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下肢静脈瘤

下肢静脈瘤と痛みの関係とは?血栓性静脈炎の可能性も解説

下肢静脈瘤と痛みの関係とは?血栓性静脈炎の可能性も解説

下肢静脈瘤は血管の膨れといった見た目の症状のほかに、ふくらはぎのだるさやむくみがあらわれることがあります。基本的に激しい痛みを伴うことはありませんが、下肢静脈瘤の症状がある人の中には、突然強い痛みを覚える方もいます。下肢静脈瘤の痛みとはどのような場合に起きるのでしょうか。下肢静脈瘤の基礎知識と合わせて、突然の強い痛みを引き起こす、血栓性静脈炎の可能性についても解説します。

下肢静脈瘤の基礎知識

下肢静脈瘤とは、下肢つまり足にある血管が文字どおりこぶ(瘤)のように膨らんだ状態のことをいいます。良性の病気ではありますが、血管が目立つのが気になったり、足にだるさなどを感じたりすることがあります。

下肢静脈瘤とはどんな病気ですか?
下肢静脈瘤とは足の血管が膨れてこぶのようになる病気です。足にこぶのような血管が目立つ見た目の問題や、だるさやむくみなどの症状が出るのが特徴です。良性の病気なので、急に悪化したり命に関わったりすることはありません。ただし、治療せずに放置してしまうと、症状が進行して、足の皮膚の変色や、傷ができていつまでも治らなくなってしまう皮膚潰瘍(かいよう)になってしまいます。
下肢静脈瘤の原因は何ですか?
静脈は血液を心臓に返す役割をしています。足にある静脈は、重力に逆らって血液を上に流さなければなりません。そのため、静脈の中には逆流防止弁があり、血液が下に流れるのを防いでいます。この逆流防止弁に負担がかかって正常に働かなくなってしまうと、血液を上に流すことができずに足に溜まってしまい、下肢静脈瘤の原因となります。なお、静脈弁が壊れてしまう原因は、主に運動不足、過度な運動、生活習慣、妊娠、遺伝などが挙げられます。また、肥満や便秘なども下肢静脈瘤を悪化させる要因になると考えられています。
下肢静脈瘤になると、どのような症状が出ますか?
下肢静脈瘤の症状はほとんどがふくらはぎに起こります。足に血液が溜まってしまうことによって起こるので、午後から夕方頃に症状が強くなるのが特徴です。下肢静脈瘤の主な症状は、足の血管が浮き出て見える、ふくらはぎがだるい・重苦感、むくみ、こむら返り(つり)、ほてる・熱く感じる、むずむず感・不快感、かゆみ・湿疹、色素沈着、潰瘍などが挙げられます。なお、これらは1日中起こるのではなく、長時間立っていた後や、昼から夕方にかけて起こります。また、左右で症状に差が出ることもあります。

下肢静脈瘤は、40歳以上の女性に多く認められ、年齢とともに増加していく傾向にあります。日本人の約9%が発症し、患者数は1000万人以上、出産経験のある成人女性の2人に1人が発症するとも言われているポピュラーな病気です。

下肢静脈瘤で感じる痛みとは

下肢静脈瘤で感じる痛みとは

下肢静脈瘤になると、痛みの症状はありますか?
下肢静脈瘤の症状として、痛みを感じる場合があります。ただし、下肢静脈瘤が原因の場合の痛みは、ピリピリ・チクチク程度か、ふくらはぎに重痛い感じがするなど軽度で鈍い痛みがほとんど。また、長時間の立ち仕事の後や夕方に強くなるという特徴があります。足を動かしたときに痛むことは基本的にありません。
下肢静脈瘤が原因の痛みと、そうでない場合の痛みの違いについて教えてください。
下肢静脈瘤が原因の痛みの場合は、比較的軽度な場合がほとんどです。強い痛みや、狭い範囲の鋭い痛み、特定の動きで強くなるような痛みは、下肢静脈瘤以外の原因が疑われます。
下肢静脈瘤で、痛みの症状を和らげる方法はありますか?
血流の流れを良くすることで下肢静脈瘤の症状が和らぐ可能性があります。下肢静脈瘤対策には適度な運動が有効です。できるだけ足を動かすことを意識しましょう。足を動かすことでふくらはぎの筋肉がポンプの役目となり、足の先から心臓へ血液を押し上げ、血液が足に滞留することを防ぎ、結果的に下肢静脈瘤を防止することにも繋がります。毎日軽い運動や散歩を30分程度するのがおすすめです。時間が取れない場合は、普段の日常生活の中で足を積極的に動かすように心がけましょう。

また、長時間立ったままの姿勢でいることは下肢静脈瘤のリスクを上げてしまいます。立ち仕事中をする場合は、足の静脈の流れを良くするために立ちっぱなしではなく、足踏みをしたり、歩き回ったりして筋肉を動かすようにしましょう。休息の際には、できれば足を心臓より高くして5~10分程度休息すると効果的です。 痛みの程度に合わせた運動を行いましょう。痛みが強い場合や、運動などで悪化する場合は早めに医療機関を受診してください。

下肢静脈瘤と血栓性静脈炎について

血栓性静脈炎とは何ですか?
血栓性静脈炎とは、静脈に炎症が起こる静脈炎のうち、体の表面の静脈に生じるものをいいます。通常の下肢静脈瘤は痛みが少ないことが多いのですが、突然腫れや赤みとともに激しい痛みが生じる場合があります。これは下肢静脈瘤の中に血液の塊(血栓)ができて炎症を起こした、血栓性静脈炎が原因です。
血栓性静脈炎の原因は何ですか?
血栓性静脈炎の原因としては、静脈瘤、静脈内膜の損傷、寝たきりなど下肢の静脈血流が停滞しやすい状態であること、別の病気などが挙げられます。原因がわからないケースも多くあります。
血栓性静脈炎の症状を教えてください。
血栓性静脈炎の症状としては、起こした部位が皮膚に近い場合は、静脈に沿って皮膚が赤く腫れて痛みを伴います。患部に触ると血管に沿って太く長い列になった血栓を感じることもあります。また、痛みや腫れのほかに、発熱や悪寒などの全身症状があらわれるケースもあります。
血栓性静脈炎の治療方法を教えてください。
急性期の場合は、湿布や包帯をして安静にします。ほとんどの場合は、数週間で治ります。鎮痛薬を服用し、患部を冷やしたり、弾性ストッキングを履いたりして、しばらく安静に過ごしていれば自然に炎症は収まり、痛みもなくなります。静脈瘤に詰まった血栓はしばらくしこりのように残りますが、徐々に吸収されていき、半年~1年くらいかけてなくなります。難治性の場合は、血栓をできにくくする抗血小板薬やワルファリンなどの薬を使うこともあります。静脈瘤に伴う感染や炎症を合併している場合は、抗生剤を使ったり、血栓の除去や静脈の切除が必要になったりすることもあります。

下肢静脈瘤の痛みの予防方法

下肢静脈瘤の痛みの予防方法 下肢静脈瘤やそれに伴い起きる血栓性静脈炎の予防方法についてご紹介します。日常生活で心がけられることばかりですので、日頃から意識して行っておくと良いでしょう。

下肢静脈瘤の予防方法を教えてください。
下肢静脈瘤の原因は、足の静脈弁が壊れることによる静脈内の血流の阻害です。つまり、静脈弁が壊れないように気をつけることが静脈瘤の予防法として最も効果が高いと言えるでしょう。具体的には、長時間の立ち仕事を避けること、適度な運動、脚のマッサージやストレッチなどが挙げられます。
血栓性静脈炎の予防方法を教えてください。
血栓性静脈炎の予防方法は、下肢静脈瘤と同じく血流を良くするのがポイントです。長時間座るときは、できるだけ足を動かし、水分を摂ることを心がけましょう。入院中や出産・手術の間は寝たきり状態になりがちですが、無理をしない範囲で、主治医と相談しながらできるだけ体を動かすと良いでしょう。

編集部まとめ

下肢静脈瘤は足の血管が浮き出て見える、ふくらはぎがだるいなどが主な症状です。痛みを感じることもありますが、基本的には鈍い痛みのみで強い痛みは腫れを感じることはほとんどありません。下肢静脈瘤の症状が急に悪化して痛みを感じた場合は、血栓性静脈炎が原因となっている可能性があります。血栓性静脈炎を併発しないためにも、日頃から血流を良くするための軽い運動や水分補給が重要です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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