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胃潰瘍で吐血した場合の対処方法とは?吐き気やみぞおちの痛みを伴う原因も解説

胃潰瘍で吐血した場合の対処方法とは?

胃の深刻な病気として、胃潰瘍があります。軽症の場合は吐き気・みぞおちを含めた腹痛などの症状がみられるでしょう。

しかし重症化すると吐血をする場合があるため、早期発見・早期治療が必要不可欠な病気です。

本記事では、胃潰瘍について解説します。胃潰瘍の症状として代表的な吐き気・みぞおちを含めた腹痛・吐血についてもあわせて紹介するので、参考にしてみてください。

胃潰瘍とは?

悩む人

胃潰瘍は胃の粘膜に傷がつき、胃酸などによってその傷が穴に変化してくぼみのような病変を生じさせる病気です。

原因として、以下のようなものが考えられるでしょう。

  • ピロリ菌
  • 鎮痛解熱薬
  • ストレス
  • 刺激物の過剰摂取
  • 暴飲暴食
  • 細菌・ウイルス感染

胃の粘膜の傷は、自然治癒力で治ることもあります。しかし上記の場合は免疫力・治癒力も落ちている可能性が高く、悪化する可能性が高いでしょう。

傷が治らない状態で放置すると、胃酸が傷に作用して穴に変化してしまいます。

穴は粘膜下層・筋層のような深い場所まで達してしまい、胃壁にくぼみのようなものができてしまうのです。

胃潰瘍は治療をしなければ悪化の一途をたどる病気なので、早めに病院で診察を受けたほうが良いでしょう。

胃潰瘍の症状

お腹を抑える人

胃潰瘍の症状を知っておくと初期段階で自己判断が可能になり、早期治療につながります。特に注意したほうが良い主な症状は以下の7つです。

  • 胃の不快感
  • 胸やけ
  • 吐き気
  • 食欲がない
  • タール便(黒色便)
  • 腹痛

それぞれの症状について解説するので、参考にしてください。

胃の不快感

胃の不快感は、初期の胃潰瘍で多くみられる症状の1つです。ただし、胃の不快感が初期症状の病気は他にあります。

ポイントは「食事中・食後」です。これらのタイミングで胃に不快感がある場合は、胃潰瘍のサインかもしれません。

胃潰瘍は胃壁の内側の傷・穴を胃酸が刺激して広がるからです。食べ物が胃に入ると胃酸が分泌されます。この過程で不快感が起こります。

数日・数回続くようなら、内科・消化器科などで診察を受けたほうが良いでしょう。

胸やけ

胸を抑える人

胸やけも胃潰瘍の初期段階で多く確認できる症状です。胸やけと同時に酸っぱいげっぷなどもみられるでしょう。

これは胃酸の分泌が増加しているからです。胃潰瘍は胃酸過多が原因で発症します。一方胸やけは、胃酸が食道のあたりまで逆流して起こる症状です。

分泌されすぎた胃酸が食道あたりまで逆流して、胸やけの症状を引き起こします。

なお胸やけと同時に酸っぱいげっぷがみられることがありますが、この酸っぱさは胃酸の酸っぱさです。

吐き気

吐き気の症状がみられることもあります。この場合は、ピロリ菌によるものが多いとされています。

なお、胃潰瘍の原因の多くを占めているのはピロリ菌です。このことから吐き気は胃潰瘍の場合に多くみられる症状といえるでしょう。

ピロリ菌による胃潰瘍の場合は、除菌治療を行う必要があるので注意してください。

吐き気を伴う胃潰瘍は、鎮痛剤の使い過ぎが原因の場合もあります。何らかの理由で頻繁に鎮痛剤を服用している場合は気をつけたほうが良いでしょう。

食欲がない

食欲がない人

胃潰瘍の症状が進むと、食欲がなくなります。このような症状がみられる場合は、ピロリ菌による胃潰瘍が疑わしいでしょう。

また非ステロイド系の抗炎症薬の副作用として、食欲不振を伴う胃潰瘍を発症している場合があります。

何らかの理由で薬を常用している場合は、どのような成分が含まれているのか確認すると良いかもしれません。また、病院を受診する際にも伝えてください。

タール便(黒色便)

便にも注目しましょう。

胃潰瘍の場合は黒色のタール便が認められます。胃潰瘍から出血し、血液が酸化されて黒くなります。

ピロリ菌感染・非ステロイド系の抗炎症薬の副作用などが原因で発症する胃潰瘍にみられることが多いでしょう。

腹痛

お腹が痛い人

胃潰瘍の症状で腹痛がみられることが多くありますが、痛みはみぞおちを含めた上腹部が中心です。

一般的に食後から腹痛の症状があらわれ、食事の量が増加すると痛みが長時間続きます。

胃潰瘍の原因が胃酸であるため、胃に食べ物を入れると消化しようとして胃酸が多く分泌されて腹痛が起こるのです。

なお、腹痛の症状が軽いからといって油断はできません。検査をしてみると進行しているケースもあります。

また、腹痛の症状がひどくなると胃に穴が開いている可能性が高いでしょう。重症化する前に病院で診察・検査を受けることをおすすめします。

胃潰瘍で吐血した場合の対処方法

手にハート

胃潰瘍などで吐血した場合、本人も周囲の人たちも驚いてどうすれば良いのかわからなくなるかもしれません。

胃潰瘍で吐血したらまず、顔を横にして側臥位にし、誤嚥を防ぎます。脈拍などのバイタルサインをチェックして、救急車などで内視鏡処置のできる医療機関を速やかに受診しましょう。

胃潰瘍の治療方法

薬と聴診器

胃潰瘍の治療方法は、症状の進行度合いによって異なります。軽症の場合は胃酸を抑える効果のある薬を使用することが多いでしょう。

主な薬剤としては以下のようなものがあげられます。

  • プロトンポンプ阻害剤
  • H2ブロッカー

これらはどちらも、過剰な分泌・作用を及ぼす胃酸を抑えるための薬剤です。内服薬・注射のいずれかで投与します。

また胃の粘膜を保護する必要もあるため、胃薬も処方されるでしょう。なお、内服薬は数週間の服用が必要です。

中・重症の場合は、内服薬の治療では間に合いません。主に以下のような症状がみられる場合は中~重症と診断されます。

  • 強い腹痛・貧血の症状あり
  • 潰瘍が大きい
  • 出血を伴う

これらが認められる場合は、絶食と点滴の治療が必要です。また経過観察も必要になるため、1〜2週間程度の入院を余儀なくされるでしょう。

胃潰瘍の進行度合いを調べるために、胃カメラ検査が行われます。この検査で出血・血管の露出などが認められる場合は、止血処置が必要です。

また、貧血を伴う場合には並行して輸血も行われるでしょう。あわせて鉄剤も処方されることがあります。

なおピロリ菌による胃潰瘍の場合は、除菌治療も追加で行うことがあります。

これらの処置・治療を並行して行ったうえで経過を観察するため、入院が必要になるのです。

吐き気やみぞおちの痛みを伴う胃潰瘍以外の原因

胃痛

吐き気やみぞおちの痛みを伴う病気は、胃潰瘍だけではありません。それ以外の病気・原因でみられることもあります。

主な原因としてあげられるのは、以下の6つです。

  • ストレス
  • 生活習慣の乱れ
  • 急性胃炎
  • 薬剤の摂取
  • 胃がん
  • 感染性胃腸炎

これらの原因について解説するので、参考にしてください。

ストレス

吐き気・みぞおちの痛みはストレスと関係している可能性も考えられます。

例えば、大勢の前で発表しなければならなくなったとしましょう。気持ち悪くなったりお腹が痛くなったりすることがあるかもしれません。

初めての経験の場合はなおさら、これらの症状が顕著に出ます。原因は極度の緊張状態にあるからです。

また職場などでの過重労働・パワハラも長期間になればストレスになり、吐き気・みぞおちの痛みを伴うことがあります。

なおストレスが強い環境に長期間身を置いていると、自律神経失調症を発症する危険性が高まります。

主な症状として吐き気・腹痛などがあげられ、さらに進行するとうつ病・睡眠障害へと発展するでしょう。

自律神経失調症はうつ病・神経症の部分症状であり、ストレスが影響している吐き気・腹痛は侮れません。症状が続く場合は医師の診断をおすすめします。

生活習慣の乱れ

生活習慣

生活習慣の乱れが原因で、吐き気などの症状がみられる場合もあるでしょう。吐き気を引き起こす生活習慣の乱れは、主に以下の5つです。

  • 暴飲暴食
  • アルコール・カフェインの過剰摂取
  • 刺激物の過剰摂取
  • 不規則な食生活
  • 運動不足

吐き気・みぞおちの痛みは、胃酸過多が原因のことが多くあります。

胃酸は食べ物を消化するために分泌されますが、暴飲暴食・不規則な食生活が長引くと常に胃酸が出続けてしまうのです。

胃酸の効果は大変強く、胃の内壁を急激に溶かしたり食道の粘膜を刺激したりします。その結果、吐き気・痛みが引き起こされるので注意してください。

また、アルコール・カフェイン・刺激物などの過剰摂取は胃の粘膜をいためる原因です。

ただでさえ傷ついている胃の粘膜は、胃酸によってさらに悪化してしまうでしょう。胃の内部で炎症が起こり、腹痛などの症状があらわれます。

運動不足が原因の1つとしてあげられていることに、驚く人もいるかもしれません。

運動不足になると胃の蠕動(ぜんどう)運動機能が衰えてしまいます。すると消化スピードが遅くなり、吐き気・腹痛などを引き起こすのです。

急性胃炎

急性胃炎を発症している場合にも、吐き気・みぞおちの痛みが生じることがあります。急性胃炎の主な原因は、主に以下の6つです

  • ストレス
  • 香辛料・アルコールなどの刺激物の摂取
  • 食物アレルギー
  • 食中毒
  • 細菌・ウイルス感染
  • 寄生虫

これらはすべて胃の内壁・粘膜に、傷・穿孔(せんこう)などの悪影響を及ぼします。さらに胃酸の刺激も加わり、吐き気などの症状がみられるのです。

胃に傷ができると、胃酸を分泌するバランスが調整できなくなります。そのため胃酸過多になり、腹痛などの症状は悪化するでしょう。

急性胃炎を発症すると、食事制限を中心に薬物投与などの治療が行われるのが一般的です。

症状が重い場合は入院を余儀なくされることもあるので注意してください。

薬剤の摂取

薬

薬剤の摂取が原因で、吐き気などの症状が出る場合もあります。これはいわゆる「薬の副作用」です。

すべての薬には以下にあげる2つの作用があります。

  • 主作用:主たる原因に対する効果
  • 副作用:主たる目的以外の効果

2つ目の主な症状として便秘・腹痛などがあげられますが、吐き気も含まれているのです。

薬の服用は、目的の場所のみに効果をもたらすわけではありません。全身に行きわたるため、目的とは異なる場所にも影響を及ぼしてしまいます。

なお、薬による副作用はどのような影響が出るのか明確ではありません。同じ薬を服用しても副作用がまったくあらわれないこともあります。

例えばアレルギーの症状を抑える薬が処方されたとしましょう。副作用として吐き気があげられますが、必ずしもみられるとは限りません。

薬剤の摂取が原因で吐き気やみぞおちの痛みが生じることはありますが、その場合はどのような薬を服用しているのか確認しておいてください。

服用している薬の副作用を確認しておけば、吐き気などの症状がみられたときに病気のサインなのかどうかがわかるでしょう。

胃がん

吐き気やみぞおちあたりの痛みがみられる場合、胃がんの可能性もあるので注意してください。

胃がんの初期症状と胃潰瘍の初期症状は酷似しています。

症状が軽いから胃潰瘍かと思って病院で診察を受けたら、胃がんだと診断されたというケースも多くみられます。

胃潰瘍の原因として報告が多いのがピロリ菌ですが、感染すると胃がんになるリスクが高まるとの報告もあるので注意してください。

症状の自己判断では、胃潰瘍なのか胃がんなのかはわかりません。ただし初期症状は似ているので、おかしいと思ったら病院を受診してください。

感染性胃腸炎

感染性胃腸炎に罹患している場合にも、吐き気・みぞおちあたりの症状がみられるでしょう。

感染性胃腸炎とは1つの病名ではありません。さまざまな原因による胃腸炎をまとめた症候群です。

主な原因として細菌・ウイルス・寄生虫などがあげられます。多くの人に聞き馴染みのあるものとしては、ノロウイルス・カンピロバクターなどでしょう。

このような細菌・ウイルスなどに感染すると、初期症状として吐き気・腹痛などがあらわれます。

なお、感染性胃腸炎は1年を通して罹患するので注意してください。食中毒から発症することも多いため、食べ物には気をつけましょう。

まとめ

まとめ

胃潰瘍と吐血・吐き気・腹痛について解説しました。

初期症状は、風邪が原因の胃腸炎などと酷似しています。そのため病院の受診が遅れ、重症化していることも多い病気です。

吐き気・腹痛などが長期間にわたって続く場合は、病院で診察を受けたほうが良いでしょう。早く治療すれば短期間で完治します。

また、胃潰瘍から胃がんなどの重い病気に変化する可能性もあるので注意してください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
中路 幸之助医師(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)

中路 幸之助医師(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)

1991年に兵庫医科大学を卒業後、 兵庫医科大学、獨協医科大学を経て、1998年 医療法人協和会に所属。 2003年から現在まで、医療法人愛晋会中江病院の内視鏡治療センターで臨床に従事している。 専門分野はカプセル内視鏡・消化器内視鏡・消化器病。学会活動や論文執筆も積極的に行っており、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学会評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化管学会代議員・近畿支部幹事、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医・代議員を務めているほか、 米国内科学会(ACP)の上席会員(Fellow)でもある。

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中路 幸之助医師(医療法人愛晋会中江病院 内視鏡治療センター)

1991年に兵庫医科大学を卒業後、 兵庫医科大学、獨協医科大学を経て、1998年 医療法人協和会に所属。 2003年から現在まで、医療法人愛晋会中江病院の内視鏡治療センターで臨床に従事している。 専門分野はカプセル内視鏡・消化器内視鏡・消化器病。学会活動や論文執筆も積極的に行っており、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本消化器病学会専門医・指導医・学会評議員、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医・学術評議員、日本消化管学会代議員・近畿支部幹事、日本カプセル内視鏡学会認定医・指導医・代議員を務めているほか、 米国内科学会(ACP)の上席会員(Fellow)でもある。

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