれば、一連としての費用は1,720点となっています。診療報酬点数は、1点=10円と計算されるので、下肢静脈瘤の硬化療法の医療費は、3割負担の場合、5160円となります。
ただし、上記はあくまで硬化療法のみの診療報酬点数であり、実際の合計費用はクリニックや病院により異なる可能性があります。具体的な費用については、直接クリニックや病院に問い合わせることをおすすめします。また、治療費用は患者さんの症状や治療の範囲、必要な処置などにより変動することもありますので、よく確認するようにしてください。
編集部まとめ
ここまで下肢静脈瘤の治療法の一つである硬化療法についてお伝えしてきました。下肢静脈瘤の治療法の一つである硬化療法の要点をまとめると以下の通りです。
- 硬化療法は、下肢静脈瘤の治療法の一つで、特定の薬剤(ポリドカスクレロール)を静脈瘤に注入し、その後、皮膚の上から圧迫して静脈を閉塞させる治療法
- 下肢静脈瘤の硬化療法のメリットは、短時間で治療ができること、痛みが少なく、傷跡が残らないことなどがあり、デメリットは、大きな静脈瘤には効果が期待できないこと、再発率が高いこと、見た目の問題などがある
- 下肢静脈瘤の硬化療法は保険が適用され、令和4年度の診療報酬点数を基にすると、3割負担で5160円となるが、クリニックや病院によって合計費用は異なる可能性があるので、よく確認することが大切
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。