皆さんは、下肢静脈瘤という病気を知っているでしょうか。また、下肢静脈瘤にはどのような症状があるかをご存じでしょうか。この記事では、下肢静脈瘤とはどのような病気で、どのような症状・治療法があるのかを解説します。ぜひ参考にしてみてください。
下肢静脈瘤について
まずは下肢静脈瘤という病気について説明します。
- 下肢静脈瘤とはどのようなものか教えてください
- 下肢静脈瘤は、本来は循環するはずの血液が足の静脈内にたまってしまう病気です。血流を支える静脈弁が壊れたことで血液が停滞してしまい、足の血管のいたるところがこぶのように膨らんでしまいます。主な症状としては、足のむくみ、だるさや重さ、疲れやすさ、不快感などがあり、足をつることも多くなります。放っておくとかゆみや湿疹が現れることもあり、重症化すると皮膚の黒ずみやただれといった症状も生じます。こぶ状に膨らむ箇所は、足の裏側など日常ではあまり目につかない場所であることも多いため、何か違和感を覚えた場合には早めに医療機関に相談しましょう。
- 下肢静脈瘤の種類について教えてください
- 下肢静脈瘤には4つの種類があります。これらは静脈の太さによって分けられており、直径0. 1〜1mmの場合にはくもの巣状静脈瘤と呼ばれます。正確にはこぶ状にはなっておらず、基本的には治療の必要性がないものです。1~2mmの静脈瘤は網目状静脈瘤と呼ばれ、太ももの裏側やひざ裏などによく見られます。静脈が青く鮮明に見えることも特徴です。静脈瘤が3~4mmのものは、即枝型静脈瘤といいます。比較的ひざより下の足に発症することが多く、それほどの症状はないため気づきにくいという特徴があります。伏在型静脈瘤は、4mm以上の静脈瘤ができている場合を指します。大伏在静脈瘤と小伏在静脈瘤のさらに二つの種類に分けることができ、大伏在静脈瘤は下肢静脈瘤の中でも特に発症する人が多い種類となっています。
- 下肢静脈瘤の原因について教えてください
- 下肢静脈瘤は、静脈弁の機能が正常に働かなくなることが原因で起こる病気であり、その要因としては静脈の圧迫や静脈弁の負荷が挙げられます。では、どのような人が静脈の圧迫や静脈の負荷を起こしやすいのかというと、まずは立ちっぱなしや座りっぱなしの姿勢が多い人が当てはまります。長時間同じ姿勢でいると静脈の流れが悪くなり、下肢静脈瘤のリスクにつながります。
また、加齢も下肢静脈瘤の発症リスクを高めます。これは、静脈や静脈弁の働きが加齢によって弱まってくるためです。さらに、妊娠中にも下肢静脈瘤を発症する可能性があります。これは、妊娠によって足に流れる血液の量が少なくなったり、おなかが重くなることによって足への負担が増えたりするためです。また、下肢静脈瘤は遺伝的・性的要因もあるとされています。親族に下肢静脈瘤を発症した人がいる方や、女性の場合は特に注意が必要です。
- 下肢静脈瘤の予防法はありますか?
- 下肢静脈瘤の予防法としては、足を積極的に動かして血液の滞留を防ぐことです。立ちっぱなしや座りっぱなしの仕事をしている人は、適度に休憩をとり足を動かすようにしましょう。それに加えて、軽い運動やウォーキングを日々行うことも大切です。また、お風呂に入っている際や寝る前に足をマッサージすることも、下肢静脈瘤の予防につながります。湯船やベッドに座った状態で、ふくらはぎを下から上へさする動きを、2、3分続けましょう。下肢静脈瘤は、一度なってしまうと治療しないと治すことはできません。こういった予防法を意識し、足の血液の逆流を防ぐことが大切です。
- 下肢静脈瘤が悪化しないようにできることを教えてください
- 下肢静脈瘤になってしまった場合は、予防法と同様にできるだけ積極的に足を動かすことが大切です。また、医療用の弾性ストッキングの着用も悪化防止に役立ちます。医療用弾性ストッキングとは、血液の逆流を防ぐために特殊な編み方で作られたストッキングのことです。サイズや圧迫度合いなどはストッキングの種類によって異なりますので、医師の専門的な診断の上で自身の体型や症状に合ったものを選びましょう。そのほか、栄養バランスの良い食事をとることや締め付けの強い下着やボトムなどの着用は控えることも、下肢静脈瘤の進行抑制につながります。また、何よりも大切なのは、早期に診断を受け、適切なケアや治療を開始することです。少しの違和感のうちに医療機関を受診し、悪化を防ぐようにしましょう。
下肢静脈瘤の痛みについて
次に、下肢静脈瘤による足の痛みについて解説します。
- 下肢静脈瘤で足が痛むことはありますか?
- 代表的な症状というわけではありませんが、下肢静脈瘤により足が痛むことはあります。ただし、どちらかというとだるさや重さを伴った痛みであり、激しい痛みや刺さるような痛みというわけではありません。逆にこのような痛みだった場合には、下肢静脈瘤の中に血栓ができ、その血栓が炎症を起こしている可能性が高いといえます。これは血栓性静脈炎と呼ばれ、一般的には鎮痛剤の服用や湿布による冷却、弾性ストッキングの着用で改善が見込めます。
- 足が痛む場合はどのような対処をしたら良いですか?
- 血栓ができておらず、だるさや重さを伴った痛みを感じる場合には、入浴で足を温めたり、マッサージをしたりして様子を見てみましょう。マッサージは、下肢静脈瘤の予防でお伝えした方法と同様に、ふくらはぎを下から上へさすって行います。ただし、静脈瘤があるところに痛みを感じる場合は、マッサージは行わないように注意しましょう。静脈瘤の上をマッサージすると静脈瘤が破ける可能性があったり、静脈瘤炎の場合は痛みや炎症が悪化する可能性があります。
下肢静脈瘤の治療法
最後に、下肢静脈瘤の治療方法について説明します。
- 下肢静脈瘤の治療法にはどのような種類がありますか?
- 下肢静脈瘤の治療方法には、レーザー治療・グルー治療・ストリッピング手術などの種類があります。レーザー治療とグルー治療は日帰りでの手術が可能となっており、ストリッピング手術は入院が必要なケースもあります。
- 下肢静脈瘤の治療内容についてそれぞれ教えてください
- レーザー治療は、静脈の内側からレーザーを照射し、血管を焼いてふさぐ方法です。血管の摘出が必要ないため、小さな一カ所の創口のみで治療ができます。グルー治療は、2019年に保険適用が開始された治療法であり、静脈の中にグルー注入カテーテルを挿入して行います。
静脈の内側からグルー(接着剤)で血管をふさぐ方法となっており、レーザー治療と同様に一カ所の創口のみで治療が進められます。ストリッピング手術は、足を1~2cmほど切開し、そこから器具を使って静脈を摘出する方法です。以前から行われている治療法ではあるものの、低侵襲なレーザー治療やグルー治療が出てきたため、施術件数は減ってきています。
- 治療内容のメリットデメリットそれぞれ教えてください
- レーザー治療とグルー治療は、低侵襲である点がメリットとして挙げられます。創口は一カ所のみで小さく、局所麻酔のみの使用で手術ができるため、身体に大きな負担を与えません。それに伴い、日帰りで手術を行える点も魅力となっています。ストリッピング手術は、静脈を摘出するため、再発のリスクが低く、費用負担が抑えられているというメリットがあります。
デメリットとしては、レーザー治療の場合はグルー治療に比べて多くの麻酔が必要になり、術後にはストッキングの着用が必要です。グルー治療は、複雑な下肢静脈瘤やアレルギー体質の方には向いていないという点が挙げられます。ストリッピング手術は、入院が必要になるケースがあり、レーザー治療やグルー治療に比べて創口が大きく、全身麻酔や腰椎麻酔が必要になる点がデメリットです。
編集部まとめ
下肢静脈瘤という病気の特徴や治療方法などについて理解できたでしょうか。下肢静脈瘤は、遺伝的・性的な要因も大きく、予防が難しい病気の一つです。なってしまったら、治療をしないことには改善はできないので、できる限り予防に努めると同時に、違和感があった際には早めに医療機関を受診しましょう。
参考文献