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腸閉塞(イレウス)の症状は?分類や診断方法などの基礎知識も解説します

腸閉塞 症状

腸閉塞は、腸の通過が部分的または完全に阻害される状態です。腹痛や吐き気などの症状は突然発生し、徐々に悪化することもあります。 本記事では、腸閉塞の症状について以下の点を中心にご紹介します!

  • そもそも腸閉塞(イレウス)とは?
  • 腸閉塞(イレウス)の症状について
  • 腸閉塞(イレウス)の治療について

腸閉塞の症状について理解するためにもご参考いただけると幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

腸閉塞(イレウス)について

腸閉塞(イレウス)について

腸閉塞(イレウス)は、腸の通過障害により腸内内容物が正常に移動できなくなる状態です。腸閉塞になると、腹痛、嘔吐、便秘などの症状が現れます。腸閉塞についての基礎知識を、以下で解説します。

腸閉塞(イレウス)とは?

腸閉塞(イレウス)は、腸管内の通過障害によって引き起こされます。この状態は、腸の炎症による部分的な癒着や腫瘍による腸の閉塞、または腸の運動機能の低下によって生じます。特にイレウスという用語は、腸の動きが悪くなることによる腸閉塞を指します。

多くの場合、食事や水分摂取を控え、点滴による水分補給や、鼻からチューブを挿入して胃液や腸液を排出する治療が行われますが、状況によっては手術が必要になることもあります。

腸閉塞(イレウス)の症状

腸閉塞(イレウス)は、腸の通過障害によって引き起こされ、以下のような症状が現れます。

腹痛:じわじわと増強する腹痛が特徴的です。ときには激しい痛みに発展し、腸の穿孔や絞扼性イレウスの際には持続的な痛みが現れることがあります。

吐き気と嘔吐:腸の内容物が通過できないために発生し、嘔吐物が肺に入ると誤嚥性肺炎のリスクがあります。

お腹の張り:腸内にガスや液体が溜まることで腹部が膨満し、外から見ても明らかになることがあります。

排便の停止:便秘が発生し、腸が完全に閉塞すると重度の便秘になる可能性があります。部分的な閉塞の場合は下痢を伴うこともあります。

発熱と頻脈:腸壁の破裂や炎症が起こると発熱が見られることがあり、特に絞扼性イレウスでは痛みがひどくなり、持続的に発熱することがあります。

食欲不振:腸閉塞による全般的な不調が食欲減退を引き起こすことがあります。

このような症状が現れた場合、腸閉塞の可能性があるため、早急に医療機関への受診が重要です。ただし、これらの症状が必ずしも腸閉塞を意味するわけではないため、正確な診断は医師による詳細な検査が必要です。特に腹部膨満や激しい腹痛、嘔吐などが見られる場合は、迅速な治療が必要となることがあります。

腸閉塞(イレウス)の分類

腸閉塞(イレウス)の分類

腸閉塞(イレウス)は主に機械的イレウスと機能的イレウスの2つに分類されます。機械的イレウスは物理的な障害が腸管を塞ぐ状態を指し、機能的イレウスは腸の運動障害によるものです。以下で詳しく解説します。

機械性イレウス

機械性イレウスは、腸管の物理的な閉塞によって起こります。機械性イレウスは、腸管内の異物や腫瘍、腸間膜の癒着、ヘルニアの嵌頓、腸重積症などによって発症します。さらに、機械的イレウスは血行障害の有無に基づき、単純性イレウスと絞扼性イレウスに分けられます。

単純性イレウス:腸管内の腫瘍や結石、外部からの圧迫などが原因で、腸管が狭窄する状態です。この単純性イレウスでは、血行障害は伴いません。

絞扼性イレウス:腸管が血行障害を伴うもので、急激な腹痛やショック状態を引き起こすことがあり、迅速な治療が必要です。絞扼性イレウスでは、腸が壊死する危険性もあるため、特に注意が必要です。

閉塞性イレウスは血行障害を伴わないのに対し、絞扼性イレウスでは腸の壊死や破裂のリスクが高いため、速やかな対応が求められます。腸閉塞はときに生命を脅かす状態になり得るため、早期の受診と適切な治療が重要です。

機能的イレウス

機能的イレウスは腸管の運動機能障害によって生じる腸閉塞で、主に麻痺性イレウスと痙攣性イレウスに分類されます。この状態では、腸管の内容物が肛門方向への移動が妨げられ、腸内に停滞します。

麻痺性イレウス:腸管運動の麻痺が主な原因です。これは、腸管壁の神経や平滑筋の機能障害により発生し、主に腹部手術後の神経障害、腹膜炎、または特定の内服薬による影響で見られます。腹部手術中の麻酔や手術操作によって腸の動きが悪くなることがあります。

痙攣性イレウス:腸管の一部が痙攣し、収縮することで発生します。痙攣性イレウスは、手術や外傷、神経障害、中毒などが原因で、腸管の一部に障害が生じることがありますが、発症頻度は低いとされています。

機能的イレウスは、腸閉塞の中でも特定しにくいケースが多く、正確な診断と適切な治療が必要です。そのため、症状が現れた場合は迅速に医療機関を受診し、専門の医師による診断を受けることが推奨されます。

腸閉塞(イレウス)の原因

>腸閉塞(イレウス)の原因

腸閉塞(イレウス)の原因は多岐にわたります。機械的イレウスと機能的イレウスの原因は以下の通りです。

機械的イレウス:

  • 腹部手術による腸管の癒着が一般的な原因です。
  • ヘルニア、腸重積、腸軸捻転などが原因となることもあります。
  • 大腸がん、小腸がんなどの腫瘍が腸管を閉塞することがあります。
  • 胆石、回虫などの腸管内異物が閉塞を引き起こすこともあります。
  • 卵巣がんなどによる外部からの圧迫、クローン病などの炎症も原因となり得ます。

機能的イレウス:

  • 腹部手術後の腸管の運動麻痺が一般的な原因です。
  • 急性腹膜炎などの感染症が原因となることもあります。
  • 代謝性障害や薬剤反応による麻痺性イレウスも考慮されます。
  • 糖尿病、パーキンソン症候群、強皮症などの基礎疾患が関連することがあります。
  • 痙攣性イレウスの原因としては、鉛中毒や外傷、結石発作などがあります。

この原因は、腸閉塞の発生場所や患者さんの年齢、基礎疾患などによって異なります。腸閉塞はときに重篤な状態を引き起こすため、早期の受診と適切な治療が重要です。

腸閉塞(イレウス)の検査・診断

腸閉塞(イレウス)の検査・診断

腸閉塞(イレウス)の検査・診断には、患者さんの病歴と身体診察が基本となり、その後、腹部X線、腹部超音波、CTスキャンなどの画像検査が行われます。擬態的な検査内容について以下で解説します。

腹部単純X線検査

腹部単純X線検査は、X線を利用して腹部の内部構造を詳細に観察し、腸内に異常なガスの蓄積や液体のレベルを確認します。

特に、イレウスの場合、X線画像上で独特のガスのパターンが見られます。腸の閉塞部位の上部には消化液が、その上には空気が溜まり、これによって特有の腸管ガスの像が形成されます。これをニボー像と言います。また、腸管穿孔が起こった場合、腸内の空気が腹腔内に漏れ出し、横隔膜下に三日月状のガス像が形成されます。これは緊急手術が必要な兆候であり、迅速な対応が求められます。
ただし、妊娠中の方やその可能性のある方は、胎児への影響を避けるためこの検査は受けられません。

腹部超音波検査

腸閉塞(イレウス)の診断において、腹部超音波検査は重要な役割を果たします。腹部超音波検査は、超音波の波を利用して腹部の内臓の状態を画像化し、腸の拡張や動き、内容物の詰まり具合を観察します。具体的には、腸管内の液体の貯留、腸管の拡張、腸壁の肥厚、腹水の有無などをチェックします。また、腸が重なり合っている状態(腸重積)や大腸の腫瘍も発見できることがあります。

腹部超音波検査は、放射線を使用しないため、患者さんへの負担が少ないとされています。この検査により、腸管の運動性も観察できるため、麻痺性イレウスや痙攣性イレウスの診断にも役立ちます。腸閉塞の正確な診断には、腹部超音波検査だけでなく、腹部X線検査やCTスキャンなどのほかの画像検査との組み合わせが一般的です。

腹部造影CT検査

腹部造影CT検査では、特別な造影剤を使用して、腸やほかの内臓の状態を詳しく調べます。造影剤は血管や臓器の構造を明確にするために点滴で投与されることが多く、消化管の詳細を捉えるために別の造影剤を飲むこともあります。

腸閉塞、絞扼性腸閉塞を疑う場合、腹部造影CT検査は特に重要です。この検査で、腸管の一部がループ状になって閉じられている状態や、腸管壁の造影効果の変化、腸管膜の脂肪濃度の上昇などが確認されると、腸がねじれている可能性が高まります。これらの所見は、腸閉塞の原因や程度を特定するのに役立ちます。

腹部MRI検査

腹部MRI検査は、大腸がんや腸閉塞の診断に用いられる検査です。
この検査は、磁力と電磁波を用いて腹部の臓器の断層画像を撮影し、腸の狭窄、腸のねじれ、腸の癒着、腫瘍などの異常を詳細に描出できます。MRI検査の利点は、放射線を使用しないため被曝の心配が少なく、腫瘍や結石、血流などを明瞭に観察できる点です。

ただし、MRI検査は実施に時間がかかり、検査中の静止が求められるため、子どもや閉所恐怖症の患者さんには実施が難しい場合があります。また、検査中の装置の音が不快に感じられることもある点を考慮する必要があります。

腸閉塞は重篤な状態に進行する可能性があるため、早期の受診と適切な治療が重要です。具体的な診断と治療方針は、医療機関で専門の医師によって決定されるべきです。

腸閉塞(イレウス)の治療

腸閉塞(イレウス)の治療

腸閉塞(イレウス)の治療は、原因と種類によって異なりますが、基本的には絶食、点滴による水分補給、腸管減圧などの保存的治療から始まります。重症の場合は、手術が必要になることもあります。以下で解説します。

保存的治療

腸閉塞(イレウス)の保存的治療は、腸の中の内容物を体外に排出して腸の動きを改善することを目指しています。腸閉塞(イレウス)の治療における保存的治療は、主に軽度のイレウスに適用され、以下のような手順で行われます。

絶食と点滴治療:患者さんは食事を中止し、胃腸を休ませながら、点滴を通じて必要な水分と栄養を補給します。これにより、腸の負担を減らしつつ、体の水分バランスを維持します。

イレウス管の挿入:鼻腔から腸までのチューブを挿入し、腸の中のガスや内容物を吸引します。これにより、腸管内の圧力を下げ、腸の動きを助けることが目的です。

腸の圧力減圧:チューブを通じて腸内に溜まった内容物を外に排出させ、腸の圧力を軽減します。これにより、腸の動きが回復しやすくなります。

保存的治療は、手術を必要としないため、腸閉塞が軽度の場合や患者さんの全身状態が手術適応とならない場合に選択されることが少なくありません。ただし、保存的治療の効果が期待できるのは主に絞扼性イレウス以外の腸閉塞で、絞扼性イレウスの場合には、手術が第一選択となります。また、保存的治療を1週間ほど続けても効果が見られないときは、外科手術を行うこともあります。

手術治療

腸閉塞(イレウス)の手術治療は、保存療法に反応しない場合や血行障害が生じている絞扼性イレウスのような状況で必要とされます。以下で、手術の種類について解説します。

癒着剥離術:癒着による腸閉塞の場合、癒着部分を剥離して腸の通り道を確保します。これは、過去の手術や炎症によって生じた癒着を取り除きます。絞扼性イレウスのような状況で必要とされます。以下で、手術の種類について解説します。

腸切除術:腸の病変部分が原因の場合、その部分を切除します。腸が壊死しているか、血流が悪い状態にあるときに特に必要とされます。切除した後、健康な腸管同士を吻合(接続)します。絞扼性イレウスのような状況で必要とされます。以下で、手術の種類について解説します。

消化管バイパス術:腫瘍が原因の場合、腫瘍を含む腸管の部分を切除し、場合によってはステントを挿入して腸管の状態を一時的に改善することもあります。絞扼性イレウスのような状況で必要とされます。以下で、手術の種類について解説します。

人工肛門造設術:全身状態や腸管の状態が手術に適していない場合、人工肛門を造設することがあります。これは、腸の一部をお腹の壁に出し、そこから便を排泄する方法です。絞扼性イレウスのような状況で必要とされます。以下で、手術の種類について解説します。

近年では、腹腔鏡を用いた手術も普及しており、回復が早い治療が可能になっています。しかし、手術治療は患者さんの状態や腸閉塞の原因によって異なるため、医師の判断が重要です。

腸閉塞(イレウス)の予防

腸閉塞(イレウス)の予

腸閉塞(イレウス)の予防には日頃の生活習慣を見直すことが重要です。具体的な予防方法は以下の通りです。

適切な食事量:過度な食事は避け、お腹が7〜8分目になる程度の量を心がける。特に、体重が減少傾向にある場合は、適切な間食を取り入れて栄養バランスを保つことが重要です。

食事の仕方:食事はよく噛んでゆっくりと時間をかけるようにします。これにより消化を助け、腸の負担を軽減します。

食品選び:不溶性食物繊維が豊富な食品は消化に時間がかかるため、摂取量に注意が必要です。ごぼう、セロリ、たけのこなどは切り方に工夫をし、消化しやすくする。豆類や硬い果物、種実類の摂取量も調整しましょう。

脂質量の調整:食事全体の脂質量は控えめにし、乳酸菌飲料やヨーグルトを摂取して腸内環境を整えるようにすることがおすすめです。

適度な運動:定期的な運動により腸の働きを促進し、便秘の予防にもつながります。

個々の体調や状況によって適切な食事内容は異なるため、自分の体の反応を観察しながら、必要に応じて医師の指示に従って食事内容を調整することが重要です。また、予防策が万能ではないため、腹痛や嘔吐などの症状がある場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。

まとめ

まとめ

ここまで腸閉塞の症状についてお伝えしてきました。 腸閉塞の症状の要点をまとめると以下の通りです。

  • 腸閉塞は、腸内の内容物が肛門側に移動する際の障害を指し、何らかの原因により腸が物理的に閉塞される状態や、腸の動きが悪く腸管麻痺を引き起こしている状態
  • 腸閉塞の症状は、腹部の痛み、便秘、嘔吐、腹部膨満、発熱、頻脈などが挙げられ、腹痛の程度は軽度の場合から非常に強く出る場合もある
  • 腸閉塞の治療には、保存的治療や保存療法に反応しない場合や絞扼性イレウスのように血行障害が生じている状況では、手術が必要となる

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
眞鍋 憲正医師(UT Austin)

眞鍋 憲正医師(UT Austin)

信州大学医学部卒業 / 信州大学大学院疾患予防医科学専攻スポーツ医科学講座 博士課程修了 / UT Southwestern Medical Center, Internal Medicine, Visiting Senior Scholar / Institute for Exercise and Environmental Medicine, Visiting Senior Scholar / UT Austin, Faculty of Education and Kinesiology, Cardiovascular aging research lab, Visiting Scholar

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