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胃粘膜下腫瘍(GIST)の手術について|消化管間質腫瘍の原因・症状を解説

gist 手術

胃粘膜下腫瘍(GIST)は消化管間質腫瘍とも呼ばれ、がんと同じ悪性腫瘍に分類される病気です。発症する頻度は10万人に2人程度と少ないため、まれな病気といわれています。

胃粘膜下腫瘍(GIST)の治療では基本的に手術が行われます。手術は腫瘍の周りへの影響が少ないため、部分切除を行うケースが多いようです。

今回の記事では胃粘膜下腫瘍(GIST)の原因・症状・治療・手術について詳しく解説します。

また、胃粘膜下腫瘍(GIST)を早期発見する方法についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

胃粘膜下腫瘍(GIST)の原因や症状

吐き気のある女性

胃粘膜下腫瘍(GIST)とはどのような病気ですか?
胃粘膜下腫瘍(GIST)とは、胃の内側にある組織で発生する悪性腫瘍です。
GISTは「Gastrointestinal Stromal Tumor」の略称で、消化管間質腫瘍とも呼ばれています。なお、悪性腫瘍とは異常な細胞が増えてそれが別の臓器などに移ることで、臓器・生命に重大な影響を与える病気です。
悪性腫瘍の代表的なものはがんであり、胃がんは胃の内側の粘膜に発生するものです。一方で胃粘膜下腫瘍(GIST)では、粘膜の下にある筋層で、特殊な細胞が増殖して腫瘍が作られます。
なお、胃粘膜下腫瘍(GIST)と胃がんはそれぞれ異なる性質があります。
原因について教えてください。
胃粘膜下腫瘍(GIST)は特定の遺伝子が変異し、発生するといわれています。ただし、なぜ遺伝子が変異するのかについては詳しく分かっていません。
どのような症状が出るのですか?
胃粘膜下腫瘍(GIST)を発症して早期の頃は、ほとんど症状がありません。進行すると以下のような症状が現れます。
  • 下血
  • 吐血
  • 貧血
  • 吐き気
  • 腹痛
  • 腹部腫瘤触知
  • 嚥下困難

腫瘍が大きくなると出血が起こり、下血・吐血が起こることがあります。なお、下血とは赤いもしくは黒い便がでたり、便の表面に血が付着していたりすることです。
さらに、出血が影響して血液中のヘモグロビンが少なくなる貧血を引き起こす可能性があります。貧血になると疲れやすくなる・めまいがするといったさまざまな不調が現れます。
その他の症状は、吐き気・腹痛・腹部腫瘤触知・嚥下困難です。腹部腫瘤触知は腹部にしこりがあるのを感じること、嚥下困難は飲み込みにくくなる状態を指します。
いずれの症状も胃粘膜下腫瘍(GIST)の特有のものではないため、胃粘膜下腫瘍(GIST)は早期発見が難しい病気です。また、胃がんと比べると症状が現れにくいとされます。

胃粘膜下腫瘍(GIST)の発症率はどのくらいですか?
胃粘膜下腫瘍(GIST)の発症率は、年間で10万人に1人もしくは2人程度の割合です。そのため、まれな病気だといわれています。
胃粘膜下腫瘍(GIST)はどの年齢層で多く発症するのですか?
胃粘膜下腫瘍(GIST)は50〜60代に発症しやすく、60代がピークだといわれています。
ただし、ほとんどの年齢層で発生するため、若い年齢層でも注意が必要です。なお、発症には男女差がないとされます。

胃粘膜下腫瘍(GIST)の治療や手術について

画像検査

胃粘膜下腫瘍(GIST)はどのような検査で発見されるのですか?
胃粘膜下腫瘍(GIST)は内視鏡検査・画像診断で発見される可能性があります。内視鏡検査は、口もしくは鼻から内視鏡という小型カメラを入れて胃などの消化管の中を見る検査です。
検査で胃の粘膜の表面が盛り上がった箇所があれば、胃粘膜下腫瘍(GIST)が発生している可能性があります。ただし、胃粘膜下腫瘍(GIST)は粘膜の下の層に発生するため、内視鏡検査のみでは腫瘍の状態を確認したり腫瘍を採取したりできません。
そこで、より詳しく調べるために超音波内視鏡検査を行います。
超音波内視鏡とは、通常の内視鏡に加えて超音波を出す装置がついたものです。超音波装置があることで、粘膜の下の構造・腫瘍の状態を調べることが可能です。なお、胃粘膜下腫瘍(GIST)を診断するには腫瘍を採取し検査する必要があるため、超音波内視鏡を用いて腫瘍に細い針を刺して組織・細胞を採取する超音波内視鏡下穿刺(せんし)吸引術が行われます。
その他には、CT検査・MRI検査・PET検査による画像診断で、腫瘍の場所・腫瘍の大きさ・転移の有無などをチェックします。なお、CT検査・MRI検査はそれぞれX線・磁器を使って、体の断面を撮影する検査です。
PET検査は放射性フッ素を付加したブドウ糖(FDG)を注射して、ブドウ糖の分布を画像にする検査です。この検査はCT検査・MRI検査と併用して行われることがあります。
治療方法について教えてください。
胃粘膜下腫瘍(GIST)の治療では原則手術で腫瘍を切除しますが、腫瘍の大きさによって治療方法が異なります。腫瘍の大きさが2センチメートル未満の場合は経過観察となることが多いようです。
また、腫瘍の大きさが2〜5センチメートルの場合は悪性所見・症状の有無によって手術、腫瘍の大きさが5センチメートル以上の場合は手術による治療が適応されます。いずれの場合も、担当の医師と話し合い治療方針を決めていくことが重要です。
なお、手術で切除が難しい場合・手術後に再発リスクが高いと判定された場合は、薬物療法が行われます。
薬物療法では治療効果が高いとされるイマチニブという治療薬が用いられますが、イマチニブが効かなくなった場合はスニチニブ・レゴラフェニブ・ピミテスピブなどを使用します。近年ではこれらの薬剤が開発されたことで、5年を超える長期生存が望めるようになっているのです。
ただし、これらの薬剤には副作用があり、肝障害・下痢・視力障害などに悩まされる可能性があります。また、薬物療法では完治が難しいため、副作用を上手にコントロールしながら治療を進めていくことが必要です。
胃粘膜下腫瘍(GIST)で行われる手術について教えてください。
胃粘膜下腫瘍(GIST)で行われる手術では、基本的に胃の部分切除を行います。
腫瘍の大きさが5センチメートル以下の場合は、腹腔鏡下手術を行うことが多いとされます。腹腔鏡下手術とは、腹部に小さな穴をいくつか開けて、その穴に機械を挿入して手術を行うものです。
手術による傷が小さい・術後の痛みが少ないといったメリットがある反面、腫瘍の部位を正確に把握できず必要以上に胃を切除してしまうデメリットもあります。
そこで、近年では内視鏡の治療も組み合わさった腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除術(LECS)を行う場合もあります。腹腔鏡内視鏡合同胃局所切除術(LECS)では、内視鏡で腫瘍を確認しながら切除するため、可能な限り小さく腫瘍を摘出することが可能です。
また、腫瘍の大きさが5センチメートル以上の場合は腹部を切開する開腹手術を行います。

胃粘膜下腫瘍(GIST)の早期発見や再発

カウンセリング

胃粘膜下腫瘍(GIST)を早期発見する方法はありますか?
胃粘膜下腫瘍(GIST)は初期の段階ですと特有の症状がないため、普段の生活で早期発見するのは難しいと考えられます。
早期発見するには、定期的に検査を受けることが重要です。血液検査では診断できないため、通常の健康診断に加えて、内視鏡検査・造影検査・便潜血検査などを受けることがおすすめです。
胃粘膜下腫瘍(GIST)は再発しやすいのですか?
胃粘膜下腫瘍(GIST)はがんと比べると腫瘍が広がったり転移したりすることが少ないため、再発するリスクは低いと考えられています。しかし、腫瘍が大きいほど再発リスクが高くなるため、注意が必要です。腫瘍の大きさが2センチメートル未満の再発率は1%以下に対して、腫瘍の大きさが10センチメートル以上の再発率は70%以上といわれています。
また、胃粘膜下腫瘍(GIST)はほかの臓器へ転移する可能性があり、転移する臓器は肝臓が多いようです。
再発した場合は薬物療法を行い、必要に応じて手術も行います。なお、再発した胃粘膜下腫瘍(GIST)は完治が難しいため、これまでの生活を維持しつつ病状をコントロールしながら薬物療法を継続していくことが重要です。

編集部まとめ

説明する医師

胃粘膜下腫瘍(GIST)は胃の粘膜の下にできる悪性腫瘍で、発症率が低くまれな病気です。

早期ではほとんど症状がなく、進行しても特徴的な症状が現れないため、早期発見が難しいでしょう。

胃粘膜下腫瘍(GIST)の治療では、基本的に腫瘍のある部分を切除する手術を行います。手術は腫瘍の大きさによって、腹腔鏡下手術もしくは開腹手術が選択されます。

ただし、腫瘍の大きさ・腫瘍のある場所によっては経過観察もしくは薬物療法となる場合があるため、担当の医師とよく相談し治療方針を決めることが重要です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
松繁 治医師(新東京病院)

松繁 治医師(新東京病院)

岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科

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