下肢静脈瘤の手術後の過ごし方をご存じですか？ 本記事では、下肢静脈瘤の手術後の過ごし方について以下の点を中心にご紹介します！
- 下肢静脈瘤について
- 下肢静脈瘤の治療方法
- 下肢静脈瘤の手術後の過ごし方
下肢静脈瘤の手術後の過ごし方について理解するためにもご参考いただけると幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
下肢静脈瘤とは
- 下肢静脈瘤について教えてください。
- 下肢静脈瘤とは、足の静脈が拡張して太くなり、皮膚の表面から見えるようになる病気です。静脈は、体の各部分から心臓に血液を戻す役割を果たしていますが、下肢の静脈は重力に逆らって血液を運ばなければなりません。そのため、静脈の内側には逆流防止弁という仕組みがあります。この逆流防止弁が正常に働かなくなると、血液が足に溜まって静脈が膨らみます。
下肢静脈瘤の出来やすい人は、女性、高齢者、遺伝的な要因がある人、妊娠や出産を経験した人、肥満や便秘などで腹圧が高い人、立ち仕事や座り仕事で足の血流が悪い人などです。下肢静脈瘤の進行を防ぐためには、適度な運動、足のマッサージ、着圧ソックスやストッキングの着用、塩分やカフェインの摂取の控えめ、水分の十分な摂取、足を高くするなどの方法があります。
- 下肢静脈瘤にはどんな症状がありますか？
- 下肢静脈瘤には以下のような症状があります。
足の重だるさやむくみ：下肢静脈瘤ができると、血液が足に溜まって静脈が膨らみます。そのため、足に重みが感じられたり、むくんだりします。特に、長時間立ったり座ったりすると、症状が悪化します。
足の痛みやしびれ：下肢静脈瘤が進行すると、静脈の圧力が高まり、神経や筋肉に影響を与えます。そのため、足に痛みやしびれが生じたり、歩行が困難になったりします。
足のかゆみ：下肢静脈瘤ができると、血液の流れが悪くなり、皮膚に栄養や酸素が十分に届きません。そのため、皮膚が乾燥したり、炎症を起こしたりして、かゆみが生じます。
皮膚の色素沈着や硬化：下肢静脈瘤ができると、血液中の赤血球が破壊され、ヘモグロビンが皮膚に漏れ出します。そのため、皮膚に茶色や紫色のしみができたり、皮膚が硬くなったりします。
潰瘍：下肢静脈瘤ができると、皮膚の血行が悪くなり、傷が改善しにくくなります。そのため、皮膚に潰瘍ができたり、感染したりします。潰瘍は、非常に痛みが強く、治療が難しい場合があります。
- 下肢静脈瘤はどのように診断されますか？
- 下肢静脈瘤の診断は、以下のような方法で行われます。
問診：患者さんの症状や生活習慣、家族歴などを聞きます。これにより、下肢静脈瘤の原因やリスク因子を把握します。
視診：足の静脈の形や色、皮膚の状態などを目で確認します。これにより、下肢静脈瘤の程度や合併症の有無を判断します。
触診：足の静脈を指で触って、その硬さや動き、温度などを感じます。これにより、下肢静脈瘤の性質や血流の状態を評価します。
画像検査：足の静脈の内部を見るために、超音波検査や血管造影などの画像検査を行います。これにより、下肢静脈瘤の位置や大きさ、逆流防止弁の機能、血栓の有無などを確認します。
下肢静脈瘤の診断は、これらの方法の組み合わせで行われます。また、診断の結果によって、下肢静脈瘤の治療法や予後が決まります。
下肢静脈瘤の治療方法
- 圧迫療法について教えてください。
- 圧迫療法とは、下肢静脈瘤の保存的治療の一つで、弾性ストッキングや包帯などを足に巻いて、静脈に適度な圧力をかける方法です。圧迫療法は、医師の指示に従って、適切な強さや時間で行う必要があります。弾性ストッキングや包帯は、足の形やサイズに合わせて選ぶ必要があります。また、圧迫療法は、下肢静脈瘤の根本的な治療ではなく、症状の緩和や予防に役立つ治療です。圧迫療法の目的は、以下のようなものです。
血液の逆流を防ぐ：下肢静脈瘤ができると、静脈の逆流防止弁が正常に働かなくなり、血液が足に溜まって静脈が膨らみます。圧迫療法によって、静脈の直径を狭めて、血液の逆流を防ぎます。
血液の循環を改善する：下肢静脈瘤ができると、血液の流れが悪くなり、足に重だるさやむくみ、痛みなどの症状が出ます。圧迫療法によって、静脈の圧力を下げて、血液の循環を改善します。
合併症を予防する：下肢静脈瘤ができると、血栓や静脈炎、静脈性潰瘍などの合併症を引き起こす可能性があります。圧迫療法によって、血液の凝固を防いだり、皮膚の炎症を抑えたりして、合併症を予防します。
- 硬化療法について教えてください。
- 硬化療法とは、下肢静脈瘤の手術的治療の一つで、刺激性の薬剤を静脈瘤内に注入して、静脈を閉塞させる（ふさぐ）方法です。硬化療法の目的は、以下のようなものです。
静脈瘤の除去：硬化療法によって、静脈瘤内に薬剤が入り、静脈の壁が炎症を起こして癒着します。その結果、静脈瘤は消失して、足の見た目が改善されます。
血液の迂回路の形成：硬化療法によって、静脈瘤が閉塞されると、血液は他の正常な静脈に流れます。そのため、血液の逆流や滞留が防がれて、血液の循環が改善されます。 また、硬化療法は、主に細い静脈瘤に対して実施され、外来で行えます。
以下では、硬化療法の手順を解説します。
まず静脈瘤の位置や大きさを超音波検査で確認します。静脈瘤に細い針を刺して、薬剤を注入します。注入する薬剤の種類や量は、静脈瘤の状態によって決められます。
注入後、弾性ストッキングや包帯を足に巻いて、圧迫します。圧迫することで、静脈の閉塞を促進します。
圧迫期間は、数日から数週間です。その間、定期的に医師の診察を受けます。
硬化療法は、注入部位の痛みや炎症、皮膚の色素沈着や潰瘍、アレルギー反応やショック、血栓や静脈炎、神経障害や動脈損傷など、副作用や合併症が起こる可能性があるため注意が必要です。
- 手術療法について教えてください。
- 手術療法とは、下肢静脈瘤の手術的治療の一つで、静脈瘤を切除する方法です。手術療法の目的は、以下のようなものです。
静脈瘤の根本的な除去：手術療法によって、静脈瘤を直接切除することで、足の見た目を改善し、再発の可能性を低減します。
血液の迂回路の形成：手術療法によって、静脈瘤が切除されると、血液は他の正常な静脈に流れます。そのため、血液の逆流や滞留が防がれて、血液の循環が改善されます。
手術療法は、主に中等症以上の静脈瘤に対して実施されます。手術療法の種類には、以下のようなものがあります。
静脈瘤抜去術（ストリッピング術）：静脈瘤のある大静脈や小静脈を、足の付け根やひざの裏などの部分から切開して、専用の器具で引き抜く方法です。一般的には全身麻酔や脊椎麻酔で行われます。手術時間は約1時間です。
静脈瘤切除術（フレベクトミー）：静脈瘤のある部分を、小さな切開や穿刺で切除する方法です。局所麻酔で行われます。手術時間は約30分です。
静脈瘤結紮術：静脈瘤のある部分を、糸やクリップで結紮して、血流を遮断する方法です。局所麻酔で行われます。手術時間は約15分です。
- 血管内治療について教えてください。
- 血管内治療とは、下肢静脈瘤の治療の一つで、静脈瘤に直接レーザーや電気などのエネルギーを送って、静脈を閉塞させる方法です。血管内治療の目的は、以下のようなものです。
静脈瘤の除去：血管内治療によって、静脈瘤にエネルギーが入り、静脈の壁が熱傷を起こして癒着します。その結果、静脈瘤は消失して、足の見た目が改善されます。
血液の迂回路の形成：血管内治療によって、静脈瘤が閉塞されると、血液は他の正常な静脈に流れます。そのため、血液の逆流や滞留が防がれて、血液の循環が改善されます。
血管内治療は、主に中等症以上の静脈瘤に対して実施されます。血管内治療の種類には、以下のようなものがあります。
レーザー治療：静脈瘤に細い光ファイバーを挿入して、レーザー光を照射する方法です。レーザー光は、静脈の壁に熱を発生させて、静脈を閉塞させます。局所麻酔で行われます。手術時間は約30分です。
高周波治療：静脈瘤に細い電極を挿入して、高周波電流を流す方法です。高周波電流は、静脈の壁に熱を発生させて、静脈を閉塞させます。局所麻酔で行われます。手術時間は約30分です。
グルー治療：静脈瘤に特殊な接着剤を注入する方法です。接着剤は、静脈の壁をくっつけて、静脈を閉塞させます。麻酔は必要ありません。手術時間は約15分です。
下肢静脈瘤手術後の過ごし方について
- 手術後の入浴や仕事復帰はいつからできますか？
- 手術後の入浴は、傷口の状態や感染のリスクによって制限される場合があります。一般的には、傷口が完全に乾いてから、シャワーなら3日目、湯船なら1週間目から入浴できます。ただし、入浴の際は、弾性ストッキングや包帯を外さないように注意してください。また、入浴時間は短めにし、熱すぎるお湯は避けてください。
手術後の仕事復帰は、手術の規模や仕事の内容によって異なりますが、軽度な仕事なら1週間目程度、中等度な仕事なら2週間目程度、重度な仕事なら4週間目程度から復帰できます。ただし、仕事復帰の際は、長時間の立ち仕事や座り仕事は避けて、適度な休憩や運動を取り入れてください。また、弾性ストッキングや包帯の着用を続けてください。
- 運動やマッサージはいつから行って良いですか？
- 手術後の運動は、血液の循環を促進し、静脈瘤の再発や合併症予防に役立ちます。一般的には、手術当日から軽い運動を始められます。例えば、足首の回し運動や足の上げ下げ運動などです。また、手術後1週間目からは、散歩や自転車などの有酸素運動が可能とされます。ただし、運動の際は、弾性ストッキングや包帯を着用し、無理をしないように注意してください。
また、ジョギングやスキーなどの激しい運動は、手術後1ヶ月以上経ってから行うようにしてください。手術後のマッサージは、血液の流れを改善し、足のむくみや痛みを和らげる際に役立ちます。一般的には、手術後3日目からマッサージが可能です。ただし、マッサージの際は、傷口を刺激しないように注意してください。また、弾性ストッキングや包帯を外さないように注意してください。マッサージの方法は、足の指先から心臓に向かって、優しくさするように行います。マッサージの時間は、1回10分程度が目安です。
- 術後合併症の静脈血栓症の予防方法について教えてください。
- 下肢静脈瘤は手術で静脈瘤を除去することで、症状の改善や再発の予防が期待できますが、手術後にも注意が必要です。特に、静脈血栓症という合併症には十分に気を付ける必要があります。静脈血栓症とは、静脈の中に血液が固まって詰まる状態のことです。
下肢静脈瘤の手術後は、血液の流れが悪くなったり、血管が傷ついたりすることで、血栓ができやすくなります。血栓ができると、足の痛みや腫れ、発熱などの症状が出ることがあります。また、血栓がはがれて肺に達すると、肺塞栓症という重篤な合併症を引き起こすことがあります。肺塞栓症は、呼吸困難や胸痛、失神などの症状が出ることがあり、命に関わることもあります。 静脈血栓症を予防するためには、以下のことに注意する必要があります。圧迫療法：手術後は、弾性ストッキングや包帯などで足を圧迫することで、血液の流れを促進し、血栓の形成を防ぎます。圧迫療法は、手術後1ヶ月程度は続けることが推奨されています。圧迫療法の方法や期間については、医師の指示に従ってください。
適度な運動：手術後は、無理をせずに足の筋肉を動かすことで、血液の循環を良くします。運動は、歩行や足首の回し運動などがおすすめです。
水分補給：手術後は、水分を十分に摂ることで、血液の粘度を下げて血栓の形成を防ぎます。水分補給は、水やお茶などの無糖の飲み物がおすすめです。
禁煙：喫煙は、血液の凝固性を高めて血栓の形成を促進することがあります。手術後は、禁煙することで、静脈血栓症の予防に役立ちます。
早期発見：静脈血栓症の症状に気づいたら、すぐに医師に相談してください。静脈血栓症は、早期に発見して治療することで、重篤な合併症を防げるでしょう。
- 手術後に日常生活で気を付けることはありますか？
- 下肢静脈瘤の手術後は、以下の点に気を付けましょう。
長時間の立ち仕事や座り仕事を避ける：長時間の立ち仕事や座り仕事は、足の血液の流れを悪くして、静脈瘤の再発や合併症を引き起こす可能性があります。手術後は、定期的に休憩を取って、足を動かしたり、上げたりすることが大切です。
弾性ストッキングや包帯の着用を続ける：手術後は、弾性ストッキングや包帯などで足を圧迫することで、血液の流れを促進し、静脈瘤の再発や合併症を予防します。弾性ストッキングや包帯の着用は、手術後1ヶ月程度は続けることが推奨されています。着用の方法や期間については、医師の指示に従ってください。
適度に運動を行う：運動は、血液の循環を良くして、静脈瘤の再発や合併症の予防に役立ちます。手術後は、無理をせずに足の筋肉を動かすことが大切です。運動は、歩行や自転車などの有酸素運動がおすすめです。運動の強度や時間については、医師の指示に従ってください。
水分補給や禁煙を心がける：水分補給は、血液の粘度を下げて血栓の形成を防ぎます。水分補給は、水やお茶などの無糖の飲み物がおすすめです。水分補給の量については、医師の指示に従ってください。禁煙は、血液の凝固性を高めて血栓の形成を促進することがあります。手術後は、禁煙することで、静脈血栓症の予防に役立ちます。禁煙の方法や期間については、医師の指示に従ってください。
手術後は、医師の指示に従って、長時間の立ち仕事や座り仕事を避けたり、弾性ストッキングや包帯の着用を続けたり、適度な運動や水分補給や禁煙を心がけたりすることで、静脈瘤の再発や合併症の予防に努めましょう。
編集部まとめ
ここまで下肢静脈瘤の手術後の過ごし方についてお伝えしてきました。 下肢静脈瘤の手術後の過ごし方の要点をまとめると以下の通りです。
- 下肢静脈瘤とは足の静脈が拡張して太くなり、皮膚の表面から見えるようになる病気
- 下肢静脈瘤の治療方法には、圧迫療法、硬化療法、手術、血管内治療などがある
- 下肢静脈瘤の手術後は医師の指示に従い、適度な運動や禁煙、水分補給を心掛ける
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。
