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下肢静脈瘤

下肢静脈瘤は予防できる?下肢静脈瘤の原因や予防方法について解説

下肢静脈瘤 予防方法

下肢静脈瘤という病気をご存じでしょうか。下肢静脈瘤は、足の静脈が拡大し、瘤状に見える状態を指します。治療できるとされている病気ですが、予防できたらより良いですよね。 そこで本記事では、下肢静脈瘤の予防方法について以下の点を中心にご紹介します。

  • 下肢静脈瘤の原因
  • 下肢静脈瘤になりやすい人
  • 下肢静脈瘤の予防方法

下肢静脈瘤の予防方法について理解するためにもご参考いただけると幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

下肢静脈瘤の症状

下肢静脈瘤の症状

下肢静脈瘤は良性ですが、自然に治ることもありません。
主な症状としては、足のだるさ、むくみ、こむら返り(足がつること)です。これらの症状は1日中起こるわけではなく、長時間立っていた後や昼から夕方にかけて現れることが多いようです。また、皮膚の循環が悪くなると、湿疹や色素沈着などの皮膚炎を引き起こすことがあります。皮膚炎が悪化すると、潰瘍ができることや、出血することがあります。
重要なことは、これらの症状が全て下肢静脈瘤のせいとは限らないということです。特に50〜60歳ぐらいの方は、変形性膝関節症や脊柱管狭窄症などの整形外科の病気の可能性もあります。したがって、これらの症状がある場合は、専門の医師に相談することが重要です。

下肢静脈瘤の原因

下肢静脈瘤の原因

下肢静脈瘤の主な原因は「静脈弁」の機能不全とそれによって引き起こされる静脈内の老廃物の蓄積です。
静脈弁は、血液が心臓に向かって一方向に流れることを助ける役割を果たします。しかし、静脈弁が壊れると、血液が逆流し、足の静脈内に溜まってしまいます。
この逆流が続くと、静脈弁の故障が連鎖的に引き起こされ、静脈内に老廃物がどんどん溜まり続けます。その結果、足が疲れやすくなったり、疲労感がなかなか消えなかったり、座っているだけでも足がこむら返りを起こすようになります。さらに進行すると、皮膚炎や潰瘍、感染症を引き起こす可能性もあります。したがって、早期の発見と適切な治療が重要となります。

下肢静脈瘤になりやすい人

下肢静脈瘤になりやすい人

下肢静脈瘤の原因は静脈弁の機能不全と解説しましたが、その機能不全が起こりやすいとされる人が存在します。以下では、下肢静脈瘤になりやすいといわれている人について紹介します。

妊娠や出産の経験がある

下肢静脈瘤は、特に女性に多く見られます。その主な原因の1つとして、妊娠や出産が挙げられます。妊娠や出産は、体内のホルモンバランスを変化させ、静脈の壁を弱める可能性があります。さらに、胎児の成長に伴う子宮の拡大が、下腹部の静脈を圧迫し、血流を妨げることがあります。
これらの要素は、静脈の弁が正常に機能しなくなり、血液が逆流する可能性を高めます。その結果、静脈が膨張し、下肢静脈瘤を引き起こす可能性があります。特に、複数回の出産を経験した女性は、上記の理由により下肢静脈瘤のリスクが高まると考えられています。

立ち仕事やデスクワークをしている

立ち仕事やデスクワークをしている人々は、下肢静脈瘤になりやすいとされています。これは、長時間同じ姿勢を続けることで、足の筋肉が動かなくなり、静脈内の血液の流れが悪くなるためです。
職の例を挙げると、調理師、パティシエ、美容師、販売員、農家などが該当します。静脈内の血液の流れが悪い状況が続くと、静脈内に血液が溜まり、足が重く感じられ、むくみやだるさなどの症状が現れやすくなります。したがって、立ち仕事やデスクワークをしている人々は、定期的に足を動かすことや、適度な休憩を取ることが推奨されます。これにより、足の筋肉のポンプ作用が活性化し、静脈内の血液の流れが改善され、下肢静脈瘤のリスクが低減されます。

遺伝的な要因

下肢静脈瘤が遺伝子と関連しているというのはまだ解明されていませんが、特定の遺伝的特性を持つ人々は、静脈の弁の機能不全や血流の滞りやすさなど、下肢静脈瘤を発症しやすい体質を持つ可能性があるといわれています。また、血縁者に下肢静脈瘤を患った人がいる場合、先天的に発症しやすい体質を持っている可能性があるともいわれています。このような遺伝的な要素は、男女や年齢を問わず、下肢静脈瘤の発症に影響を及ぼすことがあります。したがって、家族歴や遺伝的な要素を持つ人々は、下肢静脈瘤のリスクが高いと言えます。

加齢

下肢静脈瘤は、年齢とともにリスクが増える疾患です。理由は、年齢が上がると静脈の弁の機能が低下し、血液の逆流を防ぐ能力が弱まるためです。この逆流が静脈瘤の形成を引き起こします。また、加齢により血管壁の弾性が失われ、血液の流れが滞りやすくなることも、下肢静脈瘤の発症に寄与するとされています。したがって、年齢が上がるほど下肢静脈瘤のリスクは高まります。

肥満

下肢静脈瘤の原因となる要素の1つに「肥満」があります。肥満の状態では、腹部の圧力が増大し、圧力により下肢の静脈や弁に大きな負荷をかけます。さらに、血液中の脂質やコレステロール値が高いと、血栓性静脈炎のリスクが増え、静脈瘤に痛みを引き起こす可能性があります。したがって、肥満は下肢静脈瘤の発症に影響を与える重要な要素となります。

下肢静脈瘤の治療

下肢静脈瘤の治療

下肢静脈瘤の治療法はいくつかあり、患者さんの状態などによって適切な治療法が選択されます。以下で、下肢静脈瘤の治療法を5つ解説します。

圧迫療法

下肢静脈瘤の治療における基本的なアプローチは「圧迫療法」です。
圧迫療法は、主に医療用弾性ストッキングを使用します。医療用弾性ストッキングは、足首部分で強い圧力をかけ、心臓に向かって圧力が徐々に弱くなる設計になっています。これにより、血液の逆流や停滞を抑制することが可能とされます。また、患者さん一人ひとりの足のサイズや症状に合わせて圧力を調整できます。市販の弾性ストッキングもありますが、適切なサイズと圧力のものを選ばなければ効果は期待できません。症状によって必要な圧力は異なるため、適切な医療用弾性ストッキングを選ぶことが重要です。
ただし、医療用弾性ストッキングは、脚のむくみや重さ、だるさなどの症状が軽減される一方で、静脈瘤を消すことはできません。そのため、症状が重い方は、手術と併せてこの治療法を行うことがあります。また、静脈瘤の悪化や再発を防ぐ効果も期待できます。
下肢静脈瘤の治療の際は必ず医療機関で診察を受け、適切なストッキングを選んでください。

ストリッピング手術

「ストリッピング手術」は下肢静脈瘤の治療法として広く認知されています。ストリッピング手術は、拡張や瘤化した静脈を取り除くために行われ、レーザー治療が適用できない場合や、血管が太すぎる場合など、特に重症の患者さんに対して役立つとされています。手術は局所麻酔下で行われ、皮膚の小さな切開から始まります。エコー検査やCT検査を用いて、問題のある部分を特定し、その部分を的確に治療します。
ストリッピング手術はワイヤーを用いて血管を結びつけ、引き抜いて切除する方法と、切開を抑え、細い器具と注射器を主に使用する内翻ストリッピング手術があります。
メリットがある治療法ですが、注意が必要な点として、抜去した静脈が途中で断裂する可能性や、再発する可能性があるとされています。

血管内焼灼治療

血管内焼灼治療は、下肢静脈瘤の治療法の1つで、静脈を直接引き抜くストリッピング手術とは異なり、静脈を内部から焼灼して閉塞させる方法です。この治療では、細い管(カテーテル)を静脈に挿入し、その内部から熱を加えて焼灼します。焼灼された静脈は、治療後約半年で体内に吸収され、消失します。
血管内焼灼治療は、局所麻酔下で行われ、カテーテルの挿入のみが必要なため、ストリッピング手術のような入院は基本的に不要です。日帰りでの治療が可能な場合もある、体への負担が軽減された治療法です。

血管内焼灼治療には、高周波(ラジオ波)を使用する高周波治療と、レーザーを使用するレーザー治療の2つの主要な方法があります。どちらの治療法も、日本では保険適用となっています。
レーザー治療では、光ファイバーを通じてレーザーが血管壁に全周性に照射され、血管壁を焼灼します。一方、高周波治療では、7㎝のコイルが発熱し、それを血管壁に密着させて焼灼します。どちらの方法も、治療成績に大きな違いはないとされています。

高位結紮術

高位結紮術は、伏在静脈の拡張が中等度の場合に選択される治療法です。高位結紮術は局所麻酔下で行われ、大伏在静脈瘤と小伏在静脈瘤の両方に対応可能な治療法とされています。手術では、伏在静脈を露出し、深部静脈への流入部を確認した上で、伏在静脈を二重結紮し、切離します。この際、深部静脈に流入する分枝も結紮切離します。
高位結紮術は、悪化した静脈を取り除くストリッピング手術とは異なり、逆流している静脈を逆流しないように血管を縛ることで、血液の逆流を防ぎます。また、弾性ストッキングの併用により、再発の防止が期待できます。
しかし、新しい治療法の開発に伴い、高位結紮術の実施件数は現在では減少傾向にあります。それでも、特定の症状に対しては役立つ治療法として位置づけられています。

硬化療法

硬化療法は、静脈瘤の治療法の1つで、特に軽度な下肢静脈瘤(網目状・クモの巣状静脈瘤)に対して有効とされています。硬化療法では、静脈瘤が見られる部分に硬化剤を注射し、静脈瘤を直接破壊します。硬化剤の働きにより、血管内の血液が凝固し、血流が遮断されます。
治療直後、注射部位は一時的にしこりや色素沈着を引き起こすことがありますが、これらは時間とともに薄くなり、最終的には消失します。しこりは約半年で消え、色素沈着は1〜2年程度で消えるとされています。
さらに、硬化療法の後には弾性ストッキングの使用が推奨されます。理由は、静脈瘤の再発を防ぐためです。

下肢静脈瘤の予防方法

下肢静脈瘤の予防方法

繰り返しになりますが、下肢静脈瘤は治療しないと治ることはないので、予防が大切となります。最後に、下肢静脈瘤の予防方法を紹介します。

長時間の立ち仕事や座りっぱなしを避ける

下肢静脈瘤の予防には、長時間の立ち仕事や座りっぱなしを避けることが重要です。理由は、重力の影響で血液の逆流が増加し、静脈瘤のリスクが高まるためです。立ち仕事や座りっぱなしの状態を避け、定期的に足を動かすことで血流を改善し、静脈瘤の発症を防ぎましょう。また、足をフラットに保つか、それ以上に上げることを心掛けると、血流が改善し、浮腫みの予防にもなります。

弾性ストッキングの着用

弾性ストッキングの着用は、下肢静脈瘤の予防に役立つとされています。弾性ストッキングは、血液の逆流を防ぐために特別な編み方で作られています。特に立ち仕事が多い方や妊娠中の方は、症状が出始める前から着用することが推奨されています。これにより、足のダルさやむくみなども改善されます。市販のストッキングも一定の圧迫力が期待できますが、静脈瘤専用ストッキングの方が圧力は高いです。ただし、静脈瘤用ストッキングがきつくて履けない方は、市販のストッキングの着用も良いとされています。

足を高くして寝る

下肢静脈瘤の予防には、寝る際に足を高くすることも良いとされています。足を高くして寝ることで、心臓よりも足を高い位置に保ち、血液の流れを促進し、足への血液の滞留を防ぎます。具体的な方法としては、寝るときに枕やクッションを膝の下に置くなどすると良いでしょう。これにより、血液が心臓に戻りやすくなります。また、長時間立っていたり座っていたりすることが多い方は特に有効とされています。

適度な運動

下肢静脈瘤の予防には、適度な運動も重要です。運動は血液の流れを改善し、静脈の滞りを防ぎます。特に、足首を動かす運動が効果的とされ、足首を動かす運動は静脈弁の負担を軽減し、予防につながります。しかし、過度な運動は静脈弁に負担をかけるため、適度な運動量の調整が必要です。また、定期的に足を上げたり、足を上げて寝たり、足首から太ももを心臓方向にマッサージしたり、毎日歩いたりすることも、下肢静脈瘤の予防に効果的とされます。

ストレッチやマッサージ

下肢静脈瘤の予防にはマッサージも効果的とされています。寝る前や入浴時に、座っているときに、手のひらを使ってふくらはぎを下部から上部へと優しく動かすように2〜3分間程度のマッサージを行うと良いでしょう。これにより、足の血液が心臓に送られ、下肢静脈瘤の予防につながります。

生活習慣を整える

どんな病気にも言えることですが、下肢静脈瘤の予防には、健全な生活習慣が重要です。体重管理は特に重要で、適切な食事と適度な運動を通じて肥満を避けることが推奨されています。生活習慣の改善は、下肢静脈瘤の予防だけでなく、全般的な健康維持にも寄与します。

まとめ

まとめ

ここまで下肢静脈瘤の予防方法についてお伝えしてきました。 下肢静脈瘤の予防方法の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 下肢静脈瘤の原因は、静脈弁の機能不全とそれによって引き起こされる静脈内の老廃物の蓄積
  • 下肢静脈瘤になりやすい人は、妊娠や出産の経験がある女性や立ち仕事やデスクワークをしている人、高齢者や肥満体型の人などである
  • 下肢静脈瘤の予防方法は、長時間の立ち仕事や座りっぱなしを避けることや弾性ストッキングを着用すること、足を高くして寝ること、適度に運動すること、ストレッチやマッサージをすること、生活習慣を整えることなどがある

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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