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肛門にできるしこりとは?肛門にできる痔や腫瘍について詳しく解説

肛門 しこり

肛門にしこりのようなものができていて、これはいったい何なのかと不安に感じている方もいるでしょう。肛門のしこりは場所的に人にも相談しづらく、なんとなく恥ずかしくて受診をためらってしまいます。

しかし、肛門は普段自分で見ることができない場所であり、しこりの状態も目で見て確認できません。中には痛みや出血を伴う場合もあるため、恥ずかしくても診察を受けるのが安心です。

今回は肛門のしこりから考えられる疾患や、痔・肛門腫瘍の治療法について解説します。肛門のしこりは痔だけではなく、思わぬ病気のサインである可能性もあるのです。

肛門にできるしこりとは?

肛門にできるしこりとは?

しこりは排便時の違和感や、入浴時に肛門に触れた時に気付く場合が多いです。なお、しこりといってもさまざまな種類があります。

  • 肛門の内側にできる
  • 肛門の外側にできる
  • 徐々にしこりが大きくなる
  • 急に大きなしこりができる
  • 痛みをともなう
  • 出血をともなう

軽い違和感であれば日常生活に支障はありません。しかし痛み・出血をともなうものは、排便時や椅子に腰かける時などに苦痛を感じるようになります。その場合は早めに受診してください。

痛みをともなわない時は、数日様子を見てみましょう。日に日にしこりが大きくなる・しこりの数が増える・痛みが出てくるなどの異変を感じたら、医師に相談してください。

肛門にできるしこりに関連する疾患

肛門にできるしこりに関連する疾患

肛門の病気の7割以上は痔であり、実に成人の3人に1人が悩んでいるともいわれるほど、身近な疾患です。しかし、肛門にできるしこりは、すべてが痔であるとは限りません。

ここでは肛門にできるしこりに関連する疾患について解説します。

直腸型腺癌

大腸がんの一つです。大腸は結腸と直腸の2つに大別され、直腸型腺癌は直腸に病変が見られます。なお、直腸は肛門とつながっているため、肛門や便に症状を呈します。

主な症状は排便時の違和感・肛門の腫れ・肛門の痛み・血便などです。ただし、約2割の方は無症状のまま進行していきます。

痔の症状と似ているため、症状だけではがんだと判断がつきにくいでしょう。痛みや血便が続く場合は、痔だと決めつけずに検査を受けましょう。

肛門腺由来腺癌

大腸の粘膜にほとんどがん組織が現れない、極めてまれな腺癌です。その症状は肛門からの出血・肛門痛・肛門部腫瘤など、痔とよく似ています。

大腸がんは症状が現れないこともありますが、肛門腺由来腺癌は症状に気付きやすい疾患です。しかし、痔だと思い込んで検査が遅れるケースが多く、早期発見が難しいとされています。

扁平上皮癌

扁平上皮癌

扁平上皮癌は肛門癌全体の約15%と珍しいがんです。症状は肛門痛・排便時の痛み・肛門にできる腫瘤などがあります。

扁平上皮癌のリスクを上げる危険因子は、喫煙・ヒトパピローマウイルスへの感染・子宮頸癌の病歴・外陰癌の病歴・肛門性交歴・HIVの感染などです。

痔瘻癌

痔瘻とは肛門の中から外側の皮膚にかけてトンネルができた状態です。肛門の少し内側には肛門腺という小さな穴があります。非常に小さな穴なので、通常細菌は入り込みません。

しかし、下痢をしていると肛門腺に細菌が入り込んで化膿し、肛門周囲膿瘍になるのです。肛門周辺の組織に膿が溜まりやすくなり、悪化すると痔瘻を形成します。

痔瘻は自然治癒せず、放置すると痔瘻癌に発展する可能性があるでしょう。痔瘻癌は痔瘻とほとんど症状が同じであるため、早期発見が難しいとされています。発見した時にはすでに進行している場合があり、大腸癌の中でも予後の悪いがんです。

悪性黒色腫

悪性黒色腫は希少癌の一つで、皮膚にほくろのような黒い斑点が現れるのが特徴です。これは、メラノサイトという細胞ががん化して発生します。なお、このがんは白人に多く、日本人での発症は極めてまれです。

  • 左右非対称
  • 皮膚との境目がぼんやりしている
  • ほくろと比較して少し大きい
  • ほくろの色に濃淡差がある
  • 隆起している

このような病変が皮膚に現れた場合は、ただのほくろではない可能性があります。

また、悪性黒色腫は肛門や陰部に現れる可能性もあるのです。この場合、自身で目視での確認が難しいですが、しこりのようなものが触れる場合があります。

Paget病

Paget病

汗を産生する器官の細胞に、パジェット細胞と呼ばれるがん細胞が増殖する疾患です。最初は皮膚の表皮のみですが、進行すると病変が真皮にまで及びます。

Paget(パジェット)病は乳糖や乳輪に発生する乳房パジェット病と、陰部などに発生する乳房外パジェット病に大別されます。

なお、患者さんの多くは60歳以上の高齢者です。主な症状は皮膚の炎症で、病変部位が赤くただれてかさぶたができ、かゆみをともないます。初期では湿疹に間違われる場合もありますが、薬を塗っても治りません。

また、症状が進行すると結節やしこりができる場合もあります。

Bowen病

Bowen(ボーエン)病は表皮内癌の一つで、いわゆる早期がんの状態です。この状態では、ほかの臓器に転移する心配はほとんどありません。表皮にとどまっている場合、手術によって病変部位を切り取れば完治する可能性が高いでしょう。

しかし放置して真皮にまで及ぶと、リンパ節や内臓に転移する場合もあります。主な症状は皮膚に生じる赤くざらざらとした病変です。大きさは小さなものから手のひらほどの大きなものまであり、体幹部・下肢・陰部などに多く発生します。

原因ははっきりしていませんが、紫外線やヒトパピローマウイルスが関与していると考えられています。なお、初期では湿疹などのほかの皮膚疾患と間違われることもあるでしょう。薬を塗っても一向に良くならない場合は、Bowen病である可能性があります。

痔の症状について

痔の症状について

痔といえば肛門から出血するイメージがありますが、症状はそれだけではありません。ここでは主な痔の症状について解説します。

しこり

痔でみられるしこりは痔核といい、一般的にはいぼ痔とも呼ばれています。痔核は肛門の内側、つまり直腸側にできる内痔核と、肛門の外にできる外痔核があります。

基本的に肛門はやわらかく均一な組織で、健康な方であればしこりのような硬い組織はありません。そのため、入浴時や排泄時にしこりを見つけた場合は、適切な処置を受けましょう。押してみて痛みや出血がある場合は、血栓や腫瘍である可能性もあります。

脱出

肛門の内側にできた内痔核が、排便時の刺激などによって外側に出た状態を脱出といいます。平常時は痛みを感じなくても、脱出によって痛みを感じるようになるでしょう。

なお、小さな痔核であれば自然と内側に戻りますが、大きなものだと指で戻す必要があったり、元に戻せなくなったりする場合があります。

出血

痔では病変部位からの出血がみられます。出血の程度はさまざまで、排便後に紙や下着に少量の血が付着する程度のものから、ポタポタと血が滴る場合もあるでしょう。

また、排便時だけではなく、日常生活や運動中にも出血するケースがあります。その場合は衣服に血液がつかないように気を配る必要があるため、精神的なストレスを感じやすくなるでしょう。

痛み

痛み

痔には痛みをともなうタイプとそうでないタイプがあります。内痔核の場合は痛みを感じにくく、脱出した時にのみ痛みを感じるケースが多いでしょう。

なお、脱出していないのに痛みが続く場合や、重い痛みを感じる場合にはほかの疾患が隠れている可能性もあるので、注意が必要です。

また、肛門の周りの血流が悪くなり血栓ができる血栓性外痔核やかんとん痔核は、激しい痛みを伴います。

膿が出る

肛門周囲膿瘍や痔瘻では、排便と関係なく膿が出て下着が汚れることがあります。膿が出続ける場合は、切開するなど外科的な処置が必要になる場合もあります。

不快感

表面に痔核が出ていない内痔核でも、なんとなく肛門に不快感やむずがゆさを感じる場合があります。また、内痔核が脱出している時や外痔核がある時は、常に肛門に不快感を覚えるでしょう。

痔では痔核からの出血や粘液の漏出によって下着が汚れることも多く、それによる不快感を覚える場合もあります。肌トラブルを防ぐためにも、こまめにふき取る・下着を替えるなど、肛門を清潔に保つケアをする必要があるでしょう。

痔の治療方法とは?

痔の治療方法とは?

痔では痔核の脱出度によって、治療方法が決められます。Goligher(ゴリガー)の臨床病期分類では症状の程度によって以下のように分類されます。

  • 1度:肛門の内側に内痔核がある状態。出血はあるが痛みはない。
  • 2度:排便時に脱出がみられるが自然と元に戻る。
  • 3度:排便時に脱出があり、指で押し込むと元に戻る。
  • 4度:排便とは関係なく、常に脱出している状態。痛みをともなうことが多い。

1・2度の状態であれば、生活習慣の改善と投薬で様子を見ます。痔核を改善するには便秘を改善し、強くいきまなくてもスムーズに排便できるのが重要です。そのため、食物繊維や果物を積極的に摂るようすすめられます。

また、長時間同じ姿勢でいるなど、肛門に負担をかける習慣は改善が必要です。なお、投薬は痛みや出血を改善する対症療法に限られます。薬を飲んで痔核が無くなるわけではありません。

生活習慣の改善で良くならない場合は、硬化療法が取られます。これは痔核部位に薬液を注射して、血流を止める方法です。これにより、痔核部分が硬くなって肛門からの出血を止められます。

3・4度の脱出がみられる程度になると、投薬での改善は困難となり、手術療法が選択されます。主に用いられる方法が結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)です。

これは肛門管を縦方向に切開したのち、病変部位の根部を結紮してから切除し、縫合する方法です。術後は痛みや出血がありますが、痔核は根治する可能性が高いでしょう。

肛門腫瘍の症状とは?

肛門腫瘍の症状とは?

肛門腫瘍とは肛門管と肛門周囲の皮膚組織にできる癌の総称です。肛門管とは直腸と肛門をつなぐ管で、3〜4センチ程の長さがあります。肛門腫瘍の主な症状は以下の通りです。

  • 排便時の出血
  • 肛門周辺の痛み
  • 肛門周辺の違和感
  • 肛門付近にある腫れ・しこり

なお、症状が出ないこともあり、気付かないうちに進行しているケースもあります。加えて痔の症状と似ているため、症状が出ていても軽く考えて受診しないケースも多いでしょう。

排便とは関係なく痛みが続いている場合は肛門腫瘍を疑い、早めに受診してください。

肛門腫瘍の治療方法とは?

肛門腫瘍の治療方法とは?

肛門腫瘍にはさまざまな治療方法があり、病状に合わせて適切な方法が選択されます。主な治療方法は手術療法・放射線療法・化学療法の3つです。

手術療法には局所手術腹会陰式切除術があります。腫瘍が小さい場合や病変が局所的な場合は、局所手術が選択されるでしょう。この方法では肛門括約筋を残せる場合もあるため、術後回復すれば今まで通り排便をコントロールできます。

一方、病変が広範囲に及ぶ場合に行なわれるのが、腹会陰式切除術です。この手術では腹部を切開し、直腸や結腸まで切除して病変部位を取り除きます。なお、直腸や結腸を切除した場合は自力で排便をコントロールできなくなるため、人工肛門となります。

放射線療法は、がん細胞に放射線を当てて治療する方法です。体の外側から放射線を照射する外照射療法と、カテーテルなどを使用して放射線物質を体内に留置する内照射療法があります。

化学療法は抗がん剤を服用してがん細胞の増殖を抑える治療方法です。経口、もしくは注射によって薬を体内に入れると、血流にのってがん細胞に到達し、作用します。

まとめ

まとめ

今回は肛門にしこりができる疾患や、痔・肛門腫瘍について詳しく解説しました。肛門の疾患はおよそ7割が切れ痔・いぼ痔・痔瘻といった痔の症状です。

初期段階であれば痛みを感じないものの、進行すれば強い痛みになることもあります。たかが痔だと軽く考えず、悪化する前に適切な治療を受けましょう。

また、肛門のしこりが腫瘍である可能性もあります。この場合も主な症状は出血や痛みなど、ほとんど痔と変わりません。そのため、初期段階での発見が難しく、気が付いたらがんが進行していたケースも珍しくないのです。

肛門は場所的にも人に相談しづらく、受診するのが恥ずかしいと感じてしまう方もいるでしょう。しかし、放置していて病気が悪化すれば、手術が必要になる場合もあります。少しでも不安に感じることがあれば、ためらわず医師に相談してください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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